もくじ

毛並みの違う2隻

現在就航している「さんふらわあ」は10隻。そのなかで、ちょっと毛並みが違うのが、大洗―苫小牧間の深夜便として活躍する「さんふらわあ しれとこ・だいせつ」の2隻です。

写真提供:船が好きなんです.com

どういう風に毛並みが違うのかというと、他の8隻が最初から「さんふらわあ」の船として建造されたのに対し、この2隻はもともと別のフェリー会社が建造し、別の船名でデビュー。そして後に「さんふらわあ」の名を冠したといういきさつがあるのです。

室蘭―直江津―博多航路で活躍していた「ニューれいんぼうべる」時代の「さんふらわあ しれとこ」(写真:カナマルトモヨシ)

「さんふらわあ だいせつ」は「ニューれいんぼうらぶ」、「さんふらわあ しれとこ」は「ニューれいんぼうべる」という名前がありました。いずれも2001年に九越フェリーの室蘭(北海道)~直江津(新潟県)~博多(福岡県)航路でデビュー。2007年から商船三井フェリー(現・商船三井さんふらわあ)の大洗~苫小牧航路の深夜便に就航し、現在の名に改名しています。

そんなちょっと「異色のさんふらわあ」に、おじゃましてみましょう。

シンプルだけど便利なエントランスホール

乗客が利用できるのはAとBという2つのデッキ。構造はいたってシンプルです。
まずは乗船すると最初に足を踏み入れるBデッキから見てみましょう。

こちらは案内所。売店も兼ねています。同航路の夕方便(「さんふらわあ ふらの・さっぽろ」が就航)に比べると、売店の品ぞろえは少ないですが、さんふらわあオリジナルグッズも購入できます。案内所の前が、エントランスホール。コイン式ロッカーも設置されています。

進行方向左側には喫煙コーナー。ソファもあり、気持ちもちょっとぜいたくに紫煙をくゆらせることができます。ガラス張りのシースルーとなっているので、内部は思ったよりも開放感があります。なお、喫煙コーナーは上のAデッキにも設置されています。

進行方向右側にはペットルーム。事前に予約をすれば利用できます。ペットとの面会時間は案内所の営業時間と同じ。案内所がオープンしているときが、ペットの顔を見るチャンスです。

エントランスホールの左右両側から、外部デッキに出ることができます。

カジュアルルームは自分だけのスペース

この船の客室カテゴリーは、ほぼ2等寝台「カジュアルルーム」で占められます。案内所の奥、つまり船首部分には4名1室のカジュアルルームが20室あります。

ベッドはすべて1段ベッド。立ち上がって着替えもできます。カーテンを閉じれば、そこは自分だけの空間に。ベッド内には毛布と枕、そして手荷物棚があります。また、ベッドにはコンセントも完備されているので、スマートフォンなどの充電も問題なし。また、カジュアルルーム利用者のための洗面所もあります。それら以外に、バリアフリーの洗面所も設置されています。

実は、エントランスホールをはさんで、船尾側にもカジュアルルームが6室あります。ただし、こちらはトラックドライバー専用の区画。一般乗客の立ち入りはできません。定員10名が1室、同12名が5室と最大70名のキャパシティです。カジュアルルームの全定員は150名ですが、そのうち半分近くをトラックドライバーが占めることになります。

また、この区画には一般乗客エリアにはない施設も。ドライバー専用浴場、そして娯楽室が。

長距離ドライバーにとって、船内は休息の場。このフェリーはゆっくり羽を伸ばせる貴重な空間なんですね。

ホールと展望ラウンジはくつろぎの空間

ホール入口のユニークな「さんふらわあ文庫」(写真提供:船が好きなんです.com)

それでは階段でAデッキに上がってみましょう。
進行方向左側にホールがあります。入ったところに、「さんふらわあ文庫」。コミックが中心です。長い航海時間、退屈を紛らわすにはもってこい。

この船にはレストランはありません。その代わり、ホール内には自動販売機がズラリ。軽食の冷凍食品は、備え付けの電子レンジで温めて食べることができます。お茶やコーヒーなどのドリンクも種類が豊富。アイスクリームもあります。ビールなどアルコール類もそろっています。ただし、酒類の自動販売機は深夜23時から翌朝5時までは販売停止となります。
※自動販売機コーナーのメニューはこちら

ホールは24時間オープン。食事や語らい、さんふらわあ文庫のコミックの読書など、さまざまなくつろぎに利用できます。

ホールからさらに船首方向に進むと、展望ラウンジがあります。前方には海が広がります。
窓の外には太平洋。たまにはボーっと海を眺めるだけの時間も、いいかもしれません。

そして、ここはちょうど操舵室(ブリッジ)の真下にあたる位置。ちょっとした船長気分を味わってみては。夜間は航海の妨げになるため、カーテンが閉められます。朝8時から下船時までの利用が可能です。

2室限定!デラックスルーム

船首部分にはデラックスルームがあります。この船には2室しかないレアで、ワンランク上の客室です。定員2名なので夫婦やカップル、気の合う友達同士での利用にもってこいです。

もちろん窓ありのオーシャンビュー。椅子とテーブル、室内用のスリッパが用意されています。BS放送が楽しめるテレビやDVDデッキも備わっています。冷蔵庫、ポット、茶器セットもあるので、いつでも飲み物を楽しめます。クローゼットもあり浴衣も用意されているので、寝間着の持参は不要です。

デラックスルームにはユニットバスが付いています。ユニットバスには、リンスインシャンプー・ボディソープの用意もあります。もちろんトイレも完備。バスタオル、フェイスタオル、バスマット、歯ブラシやせっけんなどのアメニティもそろっています。

深夜便の大洗~苫小牧は約18時間の船旅。ちょっとゴージャスなデラックスルームは、ひと味違う太平洋クルーズを演出するにはもってこいの客室ですね。

サウナも付いている展望浴場

Aデッキの船尾に行ってみましょう。

進行方向左側には展望浴場があります。日中航行時間の長い深夜便、太平洋を眺めながらの入浴が楽しめます。また、サウナもあるので身も心もほっかほっかに。こちらは無料で利用できます。乗船時から深夜2時、朝8時から下船時までなら、いつでも利用できるのがうれしいですね。

展望浴場の真向かいにはゲームコーナー。ちょっとした時間つぶしに最適です。この通路の奥は、トップデッキに通じており、360度の眺望が満喫できます。天候の良い、暖かい日にここから太平洋を眺めるひと時は、この船に乗ってよかった!と心から思えるはずです。

第1船の名を受け継ぐ価値あるフェリー

大槌湾沖を進む「さんふらわあ だいせつ」

深夜に出港し、日中はまるまる航海し、目的地には日没後の到着。貨物輸送(トラック)をメインに考えたダイヤの深夜便ですが、観光においても三陸沿岸を眺めつつのデイクルーズを楽しめます。

今年3月23日に三陸鉄道リアス線(盛~久慈)が開通し、宮古~釜石がつながったことで、南北に広がる三陸沿岸の観光地へのアクセスが格段によくなりました。そんな三陸海岸を海から眺める経験はなかなか貴重。船上から見るリアス式海岸や釜石大観音はまた格別です。

陸地での日常生活ではなかなか味わえない時間の流れや体験を、たっぷり満喫できます。そういう意味では、さんふらわあ船隊の中でも船旅の醍醐味を最も深く味わえるフェリーかもしれません。

最後に「さんふらわあ しれとこ」という船名について。「しれとこ」は商船三井フェリー(現・商船三井さんふらわあ)にとっては、重みのある船名です。というのも、商船三井フェリーの前身・日本沿海フェリーの第1船の名は「しれとこ丸」。現在活躍している「さんふらわあ しれとこ」も他社からの「転校生」ながら、その伝統ある名を受け継いだ、価値あるフェリーなのです

写真協力:船が好きなんです.com

デイクルーズも楽しめる
「さんふらわあ しれとこ」「さんふらわあ だいせつ」で
優雅な船旅を。
首都圏~北海道航路「さんふらわあ」はこちら
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