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創立記念日 社長挨拶文

2008年04月01日

当社は、本日創業124周年の記念日を迎えました。創立記念日に際する社長 芦田昭充の挨拶をお知らせします。

BRASIL MARU竣工

商船三井グループの皆さん、当社は本日創業124年目の記念日を迎えました。
今年は当社とも大変関係の深いブラジル日本移民百周年に当たります。当社の前身である大阪商船(株)で輝かしい歴史を刻んだ「ぶらじる丸」の由緒ある船名を引き継ぎ新日本製鐵(株)向けの鉄鉱石専用船として竣工した3代目「BRASIL MARU」は、3月8日に無事処女航海を終えて大分港に帰ってきました。1918年に海運史上初めて当社が世界一周航路を開設し、その後の躍進につながった南米航路への挑戦の歴史は、今また成長戦略の基礎をグローバルマーケットでの成長に置く当社にとって学ぶべき成功体験であると思います。
さて、3ヵ年の中期経営計画MOL ADVANCEの1年目に当たる2007年度の当社グループの業績は、ドライバルク市況の高騰の機会をとらえた利益の極大化により、初年度から計画値を大きく上回り連結売上高1兆9,000億円、連結経常利益については3,000億円レベルの史上最高の業績を達成する見通しです。この連結経常利益は上場事業会社の中で上位30位以内に入ると予想される業績であり、社員並びにグループの皆さんと好業績の達成を喜ぶとともにその原動力となった全員の努力に心から感謝致します。

すべてのステークホルダーにとっての魅力を高める

このように昨年度までの4年間は、上場事業会社中、常に上位40位以内に入るような業績が続き、また今年度以降も高水準な業績が期待できる当社は、新規卒業者の採用でも多数の応募者を集めるような注目を浴びる企業になりました。しかし、ここで歩みを緩めることは許されません。企業は永遠にその価値を高めていくことが求められており、それは上場企業の宿命でもあります。更に当社の企業価値を高める、言い換えればもっと魅力のある企業にするためにはどうすればよいかについて、私の考えを述べたいと思います。当社グループが尊重し、調和を図っていくべきステークホルダーは、株主、お客様、社員、地域社会、お取引先などです。魅力ある企業への変革に向けて、まずこれらステークホルダーにとって何が本当の魅力なのかということを考える必要があります。

「疾風に勁草を知る」

当社に投資してくださっている株主にとっての魅力は、投資に対する株主価値の向上です。上場企業である当社は株価を物差しとする株主の評価を真摯に受け止めるべきであり、業績を上げて配当を行い株主に報いることでその高い評価が株価に反映されるようにしたいと思います。2008年度は、昨年度との比較で円高、燃料油高という減益につながる要因がありますが、新造船の投入やコスト削減などを進めることで、昨年度と同様3,000億円程度の連結経常利益を生み出すつもりです。
「疾風(しっぷう)に勁草(けいそう)を知る」(*)という言葉があります。経営にアゲンストの風が吹いたときでもしっかりと利益を上げることで企業としての本当の強さを示すことができるのです。また、その強さが株主・投資家からの信頼を一層高めることにつながります。更に、現在約7,000億円の自己資本を2年後には1兆円とすることを目指すことで、相当の経営環境の悪化にも影響されないような盤石な企業基盤を確立することができると思います。企業価値の評価ではグループ会社を含む連結ベースでの成果が問われます。当社のグループ会社の貢献度は経常利益ベースで約650億円であり、持分法適用会社を含めてそれぞれ企業としての足腰は相当強くなっているといえますが、株主にとってより魅力のある企業を目指すため、グループ経営の更なる効率化を進め成果を上げていく必要があります。

*はげしい風が吹いて初めて強い草が見分けられる。困難にあって初めて意志の強いことがわかるたとえ。(後漢書 王覇伝)

お客様の真のニーズに応えるために

次に、お客様にとっての魅力とは当社が提供する顧客満足度の高いサービスであり、その価値が認められ相応な対価を支払っていただけるかどうかが問われます。お客様から私たちが意図した対価をいただけないということは、サービスの中身が顧客が本当に求めているものとずれてしまっていると考えなければなりません。当社としても顧客のニーズに正しく応えるサービスを提供するとともに、それを認めていただけるお客様を大切にしていきたいと考えます。
冒頭にお話しした「BRASIL MARU」も大型船による効率輸送を行いたいというお客様の要望に応えて建造したもので、他社に先駆けて同型の大型鉱石専用船計5隻を整備する計画です。自動車船、またプロダクト船や大型LPG船も、荷動きの増加や貨物のトレードの変化といった個々のお客様の輸送ニーズをそれぞれ先取りする形で船隊整備を行っています。今後もお客様からの中長期、短期の様々な輸送ニーズにも柔軟に応えることができる船隊ポートフォリオを構築するための競争力ある船隊整備を進めていきます。
また、当社の中核事業である外航海運では、グローバル化の進展に伴い海外のお客様の比率が増加し、既に国内のお客様を上回るようになってきています。国や地域ごとに異なる文化や習慣などを持つお客様への輸送提案を行う場合には、個々のお客様の求めるものや期待の背景の基となっているものの考え方、文化や習慣にまで思いを至らせることが必要です。そうした上でお客様のニーズを先取りするサービスを考え出し提供すれば、そのお客様にとって本当に魅力があり、求められるソリューションとなるはずです。

チャレンジングで躍動感のある企業に

社員にとって魅力のある企業であるために、給与や処遇などの待遇面は当然当社の業容にふさわしいものであるべきと考えています。社員は当社にとって重要な資産であり、コストとは考えていません。社員がやりがいを感じ、ダイナミックかつチャレンジングな仕事ができる企業であることが、社員にとって最も大事なことであると思います。
また、世界経済の発展とともに当社グループの活動の場であるグローバルマーケットはますます拡大し、私たちが思い切りチャレンジできる大舞台は用意されています。各自がそれぞれの持ち場で、グローバル競争に負けないたぐいのないプロフェッショナルとなることを目指して、自己研さんし、成果を上げ、仕事を通して自らを高めて生きがいを感じることを期待します。当社では2001年からの継続的なキャリア採用で、既に80名以上を採用しています。また、新卒採用者の約3割を女性が占めており、社内で多くの女性社員が活躍しています。今後も過去の経歴や性別、また国籍を問わず、有能でやる気のある人をどんどん登用することで、社員にとってもチャレンジングで更に魅力的な会社に変わっていくものと信じます。
企業は人です。企業の魅力はその顔となる執行役員や部長以下のリーダーの魅力でもあるといえます。その魅力を高めるためには、まず自分の部下から見て魅力のある上司にならなければなりません。上に立つ者は自らが部下に戦略と方針を明確に示し、積極的に権限委譲を進めることで、部下がチャレンジングな仕事ができる企業風土を作ることに努力してください。部下から見て魅力ある上司はお客様から見てもきっと魅力あるパートナーとなるはずです。一方、部下の人たちは常に自分が上司の立場であればどうするかを考え、臆することなく戦略や方針についてどんどん提言して上司と議論をしてください。そうすることで一層企業としての活力、躍動感が生まれてきます。

社会的な責任を果たす

社会にとっての当社の魅力については、海運業がグローバルな荷動きを先導し、世界経済の発展に大いに貢献しているという社会的評価に表れています。今後は、総合輸送グループとして社会そして地球規模での持続的成長に寄与するために、当社グループの企業活動と環境保全の基本である安全運航の徹底と、より一層環境に配慮した経営を行っていくことが必要です。ただし、いかに高い理想を掲げてもたった一度の重大事故で社会の信用は失墜してしまうことを常に肝に銘じ、慣れからくる油断を根絶し、安全運航の原点に立ち返ってもらいたいと思います。
最後に船主、造船所といった当社の事業を支えていただいているお取引先にとってわが社の魅力とは何でしょう。お取引先にとっての売り上げは当社にとってのコストになりますから、コスト競争力を追求するとお取引先からは魅力がないように見えるかもしれません。しかし、自らが成長することで共に成長発展する機会をお取引先に提供できる企業こそが、長い目で見れば本当に魅力のある企業ということができると考えます。両者の関係が一方通行では両者の永続的な発展は望めません。お互いに良き緊張感の中で切磋琢磨し、創意工夫を施しグローバル競争を勝抜いていける良きパートナーであり続けたいと思っています。

もっと魅力ある企業を目指して

ここまで各ステークホルダーの目線からの魅力について述べてきましたが、当社グループがより魅力ある企業となるために必要な喫緊の課題はコンテナ事業の再建です。コンテナ事業は中長期的には世界経済の拡大にともなう荷動きの増加により最も高い成長率が見込まれる分野ですが、足元では燃料油価格の高騰やサブプライムローン問題の影響による北米トレードの荷動き成長の鈍化など厳しい事業環境が続くと予想されることから、その再建については重大な覚悟をもって尽力していかなければなりません。コンテナ事業については2010年度までに連結部門損益500億円を達成するための再建策を立案し取締役会へも報告しましたが、これを確実に成し遂げることで投資家から見ても総合海運として欠けるところのない本当に魅力ある企業となることができると考えます。
人間の歴史を生き延びた古典の中には、現代の最先端の企業経営に通ずる普遍的な知恵やヒントが数多くあります。論語に「子曰く、賢を見てはひとしからんことを思い、不賢を見ては内に自ら省みる」という言葉があります。すぐれた人を見たら、自分もそれと同じようになろうと思い、そうでない人を見たら、同じような悪い点はないかと自らも反省すべきであるという意味です。まさにベストプラクティスを求めて他社の良いところを積極的に取り入れ、自社の立ち位置をベンチマーキングしていく今日的経営のあり方を示すものです。自分たちが強いところはより強く、弱いところはそれを補うことで自らを向上させることは、企業としての魅力を増すために重要です。私たちは刻々と変化する事業環境に合わせて戦略を変えていく「しなやかな経営」を標榜しています。そのためには、このような自由な発想と柔軟な対応とともに、常にアンテナを高く張って環境の変化を読み取り、決定的な情報を逃さず素早く取り込んで、それを自分たちの戦略に反映して行く姿勢が重要です。
更に、企業理念に掲げているように、常に社会規範を守り、企業倫理を自覚し透明性の高い経営を行うこと、つまりコンプライアンスにのっとった業務執行を徹底することも企業としての魅力を増すためには必要です。また、コーポレートガバナンスの一環として今年度から本番年度となる内部統制システムをしっかり運営していくことにも真摯に取り組んでいかなければなりません。
最後に、当社グループ各船の安全運航と全世界の商船三井グループの従業員とそのご家族のご健康とご多幸をお祈りして私の創立記念の挨拶とさせていただきます。

以上