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CSR対談

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明日につながる仕事を生み出すために社会とともに持続的な発展を目指す

当社グループは、新経営計画「ローリングプラン2017」の策定に伴い、10年後のありたい姿を定めました。その達成のために、海技力、IoT、技術開発、環境、働き方改革といった視点から強化を図っています。そこで今回は、第三者の視点から当社のCSRへの取り組みを見守ってこられた(株)日本総合研究所の足達氏をお招きし、当社グループの取り組みに対するご評価をいただくべくCSR委員会委員長との対談を実施いたしました。

環境課題の解決に先進的に取り組むことは、海運会社としての社会的使命

足達:国際社会においては、2015年にCOP21でパリ協定が採択され、世界共通の目標として脱炭素社会を目指すことが示されました。一方で、石炭・石油などの化石燃料をエネルギーとして必要とするお客様が存在する限り、輸送サービスを提供して欲しいとの要請があると思います。海運は先行投資が必要なビジネスモデルであり、社会の動向を敏感に捉えて次の変化を予測し、サービスを提供していくことが必要とよく言われますが、こうした難しさをどのようにお考えでしょうか。

高橋:座礁資産という言葉があるように、今後、CO2排出削減の為に石炭・石油などの化石燃料の需要が減れば、それらを運ぶ船舶ニーズも縮小する可能性があります。そのような大きな変化が2050年までの時間軸でかなりの確率で始まるという認識を持っています。
先般、策定した新経営計画「ローリングプラン2017」では、会社として10年後のありたい姿を議論し、それを達成するための方法を3ヶ年の事業戦略に落とし込むようにしました。これは、当社グループが営んでいる海運事業にも大きな変化が生じる可能性が高いことに起因しています。例えば、2000年代初頭に、アメリカはLNGの巨大な輸入国になると言われていましたが、実際にはシェールガスの開発が進み、今日のアメリカはLNGの輸入国ではなく輸出国となっています。つまり、世の中は大方の想定とは異なった方向に変化することがあります。
従って、当社グループは今後も中長期的な視点を持ちつつ、将来のありたい姿に向けて世の中の変化に合わせて事業戦略を都度修正するアプローチをすることを選択しました。そして、本計画では「環境」を経営戦略の中核に掲げており、それを踏まえて「環境ビジョン2030」を策定致しました。

足達:海運は、経営環境の変化が激しく、経営の舵取りが非常に難しい業界だとも思います。実際、市況や世界経済全体の景況感などの影響を直接受けるビジネスであることから、中長期的かつ柔軟に事業戦略を立案することは非常に重要です。
「環境」が経営戦略の一つに掲げられるまでに、実際にはどのような議論が交わされたのでしょうか。

高橋:海運は環境面においては、優れた大量輸送手段になりますが、外航船舶から排出されるCO2が全世界の温暖化ガス排出の約2%を占めており、環境に大きな負荷を与えていることも事実です。この事実に対して、我々がよりCO2排出の少ないLNG等に燃料を変更したとしても、事業を行う限りは温室効果ガスを大量に排出することになります。
再生可能エネルギー事業を中核事業に育てることができれば、再生可能エネルギーが本源的に持っているカーボンオフセットの能力を海上輸送で発生している温室効果ガスと相殺することによって、当社グループ全体においてエミッションフリーを実現し、お客様に対して提供するサービスの環境への負荷低減を両立させることができるのではないかと考えました。そして、環境問題に対して、事業戦略として試みるものが「環境ビジョン2030」です。

足達:昨今、長期目線でコスト構造の変化や不可逆的な流れと経営戦略との整合性を評価しようとするESG投資が増えてきています。そうしたESGアナリストが今回の「環境ビジョン2030」をどのように受け止めるのかは、大変興味深いです。
具体的な温室効果ガス削減目標も設定されていますね。

高橋:環境・エミッションフリー事業で完全に海上輸送のカーボンオフセットすることを企画している訳ではありませんが、「2050年に輸送単位あたり50%の削減」を目指しています。この目標に対して、既存の技術や取り組み、新技術の導入、環境・エミッションフリー事業による温室効果ガスのオフセット等により30%程度の削減が実現可能と考えます。しかし、残り20%の削減には、新たなイノベーションが必要です。そして、イノベーションが必要である、ということを全ての社員と共有するために「環境ビジョン2030」を打ち出しました。

足達:意欲的な削減目標を設定されていますが、目標達成の鍵は、今後の新たなイノベーションにあるということでしょうか。

高橋:既存の取り組みをコツコツと実施することで達成できる目標は、単なるホームワークです。ビジョンを掲げるからには、温室効果ガスを抜本的に削減するために、イノベーションを起こす必要があり、大きな飛躍が求められます。

足達:ビジョンの背景にある想いを伺い、商船三井グループは海運会社の既成イメージを超えるビジョンを掲げていらっしゃると受け止めました。特に、先見性・先駆性を感じたのは、「ビジョンは単なる目標でも、宿題でもない」という点です。一般的な日本企業では、目標というものを掲げた途端に、必達すべきものとして絶対視されてしまいがちです。それが一種の硬直性を生んでしまうこともあります。商船三井グループでは、経営計画と環境ビジョンが一致していることに加えて、価値創造のストーリーが明確です。今後、事業ポートフォリオの再構築が着実に進めば大変素晴らしいと思います。

海運会社として運航に携わる立場で、本当の最適解を国際社会に向けて発信する

足達:持続可能な社会の発展のためには、国際的なルール作りにおいてリーダーシップを発揮し、業界をリードすることも重要です。

高橋:環境や安全面に関する規制や制度に関しては、様々な国際ルールが条約としてあり、もちろん当社グループにも影響します。2017年9月8日からはバラスト水管理条約が発効されます。その結果、当社グループの船舶もバラスト水処理装置を全船装備する必要があります。その後も大気汚染の原因となるNOx・SOxの排出規制や地球温暖化防止のためのCO2排出規制が厳しくなります。それぞれ設備面で対応していくことはもちろんですが、環境規制への対応を差別化の戦略と捉え、優れた環境技術の積極的活用に挑戦していきます。
ルール作りにおいては、日本の海運業界および造船業界の影響力は限定的です。それはIMO締約国による多国間協議の場ではルール作りに長けている、必ずしも海運国でないメンバーもイニシアチブを発揮しているからであり、それが国際社会の現状です。
当社は海運会社として船舶運航に携わる立場で、提案やソリューションを通じて本当の最適解を国際社会に向かって発信することが、ますます必要になると考えています。そのため、社内の体制作りとともに行政との連携も重要と考えています。

足達:日本企業が国際的ルール作りでリーダーシップを取るケースは、必ずしも多くはありません。ですが長い目で見ると、経済の成熟、企業間競争の激化に直面して、サービスそのものでの差別化は難しくなるという現実があります。だからこそ、ルール作りを先導しようとする企業戦略や国の産業政策が非常に重要になってきます。

高橋:企業としての姿勢をお示しするにあたり、当社も対外的な発表方法やPRの仕方を変えようとしています。従来であれば、実現した成果に重点をおいて情報発信していましたが、今後はプロジェクトを開始する段階からコンセプトやアイデアをより積極的に開示することで、社会の関心を確認しパートナーを募るなどして、オープンイノベーションにつなげていきたいと考えています。
また、2016年に立ち上げた「船舶維新NEXT」プロジェクトでは、自律航行や地球環境保全に向けてイノベーションを実現するために、今後の新造船に「高度安全運航支援技術」「環境負荷低減技術」の各分野の技術を1件ずつ搭載し、竣工後、1年ごとに実運航船での効果検証を行い、その結果を随時公表する予定です。今後はさらに、運航ノウハウにIoTの要素技術を取り込むことでお客様の潜在的なニーズとシーズを結びつけ、世界最高水準の安全運航と環境保全を追求してまいります。

「海技力」をコアとしたサービスの提供

足達:ところで、今回経営計画の中で全社強化項目の一つとして掲げている「海技力」とはどのようなものでしょうか。

高橋:「海技力」とは、船を安全に動かし、安定輸送を実現する能力です。海運事業を営む当社グループにとって、最も重要な土台となるのは安全運航です。しかし、ご承知のように、海上には、自然の脅威が陸上よりもはるかに大きな度合いで存在しています。一般的な船の鉄板の厚さは2~3cm程ありますが、その2cmの鉄板で長さ200mの船を造り、浮かべているのです。それを20cmの模型に当てはめると、鉄板の薄さはアルミ箔ほどの薄さになります。そのようなものが大海原で波や風の影響を受けており、船を安全に動かすには様々なハード・ソフト両面からのノウハウや専門的技術が必要です。
一方で、海難事故、船舶の故障の原因は、残念ながら7割前後はヒューマンエラーで起こっています。そのため、ヒューマンエラーを未然に防ぐ運航体制と技術力を磨くことが、安全運航につながります。
「海技力」は、一般には機関を動かし船を操る能力だと思われがちですが、実は多種多様です。リスクが何かを分析して、リスクに対して一人ではなくチームワークで対処する際立った能力が必要です。こういう仕事ができる人たちは船員以外にはいませんので、当社海上社員は差別化の原動力であり、際立ったところだと思います。これをもっと強化し、IoTを活用して暗黙知を見える化し、次の世代へ(の技術・ノウハウの)伝承をしていくことで「海技力」の強化を図っていきます。

足達:海上の気象も気候変動の影響を受けているのではないかと思います。脅威や克服すべきものはございますか。

高橋:日本近海に襲来する台風、インド洋で発生するサイクロン、カリブ海のハリケーンなど、これらは非常に強力な低気圧です。近年は、過去にないような強力なものも発生していますが、海の上で想定外は言い訳になりませんので、対応を迫られる気候変動が起きているとあらかじめ考えるべきです。海上では事前に強力な台風の発生を認知して、余裕をもって回避する以外に対策はありません。低気圧などを回避すると当然余計な燃料と時間がかかり、気候変動による影響を実感しています。

足達:そのあたりが「環境ビジョン2030」の策定にも結びついており、取り組まれる背景の一つなのですね。

働き方改革 - よりイノベーティブな仕事をするために -

足達:海運は、サプライチェーンを含め、まだまだ人の手によるもの、人が司になるところが多く、逆に言えば、完全自動化やマニュアル化、ルーティン化できない世界があると感じています。先程の「海技力」とも関連させて、人材についてのお考えを伺えたらと思います。

高橋:当社は133年の歴史があり、海上輸送のノウハウは洗練され分業化が進み、専門的技術を持った人を集めて配置することにより、「どんな遠いところにでも、大量の荷物を安全・安定的に運べる」という仕組みを作ってきました。
しかし、不可逆的な変化が世の中にはあります。帆船が蒸気船になったことや、燃料が石炭から石油になったこと。最近では、貨物輸送がコンテナ化されました。
こういったことは二度と元には戻りません。温暖化など人類の活動によって起こる影響は別として、人間が知恵を凝らして行い、二度と元にもどらない進歩がイノベーションであると考えています。
海運業に求められる人材は、日々貨物を運ぶことを通じてお客様に安心・安全なサービスを提供するとともに、「明日の海運業を創る」ことが大事になります。

足達:船を動かすには、コツや経験、知恵やセンスなど様々なことが必要で、それを後輩に教え、そして進歩させることが鍵ということですね。まさに先程の「海技力」の肝でもありますね。

高橋:さらに言うと、「海陸社員が手を携えて明日の海運を創るために働いている」というのが、求める人材のあるべき姿だと思います。そして、そのための企業風土を醸成するために始めた活動が、「働き方改革」です。これは、当社グループの10年後にありたい姿を実現すべく、創造力、実行力のあるイノベーティブな人材の育成を必要としていることに起因します。これにより、部門や上下関係を超えたコミュニケーションを通じてシナジーを生み出し、より活力のある会社にしたいと考えています。
勿論、残業時間の削減やワーク・ライフ・バランスは重要視しています。しかし、当社グループにおける働き方改革の本質とは、創造力や実行力のあるイノベーティブな人材が働きやすい環境をつくることであり、「よりイノベーティブな仕事をする、明日につながる仕事をするための仕事の見直し」だと位置づけて取り組んでいます。だからこそ、いろんな背景、経験、専門知識を持っている人が集まって、違う視点で同じものをながめる議論は、新しいアイデアを生み出すゆりかごであり、もっと活性化していく必要があります。

足達:海運は、組織で行うビジネスであることを痛感させられるお話です。個々人に力量が必要で、しかもバラバラであってはならず、ルーティンによって陳腐化させてもならない。だからこそ、多様な人材が必要であり、それを束ねる仕組み(会社、経営、プロジェクト)が必要だということですね。技術・ノウハウ・経験が伝承されていくことで、チームワークや企業が維持・発展していくといった、組織力が相当根本にあるビジネスだということが分かります。また、運航の現場では、命がけであることもチームワークの緊張度につながっているのだと感じます。

地球市民の一員として、地球規模の課題の解決に貢献する

足達:現在、地政学的なリスクも高まっており、企業はさまざまな状況に適切に対処する必要があります。また、SDGsのような地球規模の課題に民間企業から解決への貢献が期待されているという面もあります。健全な地球や社会がなければ、企業はビジネスを健全に営めないという状況も今後はあるかもしれません。このあたりをどのようにお考えになりますか。

高橋:社会の不安定な状態を引き起こし、地政学的リスクも高くなります。国連も貧困撲滅をSDGsの中で掲げていますが、我々は企業理念として、モノを運ぶことで「世界経済の成長に資する、さらに言えば世界の民生の向上に資する」ことを掲げています。つまり、我々の事業は基本的に社会を安定させ、平和な方向に貢献をしていく事業であるとも言えます。

足達:CSR目標でSDGsの達成に貢献することを謳われているように、本業でさまざまな物資を運んでおられ、事業活動そのものが多くの目標に絡んでおられます。加えて、途上国を含めて、世界中とネットワークで繋がっておられることから、この領域での、今後のさまざまな取り組みを期待しています。

高橋:本日はどうもありがとうございました。当社グループは、世界をリードする総合海運会社を目指して、社会とともに持続的な発展を実現できるよう、グループ一丸で取り組んでいきます。

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