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創立記念日 社長挨拶文

2010年04月01日

当社は、本日創業126周年の記念日を迎えました。創立記念日に際する社長 芦田昭充の挨拶をお知らせします。

再び高みを目指して

「GEAR UP! MOL」新中期経営計画スタート

MOLグループの全役職員の皆さん、共に、126年目の創立記念日をお祝いしたいと思います。
昨日当社は、新しい中期経営計画「GEAR UP! MOL」を発表いたしました。新中期経営計画は「新たなる成長への挑戦」をメインテーマとして、MOLグループの新たな針路を示すものです。2004年に私が社長に就任して以来、当社は、昨年度までの5年間で1兆円を超える利益を上げてまいりました。しかし、前中期経営計画のちょうど折り返し点の2008年9月にリーマンショックとともに未曾有の経済危機が出来(しゅったい)し、当社の業績のスピードも1、2ノットまでスローダウンしてしまいました。過去の成功体験を捨て、志新たに初心に帰って、奮闘努力をしなければなりません。
今回の中期経営計画の基本方針も、事業の原点に戻り、再び成長を目指すところにあります。まずは、新年度の業績目標(連結経常利益1,000億円)の達成により、会社のスピードを10ノットに回復させる必要があります。

雷鳥は冬を耐え陽春に羽ばたく

先日、当社のLNG船部隊は、日本とロンドンのチームが協力して、エクソンモービルがスポンサーとなる中国向けLNG船6隻のメガプロジェクトを受注いたしました。
LNG船のマーケットはリーマンショック以前からプロジェクト受注競争が激化し、低採算化したため、当社は、新規受注を控え、営業規模をすばやく縮小し、冬の雷鳥のように体力の消耗を避けてまいりました。今回、新たなマーケットと顧客ニーズに合わせて、蓄えた力を解き放ち、大型商談をリスクに見合う条件で成約することができました。
景気後退で巨額の赤字を余儀なくされたコンテナ船事業も、冬の雷鳥のように、身の丈に合わせた船隊縮小とコスト削減努力を通じて体力の温存を図り、減速航海で、環境対策にも貢献しつつ、マーケットの自律回復を促し、春を迎える準備を整えているところです。ぜひとも、コンテナ船事業においても、雷鳥モデルで、今期の黒字達成と、成長市場での収益拡大を実現し陽春に羽ばたいてもらいたいと期待しております。

進化する百足経営

2009年度は世界の主要海運会社が赤字に転落する中で、当社は黒字を残すことができました。これにより、私が過去の経験に学んで主張してきた「百足(むかで)経営」、すなわち、当社がその専門性を最大限に発揮して海運に経営資源を集中する一方で、多様な船種のセグメントをバランス良く運営することにより、好調なセグメントが不振なセグメントを補って、景気後退期にも黒字を確保し得るという考え方の正しさが実証されたと自負しております。ただし、百足も足が多いだけでは駄目で「新たなる成長」を実現するためには一本一本の足が太く、強くなければなりません。特にコンテナ船事業の足を太く、強くすることが緊急の課題となっています。
また百足経営の胴体、すなわち、多様な海運セグメントを支える共通のプラットフォームとして、全社的なリスク管理を行う経営企画部門、安全運航の担い手である船舶管理部隊、信用ある財務基盤を支える財務・経理部隊、海運インテリジェンスで差別化を生み出す調査部門、及び海運経営に必要なIT活用の高度化を担うシステム部門など、管理部門の活躍が重要であることも論をまちません。

成長市場をハイエンドのクオリティで勝ち抜く

好市況が続いた2008年までは、世界の造船能力は船腹需要に対して、常に不足の状態が続いていました。しかし、今や中国・韓国を中心に世界の造船能力が飛躍的に拡大し、一転して過剰な船腹供給能力を抱えた状態に変化しております。海上荷動きそのものは、世界景気の回復と、新興国市場の拡大、輸送ニーズの遠距離化から引き続き、確実に成長していきますが、当社は今後拡大する成長市場において、世界首位の海運会社に相応しい「ハイエンドのクオリティ」でお客様に提供する輸送サービスの差別化を図り、船腹過剰のリスクを意識しつつ成長の機会を確実にとらえていきたいと考えます。
それが、今中期経営計画の「新たなる成長への挑戦」であります。
今後は、従来にも増してクオリティの高い安全性を確保することが、お客様がキャリアーを選ぶ際の絶対条件になります。新中期経営計画の中では、世界最高水準の安全運航を4ゼロ(海難、油濁、死亡災害、貨物損害の防止)の実践を通じて実現し、お客様の信頼を獲得していきます。

再び逆櫓の備えを

先に申し上げたとおり、前期2009年度は、リーマンショックの余波の中、皆さんの努力のおかげで、当社は、邦船大手3社の中で唯一黒字を確保することが出来ました。
私は、5年前から皆さんに逆櫓(さかろ)※1を準備することをお願いし、万一、荷動きの急減、円高、燃料高が現実のものとなったときの対策を部門ごとに、あらかじめ用意してもらいました。結果としてリーマンショックとその後の危機を乗り切るにあたり、逆櫓の備えが功を奏しました。スクラップ、返船、停係船などの緊急対策を発動した結果、この3月末で、当初1,000隻の運航規模を計画していたものを、900隻にまで身の丈を縮めることによりコスト削減を図り、通期黒字を確保いたしました。しかし、用意していた逆櫓の備えは、ほとんど使ってしまったことも事実であります。従って、景気回復過程の今こそ、改めて逆櫓の備えをみんなで考え準備をしなければなりません。
過去を振り返っても、プラザ合意と円高('85)、日本のバブル崩壊('90)、アジア通貨危機('97)、リーマンショック('08)など、危機は10年周期で、しかも突然やってくるものだという警戒心を常に保ち続けることが重要です。

※1 逆櫓:源平合戦で源義経が屋島に攻め寄ろうとしたときに、梶原景時は船の舳先にも艪をつけて船が前進も後退も自在にできるようにすることを義経に進言した。

自彊不息

昨年『ビジョナリーカンパニー』の著者として有名な、Jim Collins が『如何にして強者は没落するか(How The Mighty Fall)』という本を米国で出して話題になりました。
彼は大企業が凋落する5つの段階を提示しております。それによれば、凋落の第1段階は、成功体験がもたらすおごり(Hubris Born of Success)として現れます。
私も全く同感で、往々にして成功の中にその後の失敗の種がまかれており、特に大きな成功体験は、大きな蹉跌の原因につながる危険性があると思っております。従って、自彊不息(じきょうやまず)、自分から進んで努め励み常に怠らないという意味ですが、新中期経営計画の遂行に際しても、過去の成功体験にとらわれることなく、ゼロからのスタートと決意を新たにして、今年度の1,000億円、最終年度2012年度の1,500億円の利益を必達の目標として努力していきたいと考えております。
「虎躍破浪(こやくはろう)」※2の年もいよいよ佳境に入り、困難に積極的に挑戦し、勇猛果敢に進んでいけば、必ずやこの目標は達成できると思います。全MOLグループが一丸となり、みんなで再び高みを目指して頑張りましょう。

※2 虎躍破浪:当社の本社が虎ノ門にあり今年は寅年であることから、虎がほえながら不況の荒波をかき分けて勇猛果敢に進んでいくという意味を込めた社長 芦田の造語。

最後に、MOLグループ全運航船の安全運航と、全世界の当社グループの皆さんとご家族のご健康とご多幸をお祈りして、私の創立記念の挨拶とさせていただきます。