「船酔い回避策」はプロに訊け!アイキャッチ

もくじ

船で旅した方の多くが一度は経験する「船酔い」。 どうすれば防ぐことができるのか、酔ってしまったらどうすれば良いのか?

本サイト「さんふらわあ今昔ものがたり」連載でおなじみの航海作家・カナマルトモヨシさんが自らの体験談なども交えて伝授します。

船酔いする理由

船が海上の波によって起こす「揺れ」が原因で発生する症状。これを一般には「船酔い」と呼んでいます。どうやら英語のsea sicknessの直訳が語源のようで、学問上では「動揺病・加速度病」と言います。

なお船の揺れといってもいろいろで、大きく以下の4つに分類されます。

・ピッチング(縦揺れ)
・ローリング(横揺れ)
・ヨーイング(水平面での左右の揺れ)
・ヒーヴィング(上下動)

さらに波が大きくなると

・パンチング(船首が波に叩き付けられる)
・フォーリング(急速落下)

といった激しい動揺も起こります。

船酔いする理由1
海。それは、時に厳しい表情を見せることもある
(写真:カナマルトモヨシ)

「船酔い」に限らず、そもそも人はなぜ「乗り物酔い」を起こしてしまうのでしょうか?

人体には倒れないように、自動的に姿勢を保つ調整機能があります。これを平衡機能といいます。人は歩くことを日常から行っており、脳が振動や揺れを処理し、この平衡感覚を保持するのです。この働きには内耳にある前庭や半規管という器官が重要な役割を果たしています。同時に内耳は、目からの情報も脳に伝えています。

船やクルマなどの乗り物に乗って、前後・左右・上下・回転などの刺激を内耳が受けると、その情報が脳へ送られます。こうした動きは日常ではあまり体験しないもの。慣れない刺激が、不規則に連続すると情報過多となり、脳がパニックを起こします。そして自律神経に異常な信号を送ってしまうのです。すると、生あくび、生つば、冷や汗、顔面蒼白、手足の冷感、気持ち悪さなどを起こし、最終的に嘔吐などの症状が出ます。これが「乗り物酔い」のメカニズムです。

*参考:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会

船、客室による違いはあるのか?

船、客室による違いはあるのか?1
総トン数が1万トンを超える大型フェリーでは比較的揺れは少ない。写真は大洗―苫小牧間を結ぶ「さんふらわあ ふらの」

残念ながら現在、揺れない船は世界のどこにも存在しません。ただ、船の大きさによって揺れ具合はずいぶんと変わります。総トン数が1万トンを超える「さんふらわあ」級は大きな船の部類に入ると言えるでしょう。このように大きな船は、小さな船に比べれば揺れにくく酔いにくいと言えます。

船、客室による違いはあるのか?2
「さんふらわあきりしま」のエントランス
こうした船の中心部分は、最も揺れにくいポイントだ

さらに、船内にも酔いにくいポイントというのはあります。船は重心と浮力の中心(浮心)の関係で揺れの中心が決まり、そこが揺れの少ない場所になります。具体的にいえば中央部、だいたいインフォメーションやエントランスがあるポイントです。

逆に船首および船尾寄りの客室は、中央部に比べ、揺れの影響を受けやすくなります。特に波の影響をもろに受ける船首部は要注意ポイント。船酔いが心配な人は、中央部にある客室を選ぶと、揺れは若干感じにくくなります。

このように、船酔いを回避するためには客室を選ぶ工夫も重要になります。

航路による違いはあるのか?

酔いにくいということは、あまり揺れを感じないということです。国内の長距離フェリー航路の中で、最も揺れが少ないとされているのが瀬戸内海の航路。さんふらわあでは神戸~大分と大阪~別府という2航路があります。本州と四国、九州に囲まれた内海のため、年間を通して海は穏やか。ふだん太平洋を通る船も、台風接近時には大しけを避けるために瀬戸内海航路に変更することもあるくらいです。

航路による違いはあるのか?1
今年も4回開催される、昼の瀬戸内感動クルーズ
船酔いが心配な方も、安心して参加できる

揺れがほとんどなく、船酔いの心配もほとんどない。そういう意味からも、船旅ビギナーにおススメの航路です。そしてデッキから遠くの景色を眺めることも船酔い対策には効果的ですので、日中に瀬戸内海の島々や、明石海峡大橋・瀬戸大橋など本四連絡橋の通過シーンを楽しめる「昼の瀬戸内感動クルーズ」は、船酔い心配性の方にも最適です。

乗船する季節の選択も、船酔い回避の重要なポイントです。先ほど述べた台風接近時や、冬季の太平洋ではどうしても大きな揺れが発生しやすくなります。

反対に、春や秋、そして台風のない夏の日だと、海が鏡のような表情を見せることが多くなり、船酔いの心配がいらない船旅になることが多くなります。

乗船のご予約、ご利用は計画的に!

酔い止め薬は効くのか?

効き目などに個人差があるため、具体的なメーカーや薬品名を挙げることは、ここでは遠慮したいと思います。また、ほかの薬と併用するときにも、十分な注意が必要です。ひとつ言えるのは、酔い止め薬の多くは、興奮状態にある脳を静める成分を配合しています。薬を飲んだ後、人によっては眠気を催すのは、そうした理由によります。

よく聞かれるのは「船酔いの症状が出てから、酔い止め薬を飲んでも効果はあるの?」という点です。

薬というものは一般的に成分が体に吸収されれば、効果が表れるものです。ところが船酔いの場合、嘔吐したことで飲んだ薬が吸収される前に体外へ排出されてしまうこともあります。こうした事態を避けるために、なるべく早め、具体的には乗船の30分~1時間前の服用が目安とされているようです。

でも、薬の服用に抵抗がある人も多いと思われます。酔い止め薬ほどの効果は期待できないかもしれませんが、さんふらわあ各船のショップでは、酔い止めドロップを販売しています。また、刺激を与えることで症状が回復するということもあります。たとえば辛いものや、氷などの冷たいものを口に含むと酔いがウソのように和らいだ、という人もいます。

あるいは、ツボ療法を試した人も多いのではないでしょうか。手首に酔い止めのツボがある、とは昔からよく聞きます。ただ、そのツボの位置を正確に把握し、ちゃんとそれを押せないと、あまり意味はありません。北海道航路夕方便のさんふらわあのショップでは、シー・バンドという酔い止めのツボ押しバンドも販売されています。

船酔い予防の工夫は?

先述のように、船内ではなるべく中央部にいる、というのが船酔い回避の原則です。それ以外にも、さまざまな工夫で酔いにくくすることができます。船酔いは、揺れだけが原因ではありません。疲労や睡眠不足などの体調不良、不快な温度や湿度、ガソリン・ペンキなどのニオイも原因になります。

また、過去に船酔いの経験があると、それがトラウマになって今後も酔いやすくなる人も非常に多いのです。

〇睡眠時間をたっぷりとる
睡眠は自律神経を休める効果があります。乗船前夜はぐっすり眠ることが、船酔い回避の第一歩です。長い時間眠ることも大切ですが、短時間でも熟睡、良い睡眠がとれればかなりのアドバンテージを得たことになるでしょう。

〇食べ物の工夫
もう一つ、前夜から工夫してほしいこと。それが食べ物のチョイスです。胃に負担のかかる消化の悪いもの、脂っこい食べ物は、前夜だけでなく乗船直前や乗船中も避けるのが無難です。具体的にはラーメン、天ぷら、ステーキ、そしてアルコール類はなるべく取らないことがベターです。あと、酸っぱいものも、できる限り口にしないほうがいいでしょう。
乗船の1時間前までに、消化のいいもので軽く済ませるのがコツです。リンゴ、ヨーグルト、ゼリー、パン、卵などがベスト。おにぎりなんかをお茶と一緒に食べるのもいいようです。嘔吐するのが怖いからといって、何も食事を取らないのはNG。逆に満腹状態で船に乗ってしまうのもダメ。両ケースとも、かえって船酔いを促進してしまいますし、症状を悪化させる原因ともなります。

〇ニオイ対策
船に乗ると、独特なニオイを感じるという人は多いと思います。その正体はオイルや塗装に使われるペンキだったりするのですが、人によっては、ちょっと苦手なニオイの種類かもしれません。この船内特有のニオイと、過去の船酔いのトラウマが脳のなかで一緒になってしまう人は多いのです。そして、そのニオイを嗅いだだけで脳がトラウマを呼び起こしてしまい、気持ちから船酔いを引き起こしてしまいます。
これに対しては、可能であれば客室内の換気を良くし、船内のニオイだけでなく、その他の気持ち悪くなると思われるニオイがこもらないようにするといいでしょう。

〇キャビンの温度調節は「やや涼しめ」に
温度調節も大切です。あまり暖かすぎると気分が悪くなってしまいます。クルーズ客船ではよく、「船内が意外と寒かった」という体験談を耳にします。これは、生暖かすぎて乗客が気分を悪くしないように、という運航者の配慮があるのかもしれません。
フェリーの客室では自分の好みで温度調節できることが多いので、できるだけ「やや涼 しめ」にしておくぐらいが快適でしょう。湿度も高いよりは、やや低めに抑えておくのがベターです。

〇読書・スマホなど下を向く作業はNG
どうしても長時間の移動になる長距離フェリーの旅。そこで、「日頃読むことができない本を読もう」とか、退屈しのぎにスマートフォンでLINEやSNSを楽しもう、と考える人は当然いるでしょう。
しかしこれは、船酔いを引き起こすNG行為の最たるものなのです。パソコンのような 細かい作業、そして読書やスマホの画面を見るために下を向くと、酔いやすいからです。内耳で揺れを感知すると、脳が揺れていると判断します。その一方で、目から入る情報は一点を見つめているので揺れていません。この二つの相反する情報によって脳がパニック状態に陥り、自律神経の乱れから吐き気などの船酔い症状が現れてしまうのです。

〇沈黙は禁
夫婦やカップル、気の合う仲間など複数で乗船した人は、船内ではなるべく会話を絶やさないようにしましょう。ずっと黙っていると、ついつい船酔いを意識してしまい、最後には本当に酔ってしまうからです。
カラオケ設備がある船では、みんなで歌うのも船酔い防止策になります。船内イベントがあるときは、それを楽しむのも効果的な方法です。船内での沈黙は金ではなく、禁なのです。

船酔い予防の工夫は?1
明るくにぎやかに過ごすのも、船酔いにならないコツ

〇自己暗示をかける
意外と船酔いに対して効果があるのが、自己暗示をかけることです。先にも述べましたが、船酔いするのは過去のトラウマなど心理的な要因が大きく、メンタルの工夫も侮れないのです。
「私が酔うことなどありえない」「これをすれば必ず大丈夫」などなど、根拠がなくてもいいので、自信を植え付ける暗示をかけ続けましょう。

船酔いしてしまったらどうすれば良い?

船酔いしてしまったらどうすれば良い?1
大阪―志布志航路の「さんふらわあ さつま・きりしま」にはデッキにベンチソファがある

〇デッキに出て外の空気に当たり、景色を眺める
「クルマに乗っているだけの人は酔うけど、運転する人は酔わない。」ちょっと不思議だと思いませんか?運転者はクルマの進行方向を意識し、自然に体がそれに対応するからと言われます。一方、後部座席にいる人は、前方の景色が見えないため、どのように揺れるかわかりません。こうした先を予測できない状態は、酔いを招きやすいのです。つまり、車酔いを防ぐためには進行方向がはっきりと見える座席を選ぶと良いようです。
これは船でも同じことが言えます。酔ってしまったからといって、客室に閉じこもってしまうと、更に症状がひどくなることもあります。デッキに出て、遠くにある動かないもの(陸地・灯台など)を眺めることで、かなりの改善効果が期待できます。遠くの景色を眺めることは、気分転換にもなりますし、外気の刺激が自律神経を活性化する役割を果たすのも、船酔い症状の改善につながります。

船酔いしてしまったらどうすれば良い?2
デッキに出て潮風にあたり、遠くの景色を見ることも、船酔い解消に効果的

〇デッキに出られないときの療法
あまりにも気分が悪くて外にも出られないときは、ベルトや衣服をゆるめて横になり、腹式深呼吸をします。胸を張り、ゆっくりと深呼吸をするのがコツです。その際には頭部を冷やし、室内の換気をよくしておきましょう。あと、船の揺れと逆方向に体を動かしましょう。そうすることで、自分は揺れていない状態になります。
ひどく酔ってしまったら、進行方向に頭を向けて寝ます。くれぐれも進行方向と逆に頭を向けないようにしてください。列車でもそうですが、進行方向に背を向けていると気分が悪くなることが多いのです。

〇シンプルに、眠る!
これが最高の対症療法かもしれません。「酔い止め薬を正しく服用し、その効果で眠たくなってきたら素直に眠る。」これで乗り物酔いを解消したという人も少なくないはずです。眠る際は、体を締め付けるような衣服はなるべく脱ぎ、身も心もリラックスできる体勢にしておきましょう。
他に、「酔う前に酒を飲んで酔っ払って、眠ってしまう」という方法を実行したことがある人もいるかもしれません。人によっては適当な方法かもしれませんが、かえって気分が悪くなるリスクをはらんでいることも忘れてはなりません。

プロも船酔いするのか?

プロも船酔いするのか?1
船で働く「プロ」でも表には出さないが船酔いする人はいる

仕事柄、船で働いているクルーのお話を伺うことがあります。毎日、業務で船に乗っている人は、船酔いなんてしない!なんてことは決してありません。つらい・厳しい、と口にする方も少なくありません。

そうかと思えば、ものすごい揺れなのに全く平気な顔で業務にあたっている人もいます。この酔いやすい人、酔わない人の違いはどこからくるのでしょう?一般には平衡感覚、体幹の強い人は酔いにくいと言われます。あとは、やはり「慣れ」が重要だと思います。

最後に、かれこれ30年ほど船に乗って、日本国内や世界中を旅してきた筆者について。船酔いでぶっ倒れたという経験はありません。かなり大きな動揺の際、「これは危ないな」と思い、さっさとベッドで横になって眠ってしまった…ということは何度かありましたが、食事を取れないくらい寝込んでしまうとか重大な事態には陥ったことがありません。どちらかといえば、かなり揺れても平気な顔をして、レストランで腹いっぱい食べているのが当たり前になっています(笑)

船酔い克服のトレーニングとして、体の前後、左右、回転などあらゆる方向の動きに慣れるために、日常からブランコ、すべり台、シーソー、鉄棒など、いろいろな運動をすること、がよく挙げられます。こうした訓練の積み重ねで平衡感覚や体幹の強さを獲得し、船酔い知らずの体になっていくのだと言われます。

しかし、アスリートではない筆者は、一度もこのような地道なトレーニングを行ったことはありません。

ただ、大小問わずいろんな船に乗っているうちに「場慣れ」していったことは、船酔いしないメンタルと体づくりに大いに役立ったと思います。そしてしばらく船に乗らないと「あの船独特の揺れやニオイが最近足りない」と、かえって禁断症状が出るくらいになってしまったのです。

船酔いを一発で克服する特効薬は、まだ開発されていません。しかし、筆者個人の経験から言わせてもらうと、最大の特効薬は「船旅を楽しむこと」。そしてその楽しい経験をどんどん重ねてゆくことに尽きると思うのです。

船酔い対策をしっかり行い、
楽しいフェリー旅を。

関西~九州航路「フェリーさんふらわあ」詳細

※フェリーさんふらわあWEBサイトへリンクします。

関東~北海道航路「商船三井フェリー」詳細

※商船三井フェリーWEBサイトへリンクします。

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