社長年頭挨拶

2008年01月04日

社長 芦田 昭充

Success is never final.

企業体力の充実を目指す

商船三井グループの皆さん、新年おめでとうございます。
2007年4月にスタートした新3カ年中期経営計画「MOL ADVANCE」の初年度に当たる2007年度の業績は、世界の海上荷動きの活況、特にドライバルクの運賃市況の大幅な上昇という追い風を受けて、1年目から計画値をはるかに上回る決算を達成できる見通しです。
当社グループの連結業績は、2003年度から着実に改善を遂げ、過去の最高益を更新し続けています。今年度は連結売上高が1兆9,200億円、連結経常利益が2,800億円、連結純利益が1,850億円に達する見通しです。
この好業績の達成には、運賃市況が歴史的高値の更新を続ける好機を逃さず、利益の極大化に結び付けたことが大きな力となっています。その結果、他社も業績を伸ばしている中、当社は今年度も連結経常利益で上場一般事業会社約3,000社中上位40位以内に入る見込みであり、優良企業としての地位を固めてきております。これはグループの役員及び従業員すべての皆さんの努力の成果であり、心からお礼を言いたいと思います。
また、好業績に伴い自己資本額が充実されるとともに、ギアリングレシオ(注1)も改善することで、企業体力を示すバランスシートも健全で優良なものになってきました。ただ、その中で2007年度中間期(9月)における当社の連結ベースでの自己資本比率(注2)は34%にとどまっており、上場企業中 下から3分の1位と、残念ながらまだ見劣りするレベルです。強くしなやかな企業基盤ともなる自己資本を、現在の6,500億円からもう一段上のステージに上げ、1兆円レベルとすることを目指していきたいと思います。イギリスの首相であったウィンストン・チャーチルは"Success is never final." (「成功には、決してそれで終わりというものはない」)という言葉を残しています。この好業績に決して甘んじることなく、より高い目標に向かって進んでいきましょう。

  • 注1:ギアリングレシオ=有利子負債÷自己資本
  • 注2:自己資本比率=自己資本÷総資産

真のGlobal MOLへ

2008年度には、当社グループにおける日本を経由しない三国間のビジネスの売上高と利益が、初めて全体の50%を超える見込みです。更なる成長を達成するための方策として、2008年を当社グループにとって日本海運からグローバル海運、つまり真の「Global MOL」への一歩を踏み出すグローバル元年としたいと思います。
日本のお客様は当社事業にとっての原点・基点であり、きちんと対応していくことはもちろんですが、今後の海上荷動き拡大の中心となる三国間輸送にも焦点を当てた事業展開を図っていきます。増加する大西洋を中心とした三国間輸送に加えて、インド、ロシア、黒海沿岸諸国やブラジルをはじめとする中南米諸国など、今後経済的躍進が期待される地域での展開を積極的に進めることで事業を拡大し、結果として、海外売上高・利益比率を60%、70%へと伸ばしていきたいと思います。そのためには、海外で積極的に顧客の獲得を進めていくことはもとより、それを支える経営資源のうち「人」のグローバル化を更に進めなければなりません。

正念場のコンテナ船事業

先に述べたように全社的な業績は好調ですが、唯一懸念があると言わざるを得ないのがコンテナ船事業です。2007年度は、ターミナル事業などを含んだ部門の連結経常利益ではおよそ100億円を見込んでいますが、コンテナ船の航路損益は北米航路が大きくマイナス。航路損益全体でも水面下の業績となっており、このままでは事業部門としての存在意義も問われかねないほどの厳しい状況と認識しています。今年は当社のコンテナ船事業にとって正念場の年です。実現可能な目標として2010年度までに部門の売上高経常利益率を少なくとも5%とすることを掲げ、連結経常利益で500億円の安定した利益を出せる体制とすることを目指します。今年はその目標に向けて、しっかりとした一歩を踏み出していかなければなりません。

安全対策に妥協なし

MOL ADVANCEのメインテーマである「質的成長」を達成するためには、安全運航の確保と品質向上を図るための対策を継続して実施していくことが重要です。昨年は、2年前に連続して発生した重大事故の教訓を活かし、当社グループを挙げて安全運航に全力で取組みました。現場の第一線で直接安全を支えた乗組員をはじめとする皆さんの安全運航達成への尽力に対し感謝します。今後も安全確保のために必要な対策を講じることについては妥協することなく、取組みを継続していきます。
また、当社グループは利益の拡大に伴い社会からも高い関心をもって見られるようになってきています。好業績におごることなく、当社グループのコアである海運業をはじめとする各業種の公共的使命及び社会的責任を一人一人が常に認識し、行動することを心掛けてください。

コスト最適化を徹底する

当社グループの事業を取り巻く環境は刻々と変化していますが、その中でも今、特に注視しなければならないものはコストの上昇です。原油高による燃料油の高騰に加え、修繕費、船員費、潤滑油など多くのコストが急激に上がっています。安易にコストの上昇を受け入れるのではなく、もう一度「百尺竿頭一歩を進む(ひゃくせきかんとういっぽをすすむ)」(注3)の気概を持ってコスト削減に取り組むことをお願いします。ただし、安全運航にかかわる本船の修繕などについては「安かろう、悪かろう」は認められません。長期的に安全で高品質なサービスを確保するという目的を常に第一に考えたコストの最適化を徹底して下さい。

注3:
禅語。百尺もある長い竿の先に到達しても、そこに安住することなく更に一歩を踏み出すことで悟り続けることができる。転じて努力の上に努力を重ねることで更に進歩向上することができるという意味。

Resilient(しなやか)な経営を実現

当社グループは未曾有のドライバルク部門の高市況を背景に、今、波に乗っている状態です。2008年度もこのmomentum(勢い)は続くと考えますので、これを更なるADVANCEへつなげていきたいと思います。しかし、昨年後半から顕在化した米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題など、世界経済にはいつも不確実性が存在します。そのような中でも、外部環境の変化に応じて、十分な安定利益を基盤に市況での機会利益を最大化する、市況が軟調になったときでも一定の利益を出して常に株主の信頼に応えることができるようにする、そのような経営を行っていきたいと思います。そのためには、交錯する様々な情報の中から質の高い情報を素早くキャッチして対応することが大切です。自分たちの周囲の風がどう吹いているのかを敏感に感じ、いつも正しい方向に舵を切ることができるresilient(しなやか)な経営を実現していきましょう。
最後に、商船三井グループ運航各船の安全と全世界の当社グループ従業員とそのご家族のご健康とご多幸をお祈りして新年の挨拶とします。