第2回 まち歩きの達人、「さんふらわあ さっぽろ」に乗る:旅の達人、船に乗るアイキャッチ

もくじ

旅行が趣味、旅行が仕事、という方でも、船に乗って目的地に向かう機会はなかなかないそうです。 そこでそんな旅の達人たちを「さんふらわあ」にお誘いしてカジュアルクルーズの魅力に触れていただくことにしました。 前回に続いての旅人は趣味のまち歩きや街道歩きが高じて「散歩カフェ」を開いてしまった川島美歩さん。 大洗のまち歩きを楽しんだあとは、いよいよ「さんふらわあ さっぽろ」に乗船です。

1日まるまる目的地に向かうだけのフリータイム。これって最高に贅沢な旅なのでは……

1日まるまる目的地に向かうだけのフリータイム。これって最高に贅沢な旅なのでは……1
停泊中の「さんふらわあ さっぽろ」

前回ご紹介したように大洗の町を小1日散策して、フェリーターミナルに向かったのは午後5時過ぎ。出港は午後7時45分でまだ時間がありますが、受付はすでに始まっていて乗船は午後5時半頃からできるというので早めに行ってみました。

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まずはターミナルの窓口で手続き
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まるでホテル!のカードキーと食事券

窓口で手続きすると、渡されたのはカードキーとレストランの食事券。カードキーですよ、カードキー。ホテルじゃないですか!

ところで唐突ですが、旅の楽しみって、「行き」の行程に凝縮されていると感じませんか? 目的地に着いて観光したり美味しいものを食べたりしている時間はもちろん楽しいのですが、その目的地に向かって移動している時のワクワク感は、また格別なものだと思うのです。楽しみなことが、まだ一つも終わっていない、幸せな時間。なんなら旅行の間もうずっと「行き」でもいいくらい。

そんな私にとって最高に贅沢な旅に見えたのが、長距離フェリーの旅です。なにしろ行くだけで丸一日。しかも、乗り継ぎ時間や駅の人ごみや荷物を持っての移動やなんかも気にせずに、ひたすら乗っているだけ!

さらに嬉しいのは、その丸一日、何もしなくていいことです。旅行中でも地上にいる時間って何かと忙しいんですよね。夜までもうちょっと観光できるかな、とか。朝早く出ればもっとあちこち回れるかな、とか。

それが何しろ海の上ですから、大洗から苫小牧までの約18時間(乗船から下船までなら20時間近くあります)ここにいるしかありません。きっとすることがなくて退屈だから、普段なかなか読まないテーマの本や、あまり食べない種類のお菓子や、めったにやらないゲームなんかを持ち込んで、思いっきり「他に何もしなくていい時間」を過ごしたい!

大好きな「行き」の行程を楽しみながら、特にしなければならないこともない時間を過ごす。
なんて贅沢な旅なんでしょう。

午後6時、いよいよ乗船開始

ターミナル内を探検し、停泊中の「さんふらわあ」をあちこちから眺めているうちに、午後6時過ぎ。いよいよ乗船開始です。電車に乗るのとはまったく違う、乗船口の長い通路。一歩進むごとに心が躍ります。

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海の上のめくるめく非日常が、この向こうに……
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振り返るとターミナルに「いってらっしゃい」の文字が

船員さんに迎えられて、まずは部屋に荷物を下ろします。今回乗ったのは、7階の「プレミアム」というタイプの船室。ホテルのツインルームのようなタイプの個室で、バス・トイレやバルコニーも付いています。

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ホテルのような「プレミアム」の船室

「さんふらわあ」にはこの他に、これよりさらに広い「スイート」や、シャワー・トイレ付の「スーペリア」、昔ながらのフェリーのいわゆる2等船室が進化したタイプの「ツーリスト」など、9タイプもの船室があります。

実は今回の乗船のお話をいただく前、偶然ですが昨年の夏に、旅行で「さんふらわあ」に乗っているのです。その時に乗ったのは「コンフォート」という、カプセルホテルのような二段ベッドの船室でした。「ツーリスト」や「コンフォート」の、いかにも「船室」といった雰囲気の非日常感もたまりませんが、やっぱり個室にだって泊まってみたい!

波のリズムに合わせて静かに揺れるホテル。窓の外は視界いっぱいの海。オーシャンビューどころじゃないんです。「海」そのものなんです。それだけでも素敵なのに、室内そのものもまるでリゾートホテルのように快適です。

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完全にホテルの部屋並みの設備が整っています

快適な部屋ですが、これが旅先のホテルだったら、こんなに長い時間を過ごすということはそうそうありません。それが今回は、船を降りる時刻までの約20時間弱、ここにいるしかないんですよ。あぁもう参っちゃうな、無限に長い(ような気がする)時間、何をして過ごしましょう(と、ニヤニヤ)。

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海の上なのに、こんなに便利でいいのか!?と思ったトイレとバスルーム

 
バスルームはもちろん広くはありませんが、ホテル並みのもので清潔感もあります。海の上なのにこんなに不自由のないトイレ&バスルームでいいのかな! でも嬉しい!

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アメニティグッズも充実しています

 
 
アメニティグッズも揃っています。シャンプーとコンディショナーに、シャワージェルとボディタオルまでついて。

「さんふらわあ」オリジナルタオル。そして濡れても持ち帰れるチャック付の袋がまた、心憎いばかりの気遣い。(アメニティグッズ付きは個室のみで、「コンフォート」「ツーリスト」にはないそうですが、必要な物は売店でも販売しています)

海を眺めながら入れる展望浴場がありますので、そちらに行こうと思っていましたが、部屋のお風呂にもしっかり入りたくなりました。

そして、窓を開けるとプライベート・バルコニー!

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お楽しみの専用バルコニー

実はバルコニーがあると聞いて、夜のお楽しみを入手してきていたんです!

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大洗で調達してきた、今夜のお楽しみ

大洗の地酒「月の井」と、茨城県の地ビール「常陸野ネストビール」。そして大洗地元海産物屋さんのおつまみ(このために用意してくれました?という、1袋100円ちょっとのお手頃サイズ!)。すべて大洗のショッピングモール内にある「大洗まいわい市場」で入手。

今夜は海を眺めながら、バルコニーで一杯やるんです。ああ楽しみ。

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バルコニーで海を眺めながら一杯……の予定
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冷蔵庫もついています

 
 
室内には冷蔵庫もありますので、来るべきお楽しみの時間までお酒は冷やしておくことにしましょう。ああ、楽しみ!

夕食は、海を眺めながらのバイキング

夜のお楽しみをしまって安心したところで、そろそろお腹もすいてきました。夕食は、乗船時から出港後の夜8時半まで、好きな時間に入れるバイキング形式のレストラン。

※2018年10月1日からはセットメニューになります。
https://www.sunflower.co.jp/information/news/20180731a.html

夕食は、海を眺めながらのバイキング1
夕食はバイキング形式

自動販売機のスナックやカップ麺の「フェリーっぽさ」も捨てがたいですが、まるでリゾートホテル気分のバイキングも美味しい! と、レストランの食事を楽しみながらも、固定されたテーブルとチェーンのついた椅子に「ああ海の上なんだなあ」としみじみ。

夕食は、海を眺めながらのバイキング2
固定されたテーブルとチェーンのついた椅子が、船の上っぽい

正面に海を眺めながら食事のできる窓辺のカウンター席もあります。一人旅にもぴったりですが、席数が限られていますので、空いていたらラッキーです。

夕食は、海を眺めながらのバイキング3
海を正面に見ながら食事のできる席もあります

乗船してから間もない時間に行ったので、あまり混んでいませんでしたが、時間が経つにつれ席が埋まってきました。のんびりバイキングを楽しむには、乗船後すぐくらいの時間がお勧めです。

いよいよ出港。離れていく大洗の港の光を楽しみます

乗船後すぐに食事を済ませると、さらに良いことがあります。出港の時間をデッキで楽しめるのです。出港は午後7時45分。遅めだと食べている間に出てしまうし(それはそれで楽しいかも)、食事は8時半までなので船が出てからだと慌ただしくなってしまいます。

というわけで乗船から約1時間半。出港の時間はデッキに出て、離れていく地上の眺めを楽しむことにしましょう。

あ、あっちには「さんふらわあ」の深夜便が停泊しています。次第に遠くなっていく大洗の町の灯を眺めつつ、さあこれから苫小牧までの17時間、何をしようかなー! とワクワク感の高まる時間。

いよいよ出港。離れていく大洗の港の光を楽しみます1
離れていく港。向こうには深夜に出る「さんふらわあ」が

オシャレで楽しい船内。見て歩くだけでも時間が経ってしまいます……

出港後はしばらくの間、船内を歩いてみました。子供の頃に初めて乗った新幹線だとか、レストランのある寝台列車だとか、乗物の中を探検するのってなんだかとても楽しかった思い出があります。

とはいっても電車の中では、ずっと自由に歩きまわっていたり気軽に好きな席に移動したりということもできません。ぷらぷらと探検を楽しめるのは、船ならでは。

オシャレで楽しい船内。見て歩くだけでも時間が経ってしまいます……1
何しろどこそこオシャレで快適

給湯室や売店や自動販売機。キッズスペース、喫煙所、海風の心地よいデッキ、そしてペットをお連れの方にはドッグランもあり、それぞれに思い思いの時間が過ごせるようになっています。

ロビーには、ソファーや椅子とテーブルがいっぱい。「コンフォート」に泊まった昨年は、オセロやクロスワードパズルの雑誌を持ち込んで、同行者とここでやっていました。これぞ「ザ・ヒマつぶし」です。あぁもうヒマでヒマでしょうがないからゲームでもやるかー。というのを想像していたのですが、同じように船内を探検したり飲んだり食べたりしていたら意外とあっと言う間に時間が経ってしまい、クロスワードパズルは少ししかできませんでした。

その時に学習したので、今回は本を3冊ぐらいしか持ってきていません!

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ロビースペースには椅子やテーブルがたくさん並んでいます

出航して時間が経つにつれ、このロビースペースにも人が増えてきました。一人旅の乗船客も多く、二輪でツーリングといった雰囲気の、船に乗ってから知り合ったらしいグループが旅の情報交換をしている光景もちらほら。

ロビーの脇には、船の情報を知らせる大きなモニター。フェリーが今だいたいどの辺りにいるのかが分かります。

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船の現在地が分かります

そして、その画面に映し出される苫小牧の日没・日の出時刻。夏至に近かったこの乗船日、北海道の日の出の時刻はなんと3:55。東京では、一番日の出の早い時期でも4時より前になることはありません。日没だって、遅くて午後7:00。

東京と北海道じゃ、お日様の出ている時間が小1時間も違うんだなあ、と。こんな数字にも、旅情をくすぐられます。

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北海道の日出の時刻は、なんと4時前!

船内を歩きまわって、さて、それではお楽しみの夜。そう、大洗で調達してきたお酒とおつまみを片手に、海の上の夜を楽しむ時間です!

……ですが! 一日ずっと雨だったこの日。夜になったらますます風が冷たくて……寒い! 天気が回復していないので、海は真っ暗で何も見えないし。あまりの寒さに、バルコニーで夜の海を眺めながらの一杯は断念。あー、船の夜のお楽しみがー! 残念ですが、それはもう少し暑い季節になってから。夏のお楽しみにしましょう。

長い夜を楽しむグッズは、船内でだいたい調達可能

まあ、いいや。船室内で一杯やることに――と、ここで問題発覚! ビンのビールを買ってきたけれど、うかつにも栓抜きを持ってきていませんでした!

ご心配なく。売店で栓抜きを貸してもらえます。そもそもビールもお酒もおつまみも売っています。それだけでなく、船の上でちょっと足りなくなった欲しいモノが、店内の売店の販売や貸出でだいたい間に合います。

何もなくて退屈なはずの船の上で、けれど必要な物は揃う快適さ。もう何しろ、心配なことはなんにも考えずにとりあえず乗っちゃってください。という安心感があります。

長い夜を楽しむグッズは、船内でだいたい調達可能1
品ぞろえ充実の売店。貸出含め、とっさに必要になったものもたいてい揃います

お風呂・洗面用具などの実用品も調達可能。長旅の友、各種ゲームも買えますので、退屈してしまった時にはこちらでどうぞ。船旅ならでは、酔い止め対策グッズも売っています。ちなみにこの日は昼間から風が強く、乗船からしばらくの間はちょっと船が揺れました。大きな船なので船酔いするほどではありませんでしたが、万一の時は売店へ。

長い夜を楽しむグッズは、船内でだいたい調達可能2
退屈した時にはゲームだって買えます!
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乗船記念に「さんふらわあ」オリジナルグッズも欲しくなります
長い夜を楽しむグッズは、船内でだいたい調達可能4
北海道のお酒もあります

 
 
売店は夜10時まで。お酒の買える自販機は夜11時までなので、旅の一夜を夜通し楽しみたい方はお早めにどうぞ。

個室にはテレビも完備されていて(コンフォートもイヤホンでテレビが楽しめます)、大洗の地酒を楽しみながらぼんやりテレビでも眺めているうちに、だいぶ夜も更けてきました。

船は三陸海岸沖を北上。陸から離れるところではちょっと電波が悪くなり映像が途切れたりしますが、テレビも携帯電話の電波もさほど長い時間不自由を強いられることはありません。

持ってきた本を読んだり、お酒を飲んだり。「やらなくてはならないことはない」はずの船上で、けれどやりたいことはまだまだ尽きませんが、でもやっぱり眠くなってきました……。

朝も慌てなくて良い、お昼までの船旅。二度寝と朝食をのんびり楽しみます

そして朝。旅の朝は何かと慌ただしいこともありますが、今日はまだまだ船内で過ごす時間が残っているので、急ぐことはありません。のんびり支度をしながら夜に続きテレビをつけてみれば、昨日は関東のニュースを流していたはずの画面で今は北海道の天気予報やローカルCMが流れているふしぎ。

朝食は、夜と同じくバイキング形式。パンの種類が多くどれも美味しそうで、心がときめきます。

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朝もバイキング。パンの種類がいっぱいで嬉しい

朝食を食べ終えても、フェリーはまだまだ青森沖。もう少し「何もしなくていいのんびり」を楽しむ時間が残されています。ああ幸せ。

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朝ごはんを済ませても、まだまだ船は青森沖

明るい時間の、広々とした海が眺められる展望浴場を満喫し、下船までの残り数時間は本でも読みながらまったり過ごすことにします。

と、ぼんやり時間を贅沢に楽しんでいるうちに、お昼。サンドイッチかおにぎりの軽食(ドリンク付き)をレストランで販売しているので、サンドイッチとスープを注文しました。

そして、これ! これがやりたかったんですよ! バルコニーで海を眺めながらのお食事。

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バルコニーで海を眺めながらのランチ

夜は断念したものの、昼ごはんでも大満足。

到着地の北海道は雨の予報でしたが、ここでは薄暗い曇り空ながらも雨はやんでいて、昨夜は濡れていたチェアーも乾いていて。遠くを行く船や、海面上を行きかう海鳥を眺めながら、サンドイッチを頬張りました。

朝も慌てなくて良い、お昼までの船旅。二度寝と朝食をのんびり楽しみます4

船から降りたくない! もう3往復ぐらいしたい!

ああホントに幸せ。このままずっと乗っていたい。明日のお昼ごはんもここでこうして食べたい……。

と思うものの、無情にも刻一刻と下船時間は迫ってきます。船に乗っている約18時間という無限の(ように思えた)時間、あんなこともしたい、こんなこともしたいと思っていたことの中のほんのちょっとしかできないうちに、船は苫小牧に着こうとしています。

一晩じゃ物足りない。3往復ぐらいしたい。まだ持ってきた本も読み終わっていないし、売店で美味しそうな物も売っていたし、バルコニーから海も眺め足りないし……。

目的地に着いたにも関わらず、船から降りたくない気持ちでいっぱいの苫小牧到着でした。

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なんの時間も気にすることなく、ただ船に揺られて運ばれるだけの時間。それは何もしなくていい、最高に自由な時間でした。

慌ただしい日常からちょっと離れて旅に出ようと思ったら。普段とまったく違う時間を過ごしたいなと思ったら。海の上で、こんな自由時間を過ごしてみてはいかがでしょうか!

大洗-苫小牧を結ぶ「さんふらわあ」。
出発前、到着後にぜひ
大洗の町を楽しんでください。
首都圏~北海道航路「さんふらわあ」はこちら
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