社長年頭挨拶

2014年01月06日

株式会社商船三井
代表取締役社長 武藤 光一

RISEから跳躍へ ~全員参加で会社の未来を~

MOLグループの皆さん、新年明けましておめでとうございます。

今年の干支は午(うま)ですが、天馬が大空を駆けるがごとく、MOLグループが七つの海の波濤を超えて跳躍するような年にしたいと思います。

当社は今年4月に創業130周年を迎えます。また、当社の前身である大阪商船と三井船舶が合併して50年、大阪商船三井船舶とナビックスラインの合併により商船三井が発足して15年になります。この記念すべき年のスタートに際し、これまでの当社の歴史と伝統を継承しつつ、新しい時代に向けて進化し続けるMOLグループを目指し、私も思いを新たに臨みたいと思います。

2013年を振り返れば、日本経済もアベノミクスによる三本の矢により、長年苦しめられたデフレからの脱却の可能性が見えてきました。当社では昨年、事業改革とステージを変えたコスト削減という二本の矢で、黒字復帰の目途が立ちました。今年は三本目の矢である「成長戦略」が問われる年となります。本日は、今後成長軌道に復帰させるため、当社の事業環境、今後の心構えなどについてお話したいと思います。

事業環境

昨年は新興国経済の一部に成長ペース減速の兆候がみられたものの、先進国を中心に世界景気が回復し、海上荷動きも着実に伸びました。新造船供給も減少し、船腹需給ギャップは緩やかな改善に向かいました。一方で、過剰造船設備は引き続き存在するため、今後数年は海運市況が上昇したとしても上値が重たくなる可能性があり、昨年も投機マネーによる発注も多く見られました。将来の中国向け海上荷動きの頭打ち、完成車に見られるように地産地消の流れに伴うトンマイルの減少など、リスク要因についても注視しなければなりません。
また、契約期間の短期化、顧客のアジアシフト、新規プレーヤーの参入、市況連動型契約の増大、トレードパターンの変化など、ビジネス環境が大きく変わってきています。MOLグループの企業理念の一つに、「顧客ニーズと時代の要請を先取りする総合輸送グループとして世界経済の発展に貢献します」とありますが、顧客のニーズの変化に対して、MOLグループの英知を結集し創意工夫を行いながら輸送需要にしっかりとお応えすることによって、MOLグループの持続的成長につなげていくことが求められています。事業環境の変化をチャンスと捉え、積極的にチャレンジしてください。

信用の回復

2012年9月、当社に対し自動車船に係わるカルテル嫌疑で公正取引委員会による立ち入り調査が実施されました。それ以来当社は調査に全面的に協力しておりますが、より透明な経営・事業運営を目指して、ビジネスコンダクトの全面的再調査を行っています。法令遵守は企業活動の絶対条件であり、今後ともグローバルなコンプライアンス強化を図っていきます。また、昨年6月に当社運航コンテナ船において大規模海難事故が発生し、多くのお客様に大変なご迷惑をお掛けしました。その他にもLNG船やドライバルク船でも海難事故が発生しており、大規模海難事故の根絶に向けた安全運航の抜本的対策は喫緊の重要課題です。一方、昨年1月から3月にかけて実行した事業改革に伴い財務体質の悪化を余儀なくされましたが、成長戦略を描く上で、成長分野への投資を可能とする財務面での信用力の強化は必要条件です。
当社グループの事業運営においてステークホルダーからの信用が大前提であり、信用の回復に向けて、これらの課題に対し全社を挙げて取り組んでいきます。

将来を見据えて

三本目の矢、すなわち成長戦略の要を定め、実行することが当社にとっても今年の課題であります。海運市況の大幅な上昇が当面期待できない状況下、当社が生み出す付加価値、売れるサービスを認識し、そこに磨きをかけることが必要となります。成長分野であり、長期安定収益が見込まれるLNG船及び海洋事業においては、経営資源を投入して事業拡大を図ります。多様化する輸送ニーズ、管理ニーズに対して当社がこれまでに蓄積してきた海技ノウハウや運航技術を一層高度化し、技術力をもってお客様に選んでいただくことが求められます。その他の部門においても、市況依存型から脱却し、顧客により高度な付加価値を提供することにより他社との差別化を図り、顧客と長期契約を締結して安定収益の積み上げを実現してください。
さらに、新たな分野における事業機会の掘り起こしも必要です。ターミナル事業などの海運周辺事業の他、シェール革命に伴う種々の新たな物流機会の出現、船舶に対する環境規制に伴う動きなど、新たな潮流と市場のニーズをしっかりと見定め、新たなビジネス機会を追求してください。これまでの考え方にとらわれることなく、当社の新たな歴史を自ら創り上げる気概をもってアンテナを高く張り、研ぎ澄ました洞察力、冷静な判断力、そして果敢に挑む起業家精神を持ち、日々の業務に臨んでください。そして、三本目の矢の的を確実に射抜いてください。

全員参加

商船三井の未来は予想するものではなく、創るものです。事業環境を十分に見極め、独創的なプランを作り、自ら変革し、全員でMOLグループの未来を創り上げましょう。そのために、若手社員も臆することなく自由闊達な議論を尽くし、全員で知恵を絞って、しなやかな頭に汗をかき、次期中期経営計画を策定して下さい。広く深く、そして楽しく考えることによって発想が豊かになります。特に若い人には将来にわたっての貴重な体験になります。当然のことながら、私も皆さん以上に全力を尽くします。

最後になりますが、2014年のMOLグループ全運航船の安全を誓い、全世界のMOLグループの皆さんとご家族のご健康とご多幸を祈念して、私の新年の挨拶といたします。