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第三者からのご意見


高崎経済大学 
地域政策学部
准教授 土肥将敦

今回の(株)商船三井(以下MOL)の環境・社会報告書は、2010年度に策定された3ヶ年中期経営計画「GEAR UP! MOL」の初年度の実績と課題を踏まえてまとめられたものである。

中期経営計画では大きく3つの戦略が掲げられているが、その中でも「安全運航強化」と「環境戦略」はMOLのCSRと密接に関わっている。特に、安全運航強化に関しては、本社内に2007年に安全運航支援センター(SOSC)が設置されて以降、航海関係事故の発生件数が減少し、着実な成果として表れている。また2011年度は、MOLの安全運航への取り組み体制を各ステークホルダーに周知するため、新たにDVD「世界最高水準の安全運航をめざす」が編集され、船上での細かな実施体制が社内外によりわかり易く示された。この他、訓練専用船の活用を含めたMOLの安全運航に対する諸施策は、業界水準を先取りするものであり、これらの取り組みから“Never Forget 2006”を単なるスローガンで終わらせまいとするMOLの強い意志が伝わってくる。

こうしたMOLの安全運航に対する諸施策の背景には、2006年に発生した4件の重大海難事故や、2010年5月に発生した鉄鉱石運搬船の衝突・沈没事故、依然として中東近海で多発する海賊による襲撃事件等がある。特に、2011年3月に発生したオマーン沖での海賊による襲撃事件は、当該海賊を日本国内に搬送し法廷で裁くという国内初の事例で、世間の注目度も高いものであった。これらの事故や事件の発生に対して、MOLでは2006年以降一貫して、当該事故の経緯やその後の対応策を開示する努力がなされている。一方で、これらのテロ行為や海賊事件に関しては民間企業の対応を超える部分も多く、国内海運企業のリーダーとして、政府や関係機関との協力体制を早急に構築していくことも必要であろう。
今回の報告書では、CSRに関する個別の諸施策の進化がうかがえるが、他方、中期経営計画とCSR取り組み方針の関係性という点では、改良の余地も残されている。例えば「企業の責任を果たすCSR」、「企業と社会がともに成長するCSR」という戦略目標は抽象的な感があり、そこで意図されている内容がステークホルダーに伝わりにくい可能性がある。各課題を方向付け、中期経営計画との関係性を示したCSRの全体戦略が必要であろう。

最後に、今回の東日本大震災では、MOLの本業レベルではBCPが機能したため大きな被害はなく、また社会貢献活動のレベルにおいては、義援金の拠出を始め、救援物資の緊急無償支援や客船による支援航海等の本業を通じた様々な支援体制が迅速に展開された。これは、危機管理を始めとする日常的な事業活動の上に成り立つものであり、これまでのMOLの伝統と経験が活かされたものといえよう。
“世界一安全な船会社”を目指したMOLの取り組みは、緒に就いたばかりである。「GEAR UP! MOL」の実践を通して、業界をリードするCSR経営が更に進展していくことを期待したい。

ご意見をいただいて


常務執行役員(CSR・環境対策委員会副委員長) 横田 健二

土肥先生には、当社の安全運航に対する諸施策が業界水準を先取りするものであること、東日本大震災に際しては事業継続計画(BCP)が機能し、支援体制が迅速に展開されたこと、そして、これらは当社の伝統と経験が活かされたものであるとのご意見を頂きました。「本業を通じたCSR」を研究されている先生ならではの貴重なご意見を糧に、今後も安全運航の徹底を始め、全てのCSRの取り組みを強化していく思いを強く致しました。

また、ご指摘頂きました中期経営計画とCSR取り組み方針の関係性につきましては、両者をCSR取り組み目標に落とし込み、特集等を通じて説明に努めたところではありますが、ステークホルダーにより伝わり易いかたちにするべく工夫を加えつつ、目標の実践を通じて実績を以って示していきたいと思います。
このことは、先生の研究のメインテーマである「企業と社会との調和ある発展」に資するものであると確信しております。

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