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社外役員による対談(2015年)

松島 正之
社外取締役
(インテグラル株式会社常勤顧問)
伊丹 敬之
社外監査役
(東京理科大学イノベーション研究科教授)
(肩書きは当時のもの)

社外取締役、社外監査役それぞれの役割について、どのようにお考えでしょうか

松島:最初に申し上げたいのは、社外役員は万能ではないということです。業務に関しては社内役員の方が精通しておられます。では、社外役員がどういう期待に応えられるだろうかと考えてみると、社内の役員にはできないこと、つまり外からの視点ということです。外から見ると当社の経営もより客観的に見えるということがあるのではないか、社内では「非常識」ということで排除されていた意見が、むしろ新しい創造へ繋がるものだというように、今までとは違った見方ができる、その点に社外役員に対する期待があるのではないかと思います。
伊丹:今の松島さんのお話に全面的に賛成ですが、付け加えるとすれば、社内では気がついてはいるけれども、少し遠慮して言いはばかられることを、素直にストレートに発言するということでしょうか。社外役員は会社や経営陣と利害関係がないという意味で、経営陣に対しても、ものが言えるという立場にあります。社外役員はその立場を十分利用して、社内の人が言いはばかられることを積極的に発言することで会社に貢献するということだと思います。

取締役と監査役の違いという観点ではいかがですか。

松島:実際の機能としてはかなりオーバーラップしていますね。何か事が起きた時に、これは監査役の責任だということで、我々が役員としての責任を負わなくて済むかというと、そうではない。
伊丹:社外監査役の立場で申し上げますと、会計監査や内部統制など監査役固有のものとして法律で定められている機能があって、当然それは果たす必要がある。しかし、それに加えて、取締役会に出席して経営判断に関する発言をする場があるということをどう受け止めるかは、ひょっとすると監査役本人の考え方によって、あるいは会社の風土によって全く違う可能性があるのです。監査役が取締役会に出席はするけど、発言は滅多にしないという会社も実際あるのです。私は、監査役は議決権はないけれども、取締役会に参加している以上、経営に関する意見を思い切って言うべきだと思うのです。監査役には経営監査をする義務があります。中期経営計画や経営戦略は監査の対象になっているのです。ですから、法的に定められている義務のところで取締役と監査役には違いはある、しかし取締役会での議論に参加するという点では、ほとんど違いがないということです。

商船三井のガバナンスについて評価する点、また、改善すべき点についてお聞かせください。

伊丹:評価する点は、「戦略・ビジョン討議」(*)という時間を取って、社外取締役や社外監査役がいる席で幅広い議論をしようとする制度設計をしていることですね。これはとてもいいことです。改善すべき点は、その制度を十分に生かすような議事運営にならない時がままあることです。これは議事の数が多い、説明が長すぎるとか色々なことで、そもそも当社の取締役会はかなり長い時間を取って行われていますが、それですら時間がなくなってしまう、という点は運営上改善する必要があると思います。
松島:当社のガバナンスに全体として問題点があると思ってはいません。議事が簡単に承認されることは滅多になく、様々な角度から議論し、継続案件だったり、条件付き賛成になったりと非常にオープンな取締役会になっています。気にかかるのは、企業文化といった意味で、皆、非常にコミュニケーションが良くて人物も良いのですが、一面で何か事が起きた時に憎まれ役を買って出る人や、越境発言する人がいないことです。当社も大幅赤字を出したり、独禁法違反の問題があったりしたわけで、そういう時には違ったものの考え方を、少し勇気を持って言う人がいればより一層良いと思います。
伊丹:議事運営上そのための時間が足りないということもあるかもしれませんね。
松島:そうですね。議事運営ではICTを使うとかして担当者の説明を短くし、議事が会社全体の戦略にどう関係してくるのか、ビジョンとどう繋がっていくのかというところに時間を割くようになればなお良いと思います。

*)戦略・ビジョン討議
当社の取締役会の特長。経営戦略や長期ビジョン、あるいは経営全般に関わるテーマを取り上げ、社外取締役、社外監査役を交えて自由な意見交換を行っている。

社外取締役、社外監査役というのは、時に、経営陣に対してリーダーシップを発揮すべき時があるとお考えでしょうか。商船三井に対してそういう場合があるとすればどんな場合が考えられるでしょうか。

伊丹:経営陣に対してリーダーシップを発揮するというのは、経営陣に対してはっきり物申すという意味だと思います。一般論として言えば、社外役員の持てる最大の仕事は、経営者の暴走が始まった時に止めることです。そのための制度設計、機関設計をどうするかが、大切なのです。くれぐれも言っておきますが、現在の商船三井の経営者が暴走しているという認識は私にはありません。しかし、ガバナンスを考える人間としては、有事に機能するような仕組みが大切です。ガバナンスの仕組みは空気みたいなもので、普段は存在感などない方がいいのです。だけど、穴の底に落ちて、酸素が足らない時に初めて必要になるのです。予め、平時の頃から準備しておくことは大変健全な考え方だと思います。
松島:その他に、組織をどう変えるのかということに関しては、社内の方は従来の路線で走りがちですから、その種の知見に関しては社外の人の方が持っている可能性があります。組織の改革、あるいは損切りなどについてもそうです。経営陣として損切りしたいということもあるでしょうが、社外役員として、長期的な視点から判断して経営陣を後押しするということもあると思います。この他に、当社での経験で言えば、コンプライアンス上の問題の指摘や予防については、社外役員が特に貢献できる事案ではないかと思います。

社外取締役、社外監査役として過去の取締役会や戦略・ビジョン討議の重要議案を振り返って、特に印象に残るものがあったらお聞かせください。

伊丹:社外の人間が主体的に関わってきっかけを作ったという点で、一番記憶に残っているのは、ドライバルク船の一部の部門をシンガポールに移転することで、会計上1,000億円を超す特別損失は出るけれど、会社の体質は良くなるという議論をした時とか、経営悪化した関係会社に対して資金面での支援をしてほしいと言われた時に、さあどうするという議論をした時とか、様々な意見が出てきた。あれは機能した例ではないでしょうか。
松島:相当な激論でした。様々な意見があって1回で決まらず、継続案件となり、最終的にも条件付きの賛成をしたのですが、社外役員として議論に貢献できたと思います。また、取締役会の場で議論する「戦略・ビジョン討議」で印象に残っているのは、何回も議論したコンテナ船の話ですね。取締役会での議論が刺激となって、少しずつ動きが加速されていくのが感じられて、ポジティブな印象を持っています。

「STEER FOR 2020」は、それ以前の投資が結果として過大な市況エクスポージャーを持つことに繋がったことに対する反省をふまえて策定された部分があります。社外取締役、社外監査役としてどのような意見を述べられたかお聞かせいただけますか。

松島:私は3つの点を主張しました。1つ目は、海運市況や為替、燃料油価格等がストレートに企業収益に結びついてくるので、もう少し市況から独立することを考えないと本当の経営とは言えない、そのために構造的な改革が必要ではないかと申し上げました。海運業ですから市況から全くフリーということは絶対にあり得ないし、市況とともに生きていくということは必要だと思いますが、市況に振り回されるような状況からは脱出すべきだと考え、進言したのです。2つ目は「真にグローバルな経営」です。今までは日本が重要拠点でしたが、人口動態や地政学的な変化によって、世界の生産・消費に占める日本のウェイトは長期的には低下していきます。それに対応するには、アライアンスや現地法人を活用しながら、航路をグローバルな観点から再編成するとか、ICTを駆使していくとか、真のグローバルな企業へと脱皮して、成長を持続していけるモデルを確立する必要があると発言しました。実際、シンガポールや香港の拠点の現地化も進んできており、意識としては出てきていると思います。3つ目は、会社全体のリスクコントロールです。これは市況以外に、環境変化への対応というリスクもあります。常にどのくらいのリスクを抱えながら走っているのかという感覚をもっと持つべきではないかと申し上げました。
伊丹:「STEER FOR 2020」が過去の反省に基づいて策定されたというのはその通りだと思います。その時に私は、せめて船隊のポートフォリオがどれぐらいのリスクを持っているのか、きちんと科学的に計算したことがあるのですか、と申し上げました。
松島:それは役員会で言われましたね。非常に印象に残っています。
伊丹:船隊ポートフォリオのトータルのリスクエクスポージャーを一度測ってみたら、「耐えきれないほどのリスクになっている」とか、「それならこれを減らそう、増やそう」と、ポートフォリオの組換えの出発点になる。でもそれが分かっていないのだったら、リスクがありますと言われても、それが大きいか小さいか、わからないでしょうと。実際、不完全ながらも測ってみようという努力をし始めて、それからフリー船の比率というのが、議論の対象になってきました。だから、社外の人間が「リスクを定量的に表現すればできるはずだから、何かした方がいい」と言い出したことには、多少意義があったかなと思います。ただ、最近この「STEER FOR 2020」で安定収益を目指すという方向性が出てきたのは喜ばしいことだと思う一方、コンテナ船やタンカーといった市況リスクが付きものの部門でリスクを極小化しようとする行動が行き過ぎる危険もあります。本当はリスクに立ち向かえるような人が育たなければいけないのに、リスクのない仕事ばかりやっていたら、立ち向かえる人は減ってしまいますよ。それをきちんと考えてください、という発言もしました。

今後の商船三井に期待すること、また改めてご自身の役割についてお聞かせください。

松島:先ほども申し上げましたが、真のグローバルな企業として持続的な成長のモデルを確立してもらいたいということです。そのために、社外役員として信頼されるアドバイザーの役割を果たしていきたいと思っています。
伊丹:世界最大の船隊を持った、世界一の船会社として、今後も成長していってほしい。そのためには全体のポートフォリオの中で、伸びるところにお金と人をつぎ込まなくてはいけない。特に人材の育成ですね。LNG船への注力に向けて、船員や船長の要員計画をしっかり作ってほしいと思います。「企業は人」ですから。そのために私が果たす役割は、経営陣に対してストレートにものを言う、ということだと思います。

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