もくじ
2016年4月、熊本を中心に大きな被害をもたらす地震が発生しました。それから4年半が経過した2020年10月、編集部スタッフは大阪港から別府港へ「さんふらわあ」で渡り、熊本の“今”を感じる旅に出かけました。 阿蘇~熊本市内の観光スポットやおすすめ施設を巡る、熊本周遊コースの参考にもしていただけます!
別府港から阿蘇エリアまで車で行くルートとしては、大分市方面から竹田市久住を通るルート、別府インターチェンジから九重インターチェンジまで大分自動車道を通るルート、由布院を経由してやまなみハイウェイを通るルートの3つが挙げられます。いずれも、2時間~2時間半ほどのドライブです。
「さんふらわあ」で早朝に別府港へ到着したら、一路阿蘇へ。火山活動の状況次第ですが阿蘇山火口の見学、草千里や米塚などの阿蘇観光の定番は外せないでしょう。その後、『阿蘇カドリー・ドミニオン』に向かいました。
テレビ番組で人気の「プリンちゃん」や、芸達者な動物たちに会える
チンパンジーのプリンちゃんなど、テレビ番組で人気者になった動物たちがいることでも知られる動物テーマパークの『阿蘇カドリー・ドミニオン』。熊本地震発生直後は、水道・電気・ガスが止まったそうです。
「水は近所の湧き水を汲んでトラックで運びました。敷地内の一部では建物の損傷や地面の亀裂などがありましたが、幸い、従業員も動物たちも無事でした」とお話しくださったのは、広報リーダーの浦口さん。
「危険なエリアは立入禁止にして、安全が確保できるところだけを、地震発生から約2週間後の5月1日に再開。被災された皆さまに少しでも元気や笑顔を届けられたら、という想いで、動物とふれあえる出張サービスも積極的に行いました」
震災から1年後にはリニューアルオープンし、国内はもちろん、海外からも多くの方が来園するまでに復活していました。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、2020年3月から2か月間休園。現在は、十分な感染拡大防止対策を取って営業を再開しています。
『阿蘇カドリー・ドミニオン』には、約80種類・600頭の動物たちがいます。中でも熊は150頭ほどおり、子熊とふれあえる機会もある国内でも珍しい施設。また、人気者のプリンちゃんが出演するショーは必見。その賢くもユーモラスな動きには、笑顔がこぼれます。
動物たちに癒される1日をたっぷり楽しんだら、黒川温泉に泊まってのんびり過ごしましょう。
阿蘇カドリー・ドミニオン
- 住所
- 阿蘇市黒川2163
- 電話
- 0967-34-2020
- 営業時間
- 10:00~16:30(冬期:2020年10月12日~2021年3月14日)
9:30~17:00(夏期:2021年3月15日~)
- 休み
- 12月~2月の水曜日(冬休み、祝日を除く)
黒川温泉唯一の時間によって色が変わる硫黄温泉!自慢の料理に舌鼓
多数の温泉が湧く阿蘇エリアですが、黒川温泉郷は“入湯手形”発祥の温泉地として全国的にも有名です。落ちついた雰囲気の温泉情緒あふれる町並み、多彩な露天風呂を楽しめます。
『和風旅館 美里』は、黒川温泉街の中心地に立地し、黒川温泉の総合案内所である「風の舎(かぜのや)」からもすぐ。露天風呂“美郷の湯”は、黒川温泉唯一の時間によって色が変わる硫黄温泉です。
そのお湯は、透明・乳白色・水色・エメラルドグリーンと、その時その時によって色が変化します。豊富な温泉成分に秘密があり、自然現象で色が変わるため、いつどんな色になるかは入ってからのお楽しみ。宿泊すれば、お湯の色の変化を体感できるチャンスが増えます。露天ならではの、四季折々の情景が楽しめるのも魅力です。
「熊本地震によって、道路の土砂崩れが起きましたが、黒川温泉自体の被害は少なかったんです。近所の1軒が半壊でしたが、ほとんどの旅館がすぐに通常営業できました。当館は、女性用の露天風呂が真っ二つに割れて利用できない状態に。男性用の露天風呂は無事だったので、露天風呂の入浴時間を区切って男女交代制で、ゴールデンウイークに営業を再開しました」と、旅館のご主人・北里さん。
そして、美里のもう一つの魅力は料理。すべて手づくりで提供され、名物の馬刺しや県名産の味彩牛など熊本・阿蘇の郷土料理、季節に応じた旬のおいしさを味わえる料理が楽しめます。
ご夫婦やカップル、女性・男性同士の二人組のほか、一人旅の宿泊客も多く、入湯手形での立ち寄り入浴も人気の『和風旅館 美里』。宿泊の方は「さんふらわあ」の半券を提示すると特典がもらえます。
和風旅館 美里
- 住所
- 阿蘇郡南小国町満願寺黒川6690
- 電話
- 0967-44-0331
- チェックイン
- 15:00(最終チェックイン19:00)
- チェックアウト
- 10:00
- 湯めぐりの受付
- 8:30~21:00
黒川温泉でゆったり過ごした翌日、熊本市内へ。その途中、熊本地震で楼門や拝殿などが倒壊してしまった『阿蘇神社』に寄り道してみましょう。
現在は復旧工事中。原寸大の楼門が描かれた壁の向こうで作業が進められており、2023年末に完工予定です。本来の拝殿横に仮拝殿と参拝所が設けられている現在でも多くの参拝者が訪れており、どんな時でも多くの方に愛されている神社であることがよくわかります。
地震の怖さを物語る、阿蘇大橋の震災遺構
地震によって、道路や鉄道も大きな損傷を被っていましたが、4年以上を経て復旧が終わりました。
大分市から熊本市まで、阿蘇を経由して九州の中ほどを横断するように通る国道57号線。南阿蘇村に架かっていた阿蘇大橋が崩落したことで通行止めとなり、迂回しなければならない状態が続いていましたが、2020年10月3日に復旧・開通しました。崩落した阿蘇大橋の一部は、震災遺構として残されています。
また、大分駅と熊本駅間を結ぶJR豊肥本線は、地震によって阿蘇駅~肥後大津駅間が不通になっていました。2020年8月8日に復旧し、別府駅と熊本駅間を往復する『九州横断特急』も運行しています。鉄道マニアの方には、立野駅~赤水駅間のスイッチバック機構が有名。全線開通により4年ぶりに復活した、進行方向を前後に変えながら急勾配を上るスイッチバックを体感することができます。
今しか見れない『熊本城復活の軌跡』を見に行こう
熊本市内で一番の見どころは、何といっても熊本城。地震発生により、『武者返し』で有名な石垣の崩落、国の重要文化財であった東十八間櫓の倒壊、天守閣の屋根瓦や鯱(しゃちほこ)の落下など、被害総額は約634億円と算出されています。
「熊本市民・県民、国内外からも多くのご支援をいただき、2018年に始まった20年におよぶ復興計画に沿って復興事業を進めています。2020年6月からは、『今しか見れない熊本城』を間近に見ていただけるよう見学通路を設置し、特別公開しています」と、熊本城総合事務所所長の網田さんにお話いただきました。
実際に見学通路を歩いてみると、生々しい震災の傷跡に心が痛みます。崩れた石垣に使われている石の大きさや量の多さに驚くと同時に、その石を積み上げて石垣を築いた当時の技術や労力にも感嘆せずにはいられません。
それでも、荘厳ながらも優美な熊本城の姿を眺めると、修復作業が確実に進んでいることを実感します。2021年4月26日からは、バリアフリーに改修された天守閣内部が公開される予定です。
2020年11月20日から12月6日までは夜間公開を実施。『銀杏城』の別名となったイチョウの葉が黄色く色づき、赤く染まった紅葉などとの色のコントラストを楽しめるライトアップが行われます。
日々復興を遂げ、その時々にしか見られない熊本城の様子を、ぜひ見学に行ってみましょう。
熊本城
- 住所
- 熊本市中央区本丸1-1
- 電話
- 096-223-5011(観覧に関するお問い合わせ:熊本城運営センター 9:00~17:00)
- 公開時間
- 9:00~17:00(最終入園16:30)
※公開日程やイベント、料金などは熊本城のHPでご確認ください。
創業150年を誇る華やかな料亭で、熊本の郷土料理を満喫
美味しいものが盛りだくさんの九州の中でも、肉・魚・野菜・果物の素材と郷土料理にもおいしいものがそろっている熊本。たくさんの飲食店がひしめく熊本市内で、2020年に創業150年を迎えた『日本料理 おく村』は、熊本城のお膝元に位置し、地元でも一目置かれる老舗の料亭です。
「本震の後、多少の不具合はあったけれど、鉄筋コンクリート造りに建て替えていた店構え自体は大丈夫でした。泣きながら避難場所に向かう近隣の方々を店内に受け入れ、最多で20人ほどが店内で寝泊まりしていました」と代表の奥村さん。
幅広い人脈をお持ちだったこともあり、Facebookで不足物資の情報などを発信し、行政の支援が届きづらい場所への物資供給支援を積極的に行われました。その様子は、地元新聞の一面で報じられたほど。2020年7月に熊本県人吉市で水害が起こった際にも、熊本地震の経験を活かして支援活動にあたられたそうです。
「地元農家から直接旬の野菜を仕入れ、その時期のおいしい食材を使って、お客さまに納得し、満足いただける味を提供し続けています。作家の遠藤周作さんや三島由紀夫さんのほか、政財界・芸能界・スポーツ界など、多くの著名な方々がご来店くださっています」歴史ある料亭だけに、数々のエピソードも残っており、コワモテながらも気さくなご主人からおもしろい話が聞けるかもしれません。
大変希少価値の高い、淡水に生息する『水前寺のり』の保全・繁殖にも尽力されており、水前寺のりが食べられる数少ないお店でもあります。
日本料理 おく村
- 住所
- 熊本市中央区新町1-1-8
- 電話
- 096-352-8101
- 営業時間
- 11:00~15:00(昼の部・ラストオーダー 14:00)
17:00~22:00(夜の部・ラストオーダー 21:00)
- 休み
- 不定休
食材の宝庫・熊本で食すイタリアンは、素材のおいしさが違う!
熊本でおすすめの飲食店をもう1店ご紹介。ほとんどの食材を熊本県産にこだわったイタリアン『tutti(トゥッティ)』は、落ち着いた雰囲気のレストランです。
「地震直後は、食器やグラス、お酒のボトルが割れ、営業できない状態でした。しかし、1週間後には、近くの小学校で炊き出しをやりました。店も片付けて2週間後から仮営業をはじめ、最初はガスが不通だったのでカセットコンロを使って牛丼などを提供していました」とお話しくださったオーナーシェフの中村さん。
「九州イタリア料理協会のメンバーに連絡して、震災から2か月後くらいに、震源地となった益城で『最初の晩餐』というイベントを開きました。多くの住宅に被害が出て、家族と別れて避難生活を送る人もいた地域で、本格的なイタリアンのコース料理を公民館前の広場で振舞ったんです。『地震後初めて家族が集まった』と、涙を流しながら召し上がってくださった方もいました」
お店の一番人気は、地元の野菜を使ったバーニャカウダ。野菜そのものの味が良く、ソースに使われる無農薬ニンニクも熊本県産です。
「県外の方は、熊本の肉=馬刺しのイメージを持たれていますが、あか牛や味彩牛も熊本が誇るおいしいお肉。限られたお店でしか食べられない希少な『井さんのあか牛』は、ぜひご賞味いただきたい。肉自体の旨味が味わえます」ということで、低温でじっくり火を通した赤身の内もも肉をいただきました。
天草の海塩だけの味付けで、肉本来の旨味が続きます。歯ごたえはやわらかく、赤身肉のイメージが大きく変わるほどのおいしさです。
旬のおいしい食材を仕入れることもあり、メニューは季節によって変わるそうです。熊本地産の食材をふんだんに使ったおいしいイタリアンを、『tutti』で味わってみてください。
tutti(トゥッティ)
- 住所
- 熊本市中央区安政町2-29セントラルビル3F
- 電話
- 096-323-6068
- 営業時間
- 18:00~23:00(金・土・祝前~24:00)
- 休み
- 水曜日
地震からの復興によって、魅力がさらにパワーアップした熊本。「さんふらわあ」に乗船して熊本の“今”を知る旅に、ぜひ出かけてみてください。
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