社長年頭挨拶

2011年01月04日

社長 武藤 光一

トップスピードにGEAR UP

「スタートダッシュに成功」

MOLグループの皆さん、新年明けましておめでとうございます。私は昨年6月に社長に就任し半年間がたち、社長として初めて新年を迎えたわけですが、まずは昨年を振り返ってみたいと思います。
4月に当社は中期経営計画「GEAR UP! MOL」を始動しました。計画策定段階では依然リーマンショック以降の景気の不透明感が残り、正直なところ数値目標達成については相当の努力がないと厳しいという気持ちがありました。結果としては、計画初年度である2010年度の業績は「GEAR UP! MOL」で目標として掲げた連結経常利益1,000億円を大きく上回る見通しであり、陸上の短距離(むしろ本質はハードル走に近いかもしれませんが)のごとく低い姿勢から好調なスタートダッシュを切ることができました。もちろん楽観は禁物ですが、「GEAR UP! MOL」が順調に始動したことは素直に喜びたいと思います。
好調の大きな原動力は、2009年度通期568億円の赤字から2010年度の上半期だけで259億円の黒字へと大きく改善したコンテナ船事業の貢献でした。運賃レベルと荷動きが2008年度上期のリーマンショック前に近いレベルにまで戻ってきたという追い風が吹いたということもありますが、実は2008年度上期のコンテナ船事業は13億円の赤字でした(ロジスティクス事業を含む)。当時に比べ燃料油単価は下がっていますが、組織のスリム化などをはじめ数々のコスト削減努力を積み重ねた結果や大胆なる減速運航の実施、イールドマネジメントの強化などの自助努力が結実した結果といえます。コンテナ船部門の皆さんの多大な努力をたたえたいと思います。
コンテナ船以外の事業も当社業績を支えるべくコスト削減を含めて健闘しています。一方で、タンカー部隊のように業績改善のきっかけがつかめていない事業もまだありますが、これからの追い上げに期待します。今年は、MOLグループ全体として更に勢いを増し、GEARをトップスピードに入れていきたいと思います。

「危機感のマンネリ化を防ぐ」

しかしながら、これからギアを上げて走っていくべきトラックの上にはクリアしていかなければならないたくさんのハードルがあります。
世界の経済は先進国と発展途上国とに二局分化し、発展途上国は勢いをもって成長し、物流も伸ばしてきてはいますが、一方で、GDPの60%を占める欧米、日本においては依然として不安材料を抱えています。今年も新造船の大量竣工が見込まれ、今後の船腹需給バランスを見ると海運市況に対して、決して安心感を持てるとは言い難い状況にあります。リーマンショック以降大きく荷動きは落ちましたが、全社一丸となって危機感をバネにその対策の立案、実行を遂行することで当社は多くの障害を乗り越えてきました。これが現在の業績の後ろ盾になっていることは間違いありませんが、業績の改善と共に危機意識がマンネリ化して実行力の欠如に繋がっていることはないか、今、また皆さん一人ひとりが各自の取り組みを再点検してほしいと思います。
事業環境の地殻変動の予兆をいち早く正確に捉えて正しい判断をし、素早く対応しなければなりません。現状への安住は将来の危機の温床になり得ますし、マンネリ化した危機感が皆さんのアンテナ感度を鈍くしてしまうことに繋がってしまうともいえます。環境変化への対応の一瞬の差が生死を分けることもあります。そこで「GEAR UP! MOL」で掲げているビジネスインテリジェンスの強化が今年は特に重要になってきます。今年は兎年ですが、兎のように長い耳をピンと立てて、出来るだけ多くの有益な情報を収集、分析し、変化の予兆を察知したら兎のごとく素早く判断して機敏に行動することが必要な年になると思います。

「コスト競争力を備えた安全確実な輸送を提供」

現状に安住してはいけないのは安全運航やお客様への対応、コスト削減についても同様です。昨年発生した「BRIGHT CENTURY」の衝突・沈没は安全運航を企業理念として掲げる当社として大変遺憾な事故でした。私たちは至らぬところを真摯に反省して将来への貴重な教訓とし、世界最高水準の安全運航体制構築の達成を目指して、着実に歩みを進めていかなければなりません。安全運航を担保する内部統制のプロセスの見える化を進め、4ゼロ(海難、油濁、死亡災害、貨物損害の防止) を実現し、お客様からの信頼を積み重ねていくことが重要です。
営業面でのお客様への対応についても、ニーズを的確に把握し、長年培ってきた当社ならではの「おもてなしの心」によるきめ細やかな対応や、環境対応による差別化などで全世界のお客様からの信頼が得られるよう、現状に安住せず不断の努力を続けることが必要です。また、いくらお客様の信用があってもコストが高過ぎればサービスを使ってもらえません。コスト競争力に立脚した安全確実な輸送を提供していきたいと思います。海運会社としての本分に立ち返り、世界のお客様の信頼を勝ち取るべく皆さんとともに進んでいきましょう。

「徹底的な議論とPDCAで前進を」

今年の海運を取り巻く環境は不透明ではありますが、だからといって全てに慎重であっては成長を達成することはできません。世界一の海運企業グループであり続けるために、危機感を持ちつつもしっかりとした分析に基づいて、リスクを測って、結果につながる決断を行うことが経営の使命です。より質の高い経営を実践していくために今年も皆さんとコンパス会などの機会で徹底的に議論を重ね、知恵を絞り、羅針盤をしっかり読んで全員で針路を同じくしていきたいと思います。
就任以来、これまでに18回のコンパス会を開催し、営業部門、管理部門全ての部室との第1回コンパス会がちょうど昨年12月に一巡したところです。1回目は課題の確認と共有が主題になりましたが、今年から始まる2回目のセッションではそれらの課題にどう取り組んできたか、その成果はどうなっているかをフォローしていきます。つまりPDCA(Plan Do Check Action)サイクルのCとAに入ります。当然にして要求される対応はハードルが高くなっていくことを覚悟して下さい。MOLグループ社員の皆さんの間でも同じように徹底的な議論をして、各部室やグループ、チームなどで同じ羅針盤を共有し、PDCAをしっかり実行して正しい針路を確認しつつ素早く、確実に行動に移し、前進してください。
MOLグループ構成員の皆でトップスピードにGEAR UPし、この一年間が終わった時に皆で達成感を味わえる年にしようではありませんか。

最後に、MOLグループ全運航船の安全と、全世界の当社グループの皆さんとご家族のご健康とご多幸を祈念し、新年の挨拶といたします。