もくじ

大勢の人を乗せて長距離航行する「さんふらわあ」。移動手段、そして移動そのものを楽しむ「カジュアルクルーズ」として利用されるだけでなく、実は大量の貨物車両(トレーラーなど)の輸送手段としても活躍しています。「さんふらわあ」のようなカーフェリーをはじめとした船舶による海上輸送は、効率的で環境にやさしい輸送方法として注目されています。

トラックやトレーラーを一度に大量輸送できる「さんふらわあ」

気軽に非日常的な船旅、「カジュアルクルーズ」を楽しめる「さんふらわあ」は、大勢のお客さまを乗せることができますが、商船三井クルーズが運航する客船「にっぽん丸」とは違い、乗っているのは人だけではありません。
カーフェリーという名の通り、お客さまの乗用車やバイクなどの車両、さらには、さまざまな貨物や生活物資を積載したトラック、トレーラーなども「さんふらわあ」で輸送しています。特に、本州と北海道の間に道路はないので、大量の車両を輸送するには、「さんふらわあ」のようなカーフェリーの利用が必須となります。人もクルマも貨物も、一度に大量に運べて効率的なカーフェリーは、日本国内の物流に欠かせない輸送手段なのです。

周囲を海に囲まれた日本では、古くから海運・海上物流が盛んに行われてきました。現在でも、輸出入における貨物輸送量のほぼ100%が船舶による海上輸送であり、国内においても貨物輸送量の約40%が船舶による輸送です。原材料などの産業基礎物資に限れば、約80%が船舶によって輸送されています。国内の船による海上輸送(内航海運)は、私たちの生活や産業、経済活動を支える重要な輸送インフラなのです。
また近年、主に物流の効率化を図るためメーカーなどの多くの企業が急速に物流のシステム化を推進し、原材料の調達から生産・販売、倉庫での保管、そして輸送までをトータルで一元管理する「サプライチェーンマネジメント」という考え方も浸透してきました。

地球温暖化防止策として効果的で、環境にやさしい「モーダルシフト」

「モーダルシフト」という言葉を聞いたことはありませんか?モーダルシフトとは、『トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること』(国土交通省)を言います。国内の物流を支える輸送手段の中で、よりCO2(二酸化炭素)排出量削減につながる方法(モード)を選択して組み合わせることが、国の政策で推進されています。CO2は温室効果ガスのひとつで、CO2の増加が地球温暖化の原因と考えられており、サステナブル(持続可能)な地球環境を実現するためにはCO2排出量が少ない方法で荷物を輸送することが望まれます。
海洋国家である日本において、海上航行する「さんふらわあ」はとても効率的で環境にやさしい輸送手段と言えます。
例えば、重量1トンの貨物を1km運ぶ場合で、トラックと船舶のCO2排出量を比較すると、船舶はトラックの約1/5とされています(船舶のCO2排出量=約0.043kg、トラックのCO2排出量=約0.216kg)。
※数値は国土交通省データ(2022年度)より。
日本長距離フェリー協会のページを参考に、「さんふらわあ」が就航する航路を例にして計算すると、CO2の総排出量を約48%以上も削減できることがわかります。

例1:兵庫県姫路市から佐賀県鳥栖市まで、10トンの貨物を運ぶ場合のCO2排出量

兵庫県姫路市から佐賀県鳥栖市まで、10トンの貨物を運ぶ場合のCO2排出量

■CO2排出量の内訳==========

▼トラックによる陸送▼

トラックによる陸送(FS)

▼「さんふらわあ」を活用した海陸複合輸送(モーダルシフト)▼

兵庫県姫路市から佐賀県鳥栖市まで、10トントラックですべて陸送した場合のCO2排出量は約1,177kg。神戸港から大分港まで、トラックを「さんふらわあ」で航送した場合のCO2排出量は約616kg。
海陸複合のモーダルシフトによって、二酸化炭素を約48%削減した輸送が実現できます。

例2:東京都町田市から北海道札幌市まで、10トンの貨物を運ぶ場合

東京都町田市から北海道札幌市まで、10トンの貨物を運ぶ場合

■CO2排出量の内訳==========

▼トラックによる陸送(青森~函館間のみフェリー利用)▼

トラックによる陸送(青森~函館間のみフェリー利用)

▼「さんふらわあ」を活用した海陸複合輸送(モーダルシフト)▼

「さんふらわあ」を活用した海陸複合輸送(モーダルシフト)_MOLF

東京都町田市から北海道札幌市まで、10トントラックで陸送した場合のCO2排出量は約2,319kg。大洗港から苫小牧港まで、トラックを「さんふらわあ」で航送した場合のCO2排出量は約833kg。
海陸複合のモーダルシフトによって、二酸化炭素を約64%削減した輸送が実現できます。

日本長距離フェリー協会のページを基に算出。

労働環境の改善・輸送の効率化に役立ち、ドライバーにもやさしい「モーダルシフト」

トラックだけによる陸上輸送から、フェリーを組み合わせた海陸複合輸送へ転換する「モーダルシフト」は、CO2排出量削減に加え、トラックドライバーの長距離運転による労働負担軽減や法令遵守にも貢献します。
長距離トラックドライバーの長時間労働は、ドライバーの心身の健康への影響や人材不足だけでなく、疲労に伴う交通事故や交通渋滞の発生にもつながることから、大きな社会的課題となっています。近年、これらの課題を改善するために、ドライバーを拘束する時間の上限や休憩時間の下限の基準が告示されるなど、規制の強化が進められていて、2024年4月からはトラックドライバーの時間外労働の上限が規制されます。
トラックドライバーにとって、「さんふらわあ」での移動時間は休憩時間となります。しっかりと睡眠のとれるドライバーズルーム、ゆったりと疲れを癒せる大浴場やおいしい食事が食べられるレストランなどが備わっています(船舶により仕様は異なります)。
「さんふらわあ」を利用して北海道・札幌市から神奈川県・川崎市まで冷凍品を運ぶトラックに密着した記事『トラックドライバーのお仕事に密着。「さんふらわあ」のドライバー専用エリアにも潜入!』もご覧ください。

また貨物輸送に限らず、例えば家族旅行で大阪府東大阪市から大分県別府市までといった自家用車による長距離の移動でも、大阪南港から別府港まで「さんふらわあ」を利用することで、車の排気ガスを削減できます。さらに、宿泊しながら移動ができるので車を運転する必要がなく、運転による疲労やストレスが軽減され、単なる長距離移動は快適な船旅へと転換されます。「モーダルシフト」は、地球環境だけでなくドライバーにもやさしいのです。

環境にやさしく、社会に必要不可欠なインフラとして、「さんふらわあ」は進化する

商船三井グループでは、フェリー・RORO船(Roll-on Roll-offの略で、トラックや乗用車を自走で積み下ろしできる船)を、定時性に優れた安全性の高い物流手段であり、重要な社会インフラであると考えています。貨物と旅客の輸送サービスを通じて、地方創生の一翼を担うとともに、多くの人々の生活に豊かさを提供しています。
現在、商船三井グループが運航しているフェリー・RORO船の航路は、大阪~別府、神戸~大分、大阪~志布志(鹿児島)、大洗(茨城)~苫小牧(北海道)(以上フェリー)、東京~博多・苅田(RORO船・途中寄港地あり)です。
・関西~九州航路の物流ページ≫
・首都圏~北海道航路・首都圏~九州航路の貨物輸送事業ページ≫

また、2023年には日本初のLNG(液化天然ガス)燃料フェリーとなる2隻の新しい「さんふらわあ くれない」「さんふらわあ むらさき」が、大阪~別府航路に就航予定です。2022年8月に行われた「さんふらわあ むらさき」の進水式の様子は、『「さんふらわあ むらさき」が“誕生”する瞬間に立ち会う ~「さんふらわあ」進水式見学ツアー:後編~』で詳細にご紹介しています。また、最新のニュースや建造中の様子はこちらよりご確認いただけます。
さらに、2025年には大洗~苫小牧航路にもLNG燃料の新造船が2隻、就航予定です。LNGは、従来の燃料である重油に比べて、発熱量あたりのCO2とNOx(窒素酸化物)の排出量が少なく、SOx(硫黄酸化物)はほぼ排出しないという、非常に環境性能に優れたクリーンな燃料です。新造船が就航すれば、今まで以上に「モーダルシフト」のメリットが大きくなると期待が寄せられています。

効率的で環境にもドライバーにもやさしいカーフェリー。次の旅行では、移動・宿泊に「さんふらわあ」を利用した環境にやさしい船旅で、エシカル消費※を実践してみませんか?
※エシカル消費とは、『地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のこと』(消費者庁より引用)を言います。

■「さんふらわあ」各航路船舶の旅客定員と車両搭載数(2022年8月現在)

「さんふらわあ」輸送能力(2022年8月)
ドライバーにも環境にも優しい「さんふらわあ」で、
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