もくじ
国内の長距離フェリーに初めて設けられた「あのキャビン」をはじめ、新造船「さんふらわあ くれない」の6階~8階(最上階)には20種類以上の客室が存在します。シングルから3世代、そしてペットを連れた人。あらゆるタイプの旅客に対応できる多彩なキャビン(客室)を、航海作家の金丸さんが紹介します。
一度は泊まってみたい!スイートのコネクティングルーム
まずは最上階の8階から。※以下、★はキャビン名です。
8階のキャビンは全てスイートルーム。それもただのスイートルームではありません。
【スイート和洋室コネクト】★
世にスイートルームを持つフェリーは多々あれど、こちらのキャビンは「さんふらわあ くれない」シリーズにしか存在しません。
「さんふらわあ くれない」のコンセプトは「きずな(KIZUNA)」。世代を超えて家族が集い、船旅を楽しむ家族のつながり=「きずな」を再認識する場を提供する、という思いがそこに込められています。
それを具現化したのが、コネクティングルーム。日本の長距離フェリーでは初めての試みです。
それはどういうものなのか。こちらの【セミスイートコネクト(洋室)】★と
【スイート和洋室コネクト】★(文字通り和室と洋室のミックスルーム)が
この内とびらによって2キャビンが1つにコネクト(つながる)!
これでコネクティングスイートのでき上がり。
セミスイートコネクトは定員2~3名。バルコニー・シャワー・トイレ付きで、もちろんオーシャンビュー。
スイート和洋室コネクトは定員2~4名(ベッド2名・布団2名)。こちらはバルコニー・トイレそしてバス付きの海が見えるキャビンです。
いずれもテレビや冷蔵庫を備え、アメニティも完備。いたれりつくせりの最上級仕様です。
コネクティングスイートの最大定員は7名。まさに3世代での乗船者向けのキャビンです。
家族団らんはスイート和洋室コネクトで。眠るときは、例えばおじいちゃんとおばあちゃんは布団のあるスイート和洋室コネクト、お父さんとお母さんと子どもはセミスイートコネクトに分かれておやすみなさい。そんな使い方もできますね。
なお、セミスイートコネクトもスイート和洋室コネクトもそれぞれ2室ずつしかないレアキャビン。ということでコネクティングスイートも2室のみとなります。
3世代ファミリーで別府へ温泉旅行。特別な旅を豪華に演出する、夢のキャビンと言えるでしょう。
バルコニー付きのスイートルームが目白押し
8階にはこのほかにもハイグレードキャビンが目白押し。
【スイート】★は定員2~3名。12室あります。
【スイートバリアフリー】★とスイートとの違いはバルコニーが付いていないこと。そして車いすが通りやすい広さが設けてあり、段差のないバリアフリーを採用。車いすからベッドへの移動がしやすいよう、ベッドの高さも通常より低く設定してあります。定員は2~4名。1室だけの超レアキャビンです。
【セミスイート】★は定員2~3名。13室用意されています。
これらのスイートカテゴリーのキャビンはいずれもバルコニー・シャワー・トイレ付き。セミスイート以外はバス付です。テレビや冷蔵庫、そしてアメニティも完備。バリアフリールームを除いて全てバルコニーがあります。
パブリックスペース編でも触れたように、8階にはスイートキャビン専用の「スイートカフェラウンジ」が設けられています。ここでくつろぎながら、瀬戸内ナイトクルーズを心ゆくまで楽しむのも、スイートルーム利用者の特権です。
デラックスルームで上質なクルーズ演出
7階にはデラックスタイプのキャビンがあります。
スイートとの主な違いはバルコニーが付いていないこと。
それでも、「上質なナイトクルーズ」を演出できるキャビンには違いありません。
そしてこちらにもコネクティングルームがあります。
【デラックスコネクト】★(定員2~3名 シャワー・トイレ付き 4室)
【セミデラックス和室コネクト】★(定員2~4名 シャワー・トイレ付き 4室)
この2室を内扉でコネクトすれば、【コネクティングデラックス】★の誕生です。
3世代での船旅にはもってこいで、しかもスイートよりもリーズナブル。
コネクティングデラックスは4室のみのレアキャビンなので、こちらのチケット争奪の競争率も高いようです。
この他には【デラックス洋室】★(定員2~3名 シャワー・トイレ付き 11室)、そして【デラックス和室】★(定員2~4名 シャワー・トイレ付き 4室)があります。いずれも窓ありの、グレードの高いキャビンです。
ペットと一緒にデラックスな船旅を
また、船尾にはペットと一緒に過ごせるデラックスキャビンがあります。
その名も【デラックスウィズペット】★。
定員2~4名。シャワー・トイレ・エサ/水用皿・ペットシート付きの窓ありキャビンです。
ペットケージルームやドッグランのすぐそばにあり、ペットも快適な船旅を送ることのできるデラックスルームとなっています。
全部で7室用意されています。
快適性を求める「おひとりさま」にはスーペリアシングル
7階からは、海の見えない窓無しキャビンも登場します。それがスーペリアです。
定員2名の【スーペリアツイン】★は26室。
定員1名の【スーペリアシングル】★は30室。
いずれも外の景色こそ見えませんが、シャワー・トイレ付きでテレビや冷蔵庫も完備。デラックスカテゴリーまでのミネラルウォーターや「さんふらわあクッキー」などのサービスはないものの、アメニティはそろっており、ビジネスホテルにいるような感覚。1泊の船旅を過ごすには申し分ありません。
特に「おひとりさま」乗船者には、スーペリアシングルは快適かつリーズナブルなキャビンです。
一風変わった個室も見逃せない
中央部には【プライベートシングル】★があります。
7501と7502の2室のみですが、1室につき定員は9名。これはどういうことかというと、1室にシングル区画(半個室)が9つ並んでいるのです。
ということで、7501も7502も室外からのロックはできませんが、自分の室内からの鍵はかけられます。扉はアコーディオンカーテンタイプです。
スーペリアと同じ窓無しキャビンで、テレビは付いていますがトイレ・シャワー・冷蔵庫はありません。
志布志航路の「さんふらわあ さつま/きりしま」にもこのタイプのキャビンがありますが、通路に明らかな違いがあります。
「さんふらわあ くれない」の通路には手洗器が備えられています。
また、デラックスウィズペットの反対側・右舷に設けられているのが、【プライベートベッドグループ(個室)】★という定員4名・洗面台付きのキャビン。12室あります。
【プライベートベッドグループ(個室)バリアフリー仕様】★(定員6名・洗面台付き)は1室。
プライベートベッドグループは窓無しキャビン。2段ベッドが2つある個室、と考えればいいでしょう。洗面台も付いているので、最大4名まで(バリアフリー仕様は最大6名まで)のグループで利用するのに適しています。
リーズナブルな船旅派にはプライベートシリーズ
さて、アトリウムに隣接してレセプションやショップ、レストランなどがそろい、まさに「船の公共広場」ともいえる6階にやってきました。
こちらにはプライベートシリーズと呼ばれる、「さんふらわあ くれない」ではもっともリーズナブルなキャビンがそろっています。
船中央部の右舷側に位置する【プライベートツイン】★(4室)と、こちらの【プライベートシングルツイン】★(4室)。
いずれもバリアフリー仕様で、ツインは定員2名、シングルツインは定員1~2名となっています。各室にテレビがあります。
このカテゴリーは完全な個室ではなく、半個室タイプ。通路には共用の手洗器が設置されています。
7階のプライベートシングルのように、プライベートツインと同シングルツインのキャビンが、1つのゾーンに集合しているカタチを取っています。「半個室が並ぶ大部屋」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。
アコーディオンカーテンタイプの扉で、室外から鍵は閉められませんが、室内からの施錠は可能です。
安価にひとりあるいは2人旅を楽しみたいという人にはもってこいのカテゴリーです。
現代的な2等和室=グループ和室
このゾーンに隣接しているのがグループ和室のゾーン。
「さんふらわあ くれない」には「かつてのフェリーの代名詞」、大勢の乗客が枕を並べて寝る2等和室の大部屋はありません。
その進化形ともいえるのが【グループ和室】★(5室)です。
先述のプライベートツイン・シングルのように「半個室が並ぶ大部屋」の形式をとり、やはり室外からのロック不可・室内からの施錠OKのタイプです。
定員3名のキャビンと4名のキャビンがあります。どれもテレビと手洗器が備わります。
小さな和室という感じで、気の合う少人数の仲間で利用するのに適しています。見知らぬ人との相部屋になることはないので、そういう意味では乗客のプライバシーに配慮した「現代的な2等和室」という感覚です。
6階左舷側には【プライベートベッド(相部屋)】★が並びます。
7階にあるプライベートベッド(個室)と違うのは定員1名ということ。複数名で1区画を利用する、いわばベッドルームが並ぶ相部屋です。最大定員16名で15室あり、更衣室も備えています。
プライバシーは確保できるので、移動中はゆっくり眠るだけ、という人にはぴったりのカテゴリーではないでしょうか。女性専用の「レディースルーム」もあります。
パブリックスペース編でも触れたように、6階の女性用トイレには高級ホテルを彷彿とさせるゴージャスなパウダールームが備わっています。6階のキャビンを利用した女性は、このパウダールームで身支度を整えましょう。
ドライバー専用ゾーンに垣間見える素晴らしさ
ここまでは旅客が利用可能なキャビンを紹介してきました。
次は貨物を運ぶトラックドライバー専用の【スタンダードシングル】★。
文字通り定員1名で、ベッドの横に洗面台が付くシンプルな窓無しキャビンです。
旅客ゾーンではありませんが、ドライバーエリアにもおじゃましてみましょう。※通常ドライバーエリアは、一般のお客さまの立ち入りは禁止です。
ドライバー専用の展望浴場や
長距離移動の疲れをいやし、仲間と談話ができる娯楽室も。
これまで多くのフェリーを内覧してきた筆者ですが、ドライバー専用エリアのキャビンや施設の充実ぶりに「ドライバーになってこの船に乗りたい!」と思ったのは初めての体験でした。
物流業界の「2024年問題」(働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称)に対応するべく生まれた、とも言われる「さんふらわあ くれない」。旅客としての乗船では目に触れない空間にも、この新造船の素晴らしさが垣間見えます。
あらゆるタイプの旅客に快適な船旅を提供し、日本の物流を支えるドライバーに配慮し、地球環境に優しい。1隻で3つの役割をこなすスーパー・カジュアルクルーズフェリー「さんふらわあ くれない」。新しい時代を切り開くこの船、何度も乗ってみたいと思わせられるニューフェイスです。
本当にたくさんの種類の客室がありました。それぞれに目的やコンセプトがあるので、自分たちのニーズに合わせた最適な客室を選べるのはうれしいですね。
乗船後、空室があれば予約していた客室をグレードアップすることも可能。希望する方は、レセプションで相談しましょう。
どの客室も、今までより快適なことは間違いなし。以前の「さんふらわあ」に乗船した経験がある方は、この快適さに驚くことでしょう。初めて乗船する方は、フェリー旅の快適さや楽しさを実感できるはず。
ぜひあなたも、新造船「さんふらわあ くれない/むらさき」に乗船してみてください!
金丸知好(カナマルトモヨシ)/航海作家
1966年富山県生まれ。日本のフェリーだけでなく外国航路や、中国や韓国の国内フェリーにも乗船経験が豊富。フェリー専門誌「フェリーズ」(海事プレス社)の執筆、「クルーズ」誌(同)に「フェリーdeクルーズ」を連載している。主な著書に「アジアフェリーで出かけよう!」(出版文化社)、「フェリーでGO!」(ユビキタスタジオ)、「超実践的クルーズ入門」(中公新書ラクレ)など。
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