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次世代船シリーズを構想
~第三弾 大型鉄鉱石専用船 「ISHIN-III」~

2010年04月08日

近い将来 技術的に実用可能な次世代船シリーズ(注1)の第三弾として、当社ではこのほど大型鉄鉱石専用船の構想をまとめました。次世代の資源輸送を担う環境負荷低減型の鉄鉱石専用船「ISHIN-III」です。
既に当社は、先駆的な輸送コンセプトと革新的技術の採用によって高い環境性能を実現した超大型鉄鉱石専用船"BRASIL MARU"(注2)を運航しています。同船クラスの特徴を生かした「ISHIN-III」は、これまで当社が開発・採用してきた技術を最大限に進化させ、環境負荷のさらなる低減を目指す、実現性の高い構想です。
主な特長は次の通りです。

「ISHIN-III」の2大特長

(1)排熱エネルギー回収:推進力を最大限にアシスト
技術進歩による排熱エネルギー回収効率の向上を更に追求。大型主機の排気ガスから熱エネルギーを最大限に回収し、電気変換する。こうして得た大量のエネルギーを推進力として利用し、環境負荷の大幅低減を実現する。
(この技術は大型主機を備えるタンカー・コンテナ船に展開可能)

(2)CO2排出量削減:低速航海中も
主機にかかる負荷が低い領域で給気量を最適にコントロールできる過給システムと電子制御エンジンを採用することで、低速航海中もCO2排出量を削減。

→ (1)(2)の導入と新技術の複合採用で、CO2排出量30%削減を達成する。

さらに、当社が参画中の風力推進船「ウインドチャレンジャー計画」(注3)の開発が進み、ビジネスモデルが確立されれば、50%以上の削減が可能となる。

(注1)
次世代船シリーズに込めた思いの「船舶維新」をキーワードに「ISHIN」と命名。
(注2)
2007年12月に竣工した世界最大級の鉄鉱石専用船(約32万トン積載可能)。
全長340m、幅60m、主機出力約23,000kW。省エネ性・安全性・高い技術などを評価され、日本船舶海洋工学会選考の「シップ・オブ・ザ・イヤー 2007」を受賞した。
(注3)
新形式の風力推進船を研究開発するプロジェクト。東京大学を中心に海運会社、造船所、日本海事協会、メーカーと共同開発中。

主なCO2削減技術

  • 機関システムの効率化

    (1)排熱エネルギー回収:推進力を最大限にアシスト
    主機から得られる排気ガスエネルギーで排気ガスタービンと蒸気タービンを駆動し、電力として高い効率で回収する。その電力をプロペラ軸に装備した加勢モーターへ供給し、推進力として使用する。

    (2)CO2排出量削減:低速航海中も
    主機の排気ガスで駆動するターボチャージャーにも空気量をコントロールする機能を加え、負荷の低い領域においても燃費効率を改善する。

  • 燃料油添加剤の使用
    当社技術研究所と株式会社タイホーコーザイが共同開発した舶用燃料油添加剤「タイクラッシュHD」を使用し、燃料油における着火性能を向上させる。
  • 摩擦抵抗低減
    塗膜にできる微細な凹凸に水をとらえて凹凸部分を減少させ、摩擦抵抗を少なくする超低摩擦型船底塗料の次世代型を採用する。
  • 最適運航支援システム
    船体の運航状況をモニタリングしながら最新の海気象データを利用し、船型毎に異なる性能特性を考慮しながら最短航路、最小燃費航路を探索する。
  • 推進効率最適化
    当社が開発、世界中で1700隻以上の船のプロペラに採用されている省エネ装置「PBCF」(Propeller Boss Cap Fins)の改良型と、高効率プロペラを装備する。
  • 船体最適設計
    水面下の船体形状を大幅に改善し、燃費改善効果を追求する。
  • 自然エネルギー利用
    船体後部甲板上などに太陽光パネルを設置。大洋航海中に発電された電力を推進力の一部に使用するとともに、大容量の蓄電池(リチウムイオン電池)に充電する。この電力は港内航行および停泊中の船内電力に利用可能。