維新の記憶が息づくまち、鹿児島へアイキャッチ

もくじ

今年は明治維新150周年という大きな節目の年。幕末~維新にかけて重要な役割を果たした人物や場所が、改めて注目を集めています。特に熱い視線を浴びているのがNHKの大河ドラマ『西郷どん』の舞台でもある鹿児島です。主な見どころは鹿児島市内に集中しており、移動のストレスが少ないのも魅力的。そんな旬の観光地である鹿児島に向かいました。
※最新の営業状況については、各店舗・施設HP等にてご確認ください。

薩摩藩ゆかりの名所を巡る

薩摩藩ゆかりの名所を巡る1
仙巌園の御殿。島津家歴代が居住した建物

最初に足を運んだのは、薩摩藩主・島津家の別邸として築かれた「仙巌園」。幕末以降は国内外の要人が訪れ、迎賓館的な役割を果たしたといいます。この施設がユニークなのは、由緒ある大名の別邸というだけでなく、世界遺産にも関係しているということ。その理由を紐解くべく、園内のガイドツアー「世界遺産コース」に参加してみました。

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ガイドツアー「世界遺産コース」の様子

ツアー一行が向かったのは、仙巌園の入口から程近い場所。目の前には切り出した石がいくつも並び、何やら古代遺跡のような…。「ここが反射炉跡です。旧集成館の中核となる施設でした」とガイドの中村さん。旧集成館とは、日本初の洋式工場群のこと。時は幕末、他に先駆けて近代化に取り組んだ28代当主・島津斉彬が、仙巌園の一角に整備したそう。反射炉跡のほか、かつて機械工場として使われた建物など一帯が、2015年に「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録されているのです。

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尚古集成館本館。建物は国の重要文化財に指定

かつての機械工場は、集成館事業を語り継ぐ博物館「尚古集成館」として再利用されています。ツアー一行は、その中へ。館内には、日本が近代化へと進む黎明期の貴重な展示物が所狭しと並んでいます。

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シンボル展示は薩摩切子のランプと反射炉の模型
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薩英戦争で使われた両軍の砲弾。球体が薩摩藩

九州南端に位置し、琉球を支配下に置いていた薩摩藩は、当時アジア進出を目論む諸外国の圧力をひしひし感じていたといいます。そのため、軍事力の強化は喫緊の課題でした。「集成館事業の中心は、製鉄や造船など軍事に関わること。でも、それだけではありません。薩摩藩は紡績や薩摩切子の制作など産業の育成にも力を注ぎました。近代化で人々が豊かになること。それが島津斉彬の願いだったのです」。そんな中村さんの解説が印象的でした。

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仙巌園の庭園。大河ドラマ「西郷どん」の名シーンも撮影

ツアーを終えて向かったのが、島津家歴代当主が居住した「御殿」のあるエリア。その庭園がスゴイのです。築山に見立てたのが、目の前にでん!とそびえる桜島。池の部分は錦江湾。国内に大名庭園は数あるものの、スケールの大きさが半端ない…。大河ドラマ「西郷どん」でも、この庭園でロケが行われました。放映されると大変な反響があったというのも納得です。

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園内には薩摩切子のショップやレストランもある

仙巌園(せんがんえん)

住所
鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1
営業時間
8:30~17:30
定休日
なし
料金
入場料 大人1000円、小中学生500円(尚古集成館と共通)
薩摩藩ゆかりの名所を巡る8
鶴丸城跡ではシンボルの御楼門を復元工事中
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城壁には生々しい弾痕が残っている

島津家代々の居城は鶴丸城でした。現在、鶴丸城跡地には「鹿児島県歴史資料センター黎明館」や「鹿児島県立図書館」が建っています。歩いてみると、当時の出来事を偲ばせるものが今もなお残っていました。例えば、城壁に開いた無数の丸い穴。それは、西南戦争の時に政府軍が放った銃弾の跡なのでした。

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西郷隆盛像。作者は渋谷の忠犬ハチ公と同じ安藤照

鶴丸城跡周辺には、人気の観光スポットも。「鹿児島に行ったら写真を撮りたい!」という声多数なのが、西郷隆盛像。東京の上野公園では浴衣姿で犬を連れたカジュアルな西郷さんに会えますが、ここでは軍服を着た凛々しい姿を見ることができます。

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城山展望台から望む桜島は水蒸気を吹き上げていた

西郷隆盛像の背後にある城山は、西南戦争最後の激戦地。高さ107mの小高い山ながら、展望台から市内屈指の桜島ビューが楽しめます。日中の眺めも素晴らしいのですが、夕景がまた美しい。山肌を少しずつオレンジ色に染めゆく桜島は、見飽きることがありません。

いま訪れたい注目のスポットへ

いま訪れたい注目のスポットへ1
南洲橋のたもとにある鹿児島市維新ふるさと館

幕末から明治にかけて多くの志士を輩出した鹿児島には、維新をテーマにした施設も存在します。それが「鹿児島市 維新ふるさと館」。明治維新150周年を機に、総工費1億円以上をかけてリニューアルしました。

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エントランスの先にはモニターを埋め込んだアーチが
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西郷さんとの押し相撲で記録に挑戦

この施設の狙いは、歴史をわかりやすく楽しく伝えること。今回のリニューアルでも、薩摩藩独自の教育方法「郷中教育」を擬似体験できるゾーンが新設されました。そこでは、最新のデジタルテクノロジーも導入されています。例えば、床に映し出された映像で、かつての教育方法を解説。その映像は人の動きに反応するため、かるたや魚とりも楽しめてしまう…といった具合。郷中教育では鍛錬の一環として相撲も取り入れていましたが、まわしをつけた西郷さんと押し相撲を体験できるコーナーも。子どもが楽しめるだけでなく、大人は童心に返ったようなひとときを過ごせます。

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動く偉人ロボットと映像でドラマを上演

建物の地下には円形劇場がありました。この「維新体感ホール」では、維新にまつわる2本のドラマが順次上演されています。そのうちのひとつ「維新への道」を鑑賞してみると…。スクリーンに映し出される映像や音響の迫力もさることながら、西郷隆盛をはじめとする偉人たちのロボットが語りだす凝った演出にびっくり。ストーリーもわかりやすく、約25分間の上演時間があっという間に過ぎていきます。「ここでドラマを見るだけで入館料のもとが取れてしまう」。そんな利用者の声もあるのだとか。

鹿児島市 維新ふるさと館

住所
鹿児島県鹿児島市加治屋町23-1
営業時間
9:00~17:00(最終入館16:30)
定休日
なし
料金
入館料 大人300円、小中学生150円
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左から見ると西郷隆盛、右から見ると大久保利通の肖像画が現れる

「鹿児島市 維新ふるさと館」があるのは、市街地を流れる甲突川沿い。建物を出て、川の流れに合わせて歩いていくと、6本の黒い柱が目に入りました。中央には何やら人の顔らしきものが。実はこれ、トリックアート。今年1月にオープンした歴史ロード「維新ドラマの道」のシンボルゲートです。

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スマホがあればARを体験できる

「維新ドラマの道」には、7基の大型モニュメントが設置されています。「島津斉彬と集成館事業」「大山巌と薩英戦争」など、それぞれテーマに基づいた解説があるのですが、スマホがあればさらなる楽しみ方も。無料アプリを使ってスマホでモニュメントを映すと、絵が動き出す歴史ドラマがスタート! AR技術を使った最新のシステムを体験できるのです。

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鹿児島市立病院の跡地にオープン

歴史ロード「維新ドラマの道」の先にも新しい施設がありました。「西郷どん 大河ドラマ館」です。ドラマの開始に合わせて今年、2018年1月13日にオープン、来年1月14日までの期間限定で営業しています。

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等身大パネルと一緒に記念撮影

入場ゲートをくぐると、ドラマ出演者や製作者がパネルでお出迎え。「西郷どんシアター」ではロケのメイキング映像など、撮影の舞台裏を覗くことができます。館内には西郷家と大久保家をイメージしたスタジオセットも再現されており、ドラマの中に入り込んだ気分を味わえる仕掛けも。これからドラマの進行に合わせて展示がどんどん充実していく予定。西郷どんファン必見です。

西郷どん 大河ドラマ館

住所
鹿児島県鹿児島市加治屋町20-1
営業時間
9:00~17:00(最終入館16:30)
定休日
なし
料金
入館料 大人600円、小中学生300円

鹿児島の伝統的名物を味わう

鹿児島の伝統的名物を味わう1
1966年創業の郷土料理店
鹿児島の伝統的名物を味わう2
料理の説明をしてくれた女将の黒川牧子さん

今回は維新にまつわる歴史にとっぷりと浸る旅。ならば、料理も郷土に伝わる逸品を味わいたい…。そこで、昔ながらのさつま料理にこだわる「正調さつま料理 熊襲亭」に出かけました。

鹿児島の郷土料理には、どのようなものがあるのでしょうか。「最近は黒豚のしゃぶしゃぶを思い浮かべる人が多いようですが、実はいろいろな料理があるんですよ」と女将の黒川牧子さん。そこで店一番のおすすめという「貴コース」の中から、主な料理を教えていただきました。

鹿児島の伝統的名物を味わう3
手前から時計回りにとんこつ、きびなごの刺身、地鶏のたたき

まずは「とんこつ」から。ラーメンのスープに使う、あのトンコツ?「豚の骨付きあばら肉を、味噌や焼酎で柔らかく煮たものです。もともとは薩摩武士が野戦のときに作った豪快な料理なんですよ」。次は「きびなごの刺身」。近海で獲れる小さな魚で、鮮度抜群。「酢味噌でいただくのが鹿児島の流儀。春から初夏が旬ですね」。それから、「地鶏のたたき」。「新鮮なさつま地鶏を使います。皮を炙ってあるので香ばしいですよ」。

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酒ずし。竹の子や鯛など海と山の幸が9種類入る
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地酒という名の伝統酒を使い、大きな桶で仕込む

珍しい料理もありました。それが「酒ずし」。郷土寿司のひとつですが、お酢は使わないそう。「お米一升に対して地酒一升を使い、一昼夜発酵させた押し寿司です。地酒は鹿児島独特のもので、みりんのような甘さがあります。これは江戸時代に生まれた武家料理。女性がせめて花見のときくらい酒を味わいたくて考案したという説もあるんです」。作るのに手間と時間がかかるため、食べられるお店は鹿児島市内でも数えるほど。「郷土の味を後世に伝えていくのも自分たちの使命だと考えています」と黒川さんはいいます。

熊襲亭(くまそてい)

住所
鹿児島県鹿児島市東千石町6-10
営業時間
11:30~L.O 14:00、17:00~L.O 21:30(日曜 ~L.O 21:00)
定休日
年末年始
料金
さつま料理コース(昼)1,620円~、(夜)3,240円~
鹿児島の伝統的名物を味わう6
天文館むじゃきは大きな白熊のディスプレイが目印

スイーツは別腹ということで、鹿児島名物をひとつご紹介しましょう。訪れたのは鹿児島市の繁華街にある「天文館むじゃき」。狙うのは「しろくま」なる食べものです。

鹿児島の伝統的名物を味わう7
定番の白熊。ストレベリーやミルク金時などアレンジ系もある
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テイクアウト専用のハンディ白熊も販売

「しろくま」とは鹿児島発祥の氷菓子のこと。「白くま」「白熊」など表記はまちまちですが、発売して70年以上経つこの店では「白熊」が商品名。「考案した創業者が名付けたんです。白熊の表情に似ていたので」と社長室長の前田華代さん。ポイントは、かき氷にフルーツがたっぷりトッピングされていること。自家製ミルクは一子相伝、氷は手作業によるカンナ削りなど老舗ならではのこだわりもあるといいます。表記同様、作り方は店ごとに違うのも特徴的。食べ歩きで比較する人も多いのだとか。

天文館むじゃき

住所
鹿児島県鹿児島市千日町5-8
営業時間
11:00~22:00(日祝、7・8月は10:00~)
定休日
白熊レギュラー720円、ベビー510円

今回の旅で感じたのは、鹿児島では維新の記憶が大切に受け継がれているということ。歴史を体感できる施設も充実しており、楽しみながら過去に触れることができます。郷土に伝わる料理もおいしい。維新150周年の今年、みなさんも鹿児島に出かけてみませんか。

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