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創立記念日 社長挨拶文

2007年04月02日

当社は、本日創業123周年の記念日を迎えました。創立記念日に際する社長 芦田昭充の挨拶をお知らせします。

MOL ADVANCE スタート
商船三井グループの全役員及び従業員の皆さん、本日当社は創業123年の記念日を迎えました。昨年度(2006年度)の当社グループの業績は、3年連続で連結経常利益1,700億円台を達成することが確実です。コンテナ船分野は環境変化による大幅減益でしたが他の分野の増益で埋めることができ、高いレベルの利益水準を達成できたことは大変喜ばしく思います。
しかしながら、昨年度は4件の重大海難が発生するという当社グループにとって大変に残念な年でもありました。
本日から新3ヵ年経営計画「MOL ADVANCE」がスタートします。新計画ではまず安全運航の確保を最重要経営課題として3年間で合計350億円を投入する安全運航強化策を実施し、輸送品質を高めることでお客様と社会の信頼を回復することに全力で取り組みます。
世界の海上輸送需要は世界経済の多極的成長の下、引き続き高い伸び率を維持するものと予想されます。私たちの成長のためのステージは目の前に広がっています。新3ヶ年計画を航海図として成長を確実に自分のものとしつつ、更に「強くしなやかな商船三井グループ」に向かって進んでいきたいと思います。

Global Companyへ
新3ヶ年計画においても、私が常に申し上げているGrowth、Group、Globalの3Gの重要性はいささかも変わりません。
Growth(成長)という観点から見ると、MOL STEPの期間中に連結ベースで運航隻数は645隻から約800隻(2003年度から2006年度、 以下同様)、同じく業績は、連結売上高が9,972億円から1兆5,000億円以上に、連結経常利益が905億円から3年連続で1,700億円台のレベルに、連結当期利益は553億円から約1,100億円にそれぞれ大幅に伸ばすことができました。また、企業体力の指標となる自己資本は2,215億円から5,300億円台に積み上がっており、着実に成長路線を歩んできました。この路線を踏襲し、新3ヶ年計画ではそこからもう一段上のステージ、つまり連結売上高2兆円、連結経常利益2,200億円以上を達成することを目標とします。
次にGroupという点についていえば、グループ会社もMOL STEP期間にわたり確実に成長してきました。連結経常利益のうちグループ会社による利益は、2003年度の196億円から年度ごとに340億円、510億円、570億円と増加し、業績の上からもグループ会社の貢献度は年々大きくなってきています。今後はますますグループ全体の総合力と競争力を高めるとともに、より成長に軸足を置いたグループ経営を行うことで更なる成長を図っていきたいと思います。
3つ目のGlobalについては、当社グループにおいてはまだまだ足りない、これから特に力を入れて追求すべき課題です。経済が成熟の段階に達している日本を発着する海上荷動き量には今後あまり大きな伸びを期待することはできません。新3ヶ年計画で掲げた業績目標を達成するためには、日本における商権も大切にし、それを維持するとともに、グローバル展開を加速し、多極化・伸長する海外マーケットの商権を取り込むことが絶対に必要です。定航部門についてはマーケットに合わせ、既にグローバルに拠点が展開され、そこでの人材をはじめとしたリソースの活用が十分に行われる体制となっていますが、その他の部門についてはグローバルなリソースの活用は十分とはいえません。特に成長地域市場での営業力の強化を図り、日本を経由しないCross Tradeへ積極的に取り組むことでグローバルな商権の開拓を進めていきます。新3ヶ年計画の期間中に海外営業拠点での組織・体制作りを進め、本社機能との融合を図りつつ世界マーケットの中で成長を続けることができるGlobal Companyになることを目指します。

変化への備え-逆艪
過去の歴史を振り返るまでもなく、世界経済では何が起きるか分かりません。現在は多極的に成長している世界経済の状況も日々刻々と変化し続けており、当社グループを取り巻く事業環境もある日突然に大きく変わることがあり得ます。その激変が起こったときの備えとして「逆艪」(注)を考えておかなければなりません。新3ヶ年計画においても好調なマーケットを追い風として強気で成長路線を推し進めて行くことが基本ですが、現在順調に進んでいるように見えるビジネスであっても、その中にも将来事業環境の変化などによって、そのままのやり方では通用しなくなる可能性が潜んでいるという認識を常に持ち、先行きを100%楽観するのではなく、85%の楽観と15%の慎重さで物事を進めていくことが大切です。

(注)源平合戦で源義経が屋島に攻め寄ろうとしたときに、梶原景時は船の舳先にも艪をつけて船が前進も後退も自在にできるようにすることを義経に進言した。

安全運航の達成と定航部門の回復を
新3ヶ年計画での目標達成の鍵となるのは、安全運航の確保を基盤とする輸送品質の向上と定航部門の業績改善です。安全運航の確保のため、安全運航支援センターの設置、船員の確保・育成などのソフト面と、運航船への安全標準仕様の施工などのハード面の対策として3年間で総額350億円をかけて安全運航強化策を実行することで、世界最高水準の輸送品質の確立を図ります。併せて船舶管理組織体制については、これまでの船舶部と船舶管理会社の重層化を解消し間接管理の弊害を改めるべく、現場主義を徹底した本船中心の組織体制に変更しました。具体的には乾貨船、油送船、LNG船の3つの船舶管理会社グループにおいてがそれぞれの船種の船舶管理の基本的方針を策定し、個々の船舶管理会社はその方針に沿ってそれぞれの船舶管理を主体的に実行していきます。船舶部(新呼称:海上安全部)はそれら船舶管理会社の業務をサポートする組織となります。また、各船舶管理会社に共通する危機対応、安全管理基準の統一のため、母体となる組織として安全運航本部を設置しました。現場主義を徹底した新しい組織・体制の下で本船と管理会社が一丸となって、世界一の輸送品質を実現するよう期待します。
定航部門についても船舶管理と同様、ともすれば間接的なマネージメントになっていた状態を改めました。MOL ADVANCEの利益目標の達成のためには定航部門の回復は不可欠です。変化の激しいマーケットにあって機敏に事業を運営していく必要があり、北米、欧州、アジアの3極体制を維持しながら全組織に一本の神経を通すべくVLC(Virtual Liner Company)を改組、本社定航部を本部とした一元管理を行う組織体制としました。
以上2つの組織の変更は、外部環境が大きく変わったことに呼応して変えるものです。一般的には「窮すれば通ず」といわれることが多いのですが、正しくは「窮すれば則ち変じ、変ずれば則ち通ず(易経)」という言葉で、この「変ずれば」ということが重要なのです。従って、窮した2つの組織を変じてそれぞれの課題に対応するわけです。絶対に良い組織体制というものはありません。時々によって生じる様々な問題に対応して柔軟に組織も変更し、問題を解決していくことが必要です。

新たな飛躍に向けて
MOL STEP期間中の3年間にわたり連続で1,700億円台の連結経常利益を達成したことはほんの数年前の状況と比べれば大きな躍進であり、これを成し遂げたグループの全役員と従業員の皆さんの努力に改めて感謝します。しかし一方では、業績が3年連続で同じレベルでこれが天井だと限界を感じたり、あるいは、何もしなくても今後も1,700億円台の利益を上げることができる会社になったと安易に思ったりする人がいるのではないかと心配でもあります。新3カ年計画では、このような自らが作り出した限界感や安心感を払拭しなければなりません。先に述べたように最終年度の2009年度には今よりも もう一段高いステージである連結売上高2兆円、連結経常利益2,200億円を上回ることを狙います。
小説家の堺屋太一さんは現在「日本経済新聞」に連載中の小説「世界を創った男チンギス・ハン」の中で「人生にも企業にも国家や民族にも"飛躍の時期"というものがある。個人の場合は大抵5、6年、企業なら10年、国家民族でもせいぜい20年間だ。もしこれが断続的に3度あれば全国的な成功者、不倒の巨大企業、あるいは歴史に残る大帝国になるだろう」と言っています。企業が飛躍の時期の10年間を3度断続的に繰り返すことができるとすれば、一般的にいわれている企業30年寿命説はあてはまりません。当社グループにあてはめてみると連結経常利益が1,700億円を超えたのはやっと3年間であり、最初の飛躍の10年間の3年が過ぎたばかりといえるでしょう。これからMOL ADVANCEの3年間で更に飛躍をとげ、その次の3年間で10年間の飛躍の時期を完成するというより大きな夢に向かい、高い目標を掲げて成長を続ける努力をしていきましょう。
最後に、当社グループ各船の安全運航と全世界の商船三井グループ従業員とそのご家族のご健康とご多幸をお祈りして、私の創立記念の挨拶とさせていただきます。