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原油タンカーの安全性を高める新耐食鋼を本格採用

2008年01月29日

商船三井(以下、MOL)とJFEスチール(以下、JFE)は、5年間の調査研究を経て、原油タンカーのカーゴオイルタンクの劣化を抑制する新しい高耐食性厚鋼板(商品名:JFE-SIPTM-OT)(注1)を開発しました。
本年11月竣工予定(株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド呉工場建造)の超大型原油タンカー(MOL運航)において、新耐食鋼をカーゴオイルタンクの底板と上甲板に全面的に採用します。上甲板への採用は世界初です。

―特徴―

(1)特殊な元素を組み合わせることで、新耐食鋼は、タンクの底板上での孔食(お椀状に局所的に進展する腐食)(注2,3)速度を1/5程度まで低減するなど大きな劣化抑制が可能。

(2)タンク上甲板裏に発生する全面腐食(注2)にも、優れた防食性を示す。

(3)溶接性や加工性に関しては従来の鋼材と同等の性能を有しており、建造の際に特別な施工管理は不要。

(4)2.5年毎に行うドック時のメンテナンス作業の負荷低減が可能。

カーゴオイルタンクの底板は防食被膜に覆われていますが、皮膜が欠けた場合には孔食が発生します。その速度は最大で年間約4mmに達し、放置した場合、安全性への影響が懸念されます。また、カーゴオイルタンクの上甲板裏には硫化水素などの影響により全面腐食が発生します。減耗が大きくなった場合には、船体構造の強度上に問題が生じることも考えられます。
MOLとJFEは、船体の安全性向上、安全航行に対する信頼性向上を図ることを目的として、実船での腐食メカニズムを調査・解明し、新耐食鋼の開発に成功しました。MOLは、新耐食鋼を使用したタンカーが、塗料を使用せず腐食を抑制し、経済的かつ安全性が高く、CO2削減にも寄与するなど社会に貢献する環境対応型タンカーとして将来主流になると考えています。今後、同耐食鋼の有効性を国際的に提示していきます。

―背景―

現在、国際海事機構(IMO)では、原油タンカーのカーゴオイルタンク内腐食問題に対して、腐食防止を目的とした塗装強制化が議論されています。一方、日本は、塗装と並ぶ防食手段として耐食鋼を国際的にアピールしています。

MOLとJFEは、今後も船舶の更なる経済性、安全性、信頼性向上に努めるとともに、地球環境の保全に貢献し、お客様や社会の多様なニーズに対し積極的にこたえてまいります。