社長年頭挨拶

2015年01月05日

株式会社商船三井
代表取締役社長 武藤 光一

順風に帆を揚げよ ~Sail before the wind~

MOLグループの皆さん、新年明けましておめでとうございます。

今年の干支は未(ひつじ)です。「未」という漢字は、これから実をつける成長途上の木のかたちを表しています。 われわれも、今まさに未来に向かって枝を伸ばしているところです。2015年を、将来立派な果実を収穫するために行動する一年にしたいと思います。

昨年を振り返って

創業130周年を迎えた昨年は、業績が期初予算を大きく下回る見通しとなり、荒波に翻弄された厳しい一年となりました。
とりわけ、コンテナ船部門は、東西航路を中心に荷動きは増加し航路環境が改善したにもかかわらず、アジア/南米東岸航路の賃率低下や米国ターミナルの全自動化工事の遅れなどが影響し、当社は甚だ残念ながら大幅な赤字を計上しました。
また、ドライバルク船部門は、ケープサイズ船を中心に新造船の竣工量が減少することから船腹需給が引き締まり、市況が大きく改善すると期待されていましたが、一時を除きほぼ1年市況の低迷が続きました。

順風を捉え自らの推進力アップ

英国には、"A Smooth Sea Never Made a Skillful Sailor."「穏やかな海は良い船乗りを育てない」ということわざがあります。「困難を乗り越えてこそ、人は成長していく」という意味です。われわれも図らずも荒波に遭遇しましたが、ここで学んだことを次につなげ活かしていくことができるはずです。一刻も早く低迷を脱し、反攻に転じなければなりません。
世界の経済環境は大きく変化しています。米国がシェール革命により産油量を増大させることは予想されていましたが、OPECの減産見送りもあり、昨年秋以降急速に原油安が進みました。
また、米国では経済が堅調であることから金融の量的緩和を終了した一方、日本や欧州では積極的な金融緩和策がとられた結果、昨年9月以降急速にドル高・円安が進みました。
当社にとって円安と燃料油価格の下落は金利低下とあいまって強い追い風となっています。今年は円安と燃料価格下落の順風に帆を揚げ、自らの推進力もパワーアップし、より大きな飛躍に向けて前進していきたいと思います。

差別化による確かな成長

われわれは「STEER FOR 2020」で、次の10年の確かな成長に向けて、「事業ポートフォリオ」「事業モデル」「事業領域」の3つの変革に挑むべく大きく経営の舵を切りました。いずれの船種においても、市況の回復を前提とするのではなく、市況の水準によらずに利益を上げられるビジネスモデルの再構築を目指しています。実際、顧客のニーズを汲み、当社の強みを活かしたサービスを通じて付加価値を提供することで、将来の安定利益に寄与する長期契約を次々に獲得しています。
例えば、LNG船・海洋事業部門では、国内向けシェールガス輸送や海外案件など昨年だけで10隻を超える規模の長期契約の商談を成約しました。ロシアのヤマルLNGプロジェクトへの参画を通じ、北極海航路での砕氷LNG船運航という野心的な挑戦を開始したほか、当社の技術協力の下、中国で建造しているLNG船は間もなく1番船が竣工します。これらは営業、海務、技術の3部門が一丸となって成し遂げたものであり、これまでの社内関係者の情熱と努力に敬意を表したいと思います。サービスの差別化を図るには卓越した技術力とそれに取り組む勇気が必要です。これからもチャレンジは続きますが、やり抜く決意を改めて確認したいと思います。
また、油送船部門においても荷動きの変化を捉え、海洋事業の成長に伴って需要が増大しているシャトルタンカー事業に参入を果たしました。 これらは将来にわたっての安定収益源となるほか、事業の領域拡大にも寄与することが見込まれており、今後もこのような成長分野に積極的に取り組むことにより、安定利益をもたらすビジネスの裾野を広げていきます。皆さんに期待したいのは小手先の知恵ではなく、既存のビジネス領域や旧来の手法にとらわれない抜本的な改革です。部門長それぞれが世界観と歴史観を持って、変化を捉えた大胆な舵取りを行ってほしいと思います。

コンテナ船は反攻の年に

コンテナ船部門については心配されている方も多いでしょう。業界内で競争力・収益力の差が表れているのは事実です。当社のコンテナ船事業の構造的な問題については、船隊のコスト競争力を高めるため世界最大船型となる20,000TEU型コンテナ船整備に着手するなど事業改革の手を打っています。世界の経済成長に伴いコンテナ船の荷動きは着実に増加しており、コンテナターミナルを含むコンテナ船事業が成長分野であることは論をまちません。お客様から評価を頂ける付加価値、コスト競争力をいかに産み出していくかに、まさに企業の真価が問われます。
コンテナオペレーションやイールドマネジメントなどの高度化を通じた採算向上の余地はまだまだあります。コンテナ船部門の役職員は、自社のコスト競争力や営業力を客観的に分析し、黒字化を必達目標として、強い決意を持ってあらゆる努力をしてください。ここが正念場です。不撓不屈の精神で前に進みたいと思います。

持続的な成長に向けて

昨年は、一昨年から続けてきた4ゼロ(重大海難事故・油濁による海洋汚染・労災死亡事故・重大貨物事故を発生させないこと)を継続して達成しました。引き続き4ゼロを維持していくことで、お客様の安全・安心への信頼に確実に応えていきたいと思います。
また、当社グループの活動は、安全運航のほか、ステークホルダーの皆さんからの会社に対する信用と役職員に対する信用によって成り立っていることを決して忘れてはなりません。昨年公正取引委員会から認定された自動車船のカルテル問題では、不祥事再発防止のため、皆さんと多くの時間をかけて意見交換を行いましたが、これを決して風化させないよう再発防止の取り組みを継続していきましょう。
当社が企業活動を持続するためには、全ての役職員が常にコンプライアンスを意識し、社会規範と企業倫理に則って行動する必要があります。各国競争法の遵守はもちろんのこと、「贈収賄の禁止」「顧客及び会社等の秘密情報の保持」「差別とハラスメントの禁止」などをとりわけ重視すべきと考えています。

重要なのは皆さん役職員一人ひとりの力を合わせることです。発想力と実行力を磨き、組織風土をより良いものにして、力を結集して変革を実現しましょう。
2015年のMOLグループ全運航船の航海安全を誓うとともに、皆さんとご家族にとりまして実り多い素晴らしい一年となりますよう祈念し、私の新年の挨拶と致します。