もくじ

神戸港を出発する「さんふらわあ」が到着する大分港から東九州自動車道を経由して車で約40分、大阪南港発なら別府国際観光港に到着後、同じく東九州自動車道を利用して車で約1時間。大分県臼杵市は、国宝の石仏(磨崖仏)や城下町の町並みなどの見どころが多く、大分旅行・九州旅行の際にぜひ訪れたい情緒あふれる歴史と文化の町です。南蛮文化の影響も色濃く残る臼杵のおすすめ観光スポットやグルメ情報をご紹介します。

 
※最新の営業状況については、各店舗・施設ホームページ等にてご確認ください。
 

国宝『臼杵石仏』。大小さまざまな石仏群と対面すれば心が安らぐ

国宝臼杵石仏

約千年の歴史が刻まれた、60体を超える石仏群
臼杵市のシンボルともいえる磨崖仏(臼杵石仏群)は、61体が国宝として指定されています。だれがいつ何のために掘ったのか、造営当時の証拠となる史料は残っていません。地元の長者(真名野長者)が娘を亡くし、その供養のために石工に彫らせたという伝説があり、仏像の様式などから平安時代後期から鎌倉時代にかけて彫刻されたと推定されています。

ホキ石仏第2群の第1龕(がん)にある阿弥陀三尊像
ホキ石仏第2群の第1龕(がん)にある阿弥陀三尊像は、まるで木彫りのような繊細で滑らかな彫り。その穏やかな表情に心が穏やかになります。「龕(がん)」とは、石仏像を安置するくぼんだ場所のこと。

磨崖仏(まがいぶつ)とは、崖などの岩肌を彫ってつくられた仏像で、移動できないものを指します。臼杵石仏群周辺の岩壁の石質は、軟らかくて彫刻しやすい阿蘇溶結凝灰岩だったことから、数多くの磨崖仏が彫られたと考えられます。一方で、長きにわたって野ざらし状態だったため、風雨などに浸食されやすいもろさから、仏頭部が落下したものも多数ありました。現在は石仏群の修復が施され、保存環境が整えられています。
臼杵石仏群は、地名により名付けられた「ホキ石仏第1群(堂ヶ迫石仏)」「ホキ石仏第2群」「山王山石仏」「古園石仏」の4群に分かれていて、順路の総距離がおよそ800mの観光施設。石段や坂道などアップダウンがあるので、歩きやすい靴で回ることをおすすめします。石仏を見て回るだけなら40分ほど、全体をじっくり見て回ると1時間程度かかります。個人旅行者を対象に、10時~15時までの間で1時間程度、ボランティアの方が無料で石仏を案内してくれるガイドツアーを電話で予約することもできます(3日前までに要予約。詳しくは施設ホームページにて)。
ちなみに「ホキ」とは、「崖(がけ)」を意味する地名です。
 
優れた彫刻技術で表現された大日如来坐像

大日如来坐像
大日如来坐像の高さは約2.8m。大日如来を中尊として、その左右には普賢菩薩、薬師如来、釈迦如来、弥勒菩薩、阿弥陀如来、文殊菩薩などが6体ずつ並び、合計で13体になることから、「古園十三仏」とも呼ばれています。

臼杵石仏群の中心的な存在である古園石仏の中尊に位置する大日如来坐像。くっきりとした抑揚のある彫りがなされた穏やかな表情で、見る者を圧倒すると同時に、心を優しく包み込むような安らかさが感じられます。
長年の風化によって300年以上前に仏頭が落下して以来、仏体と離れて安置されていました。しかし、14年間にわたる大規模な保存修復工事が行われ、1994年(平成6年)に元の位置に戻されて、翌1995年に国宝として指定されました。

臼杵石仏群の中心的な存在の大日如来坐像
ふくよかな耳、ややつり上がった目、引き締まった口元の端正な顔立ち。頭部には色彩が残り、日本の石仏彫刻のなかでも傑作として知られています。
山王山石仏の如来坐像
純真無垢な子供のような表情が印象的な、山王山石仏の如来坐像。

山王山石仏の如来坐像は、かつては竹藪の中に隠れていたことから、「隠れ地蔵」とも呼ばれています。その表情はユーモラス。幼児のようなあどけなさのある童顔に彫られていて、心を和ませてくれます。

臼杵石仏の眼下には、のんびりとした時間を過ごせる臼杵石仏公園があり、季節の草花が楽しめます。特に、毎年7月~8月にかけて大輪の蓮(はす)の花が咲き乱れる蓮畑は、地元の方をはじめ九州・四国各県からも多くの観光客が集まります。緑の葉の中に、淡いピンクの花びらが無数に開いている様子は、まさに極楽浄土をイメージさせる風景。7月には「石仏の里 蓮まつり」、8月最終土曜日には「国宝臼杵石仏火まつり」などが開催されます。そのほかの季節にも、さまざまなイベントや季節限定の御朱印販売などが予定されているので、事前に施設ホームページをチェックしておきましょう。

時間や体力に余裕があれば、臼杵石仏公園の先にある満月寺(まんがつじ)にも足を延ばしてみましょう。境内には、ひざから下が土に埋もれたユニークな仁王像が建っています。また満月寺の北側には、鎌倉時代後期に建てられたと伝わる宝篋印塔(ほうきょういんとう)があります。別名日吉塔(ひよしとう)とも呼ばれ、国の重要文化財に指定されています。その高さは台座から総高4.2mで、日本国内で一番の高さです。

なお、臼杵市内の観光スポットをお得に巡ることができる共通入場券も販売されています。臼杵石仏と稲葉家下屋敷の2施設共通入場券、臼杵石仏・稲葉家下屋敷・吉丸一昌記念館・野上弥生子文学記念館の4施設共通入場券※があります。2日間有効なので、余裕を持って観光できます。稲葉家下屋敷についてはこちらの記事をご覧ください。
※4施設共通券の販売は土日祝のみ。

臼杵石仏

住所
大分県臼杵市大字深田804-1
アクセス
大分港から車で約40分(東九州自動車道経由)、別府国際観光港から車で約1時間(東九州自動車道経由)、JR臼杵駅からバスで約20分
問い合わせ電話番号
0972-65-3300(臼杵石仏事務所)
営業時間
9:00~17:00(最終入館16:30)
定休日
なし
駐車場
あり(無料)

創業100年!ショウガが効いた臼杵煎餅の老舗『後藤製菓』

大分県の銘菓として地元で有名な「臼杵煎餅」。江戸時代に参勤交代する一行の携行食として誕生したと伝えられています。
市内に数社ある臼杵煎餅をつくる会社の中でも、2019年に創業100年を迎えた『後藤製菓』は老舗中の老舗。臼杵石仏の駐車場前の石仏会館が本店なので、国宝の磨崖仏を見る前後に立ち寄れます。
 
昔ながらの手作業でつくられる、歴史ある銘菓

臼杵煎餅は手づくり

小麦粉を主原料に焼き上げた素焼き煎餅に、臼杵特産の生姜(ショウガ)と砂糖を煮てつくった蜜を、1枚1枚刷毛で塗るという丁寧な手作業でつくられる菓子。刷毛で塗られた蜜が冷えると白い筋となって縞模様になり、まるで臼の木目のように見えます。一見簡単そうな作業ですが、蜜は沸騰しており、手袋をしていても熱さが伝わってくるため、熟練の技が必要なのだとか。なお、事前に予約をしておけば、刷毛塗りを体験することができます(有料)。平日は、臼杵煎餅をつくる工程を見学可能です(無料)。刷毛塗り体験を予約した方は、スタッフの解説を聞きながら工場見学ができ、その後に煎餅の手塗り体験が行われます。体験でつくった煎餅は、その場で食べることも、持ち帰ることもできます。

3種類の臼杵煎餅。左から、黒糖入(薄焼き)・曲型(薄焼き)・平型(厚焼き)。
3種類の臼杵煎餅。左から、黒糖入(薄焼き)・曲型(薄焼き)・平型(厚焼き)。

臼杵煎餅を食べると、生姜の風味が口の中に一気に広がります。砂糖の甘さと生姜の辛さが絶妙で、クセになる味。臼の形のように曲がったタイプの黒糖入と曲型は軽い歯ごたえの薄焼き、平型は厚みがあり歯ごたえのある堅焼きです。
 
臼杵煎餅を活かした現代風スイーツや煎餅以外のお土産も人気

ソフトクリームには薄焼きの臼杵煎餅が1枚付いてきます。煎餅でクリームをすくって、一緒に食べるのも◎。
ソフトクリームには薄焼きの臼杵煎餅が1枚付いてきます。煎餅でクリームをすくって、一緒に食べるのも◎。

臼杵煎餅を使ったソフトクリームもあります。ソフトクリームにも生姜が入っていて、甘さの後から生姜のピリッとした辛さが追いかけてきて、トッピングされた煎餅の食感もバツグン。石仏を見て回って疲れた体に、生姜パワーで活力が湧いてきます!

試食して選べる

店内には、臼杵煎餅以外のお菓子やスイーツなども豊富です。固い臼杵煎餅をやわらかい和菓子風にアレンジし、小倉餡やブルーベリージャムをはさんだ「うすきせんべい・生さんど」や、臼杵市のゆるキャラ「ほっとさん」の焼印が入って、サクッとした軽い食感の「臼杵せんべいサブレ」などもお土産に好適。
スタイリッシュなパッケージデザインが印象的な「IKUSU ATIO(イクス アティオ)」は、『ここ臼杵から、大分、そして世界に向けて発信していく』という気持ちが込められ、創業100年記念に誕生した新ブランド。素材にこだわってつくられ、食べやすいひと口サイズにアレンジするなど、伝統の品質と現代のフィーリングが融合した商品が展開されています。大分特産のカボスを使ったものもあり、お土産選びに迷ったら幅広い年齢層に喜んでもらえる品々がそろった、『後藤製菓』のアイテムを選べば間違いないでしょう。

後藤製菓 本店(石仏会館)

住所
大分県臼杵市深田118
アクセス
大分港から車で約40分(東九州自動車道経由)、別府国際観光港から車で約1時間(東九州自動車道経由)、JR臼杵駅からバスで約20分
問い合わせ電話番号
0972-65-3555
営業時間
8:00~17:00
定休日
なし
駐車場
あり(無料)

リーズナブルな「ふぐ天丼」や旬の鮮魚が選べる「勝手丼」が人気の『臼杵みなと市場』

臼杵名産の新鮮な魚介メニューで腹ごしらえ
臼杵のグルメと言えば、やはり新鮮な魚介。臼杵では、関あじ、関さばのほか、ふぐも名産です。臼杵市内に専門店がいくつもありますが、お値段が…という方は、「臼杵ふぐ天丼」が1,000円以下で味わえる『臼杵みなと市場』に足を運んでみてはいかがでしょうか。

おいしいふぐの天ぷらがたっぷり乗って980円(税込)とは驚き!
おいしいふぐの天ぷらがたっぷり乗って980円(税込)とは驚き!

肉厚なふぐの身が、カラッと揚げられた衣に包まれています。その身は、やわらかくも歯ごたえが残っていて、かけられたやや甘めのタレと相まって、噛むほどに旨さが口の中に広がります。ふぐの天ぷらを、贅沢な気持ちで存分に味わえます。
 
みなと市場名物、自分勝手に好きな海鮮を乗せられる「勝手丼」
食べたい魚介を選んで、自分だけのオリジナル海鮮丼にできる「勝手丼」も人気メニューのひとつです。季節によって旬の魚介が入れ替わるので、訪れたタイミングで旬の魚介が満載の海鮮丼を食べられます。
ご飯(どんぶり)、みそ汁、茶わん蒸し、小鉢のセットが基本で、好みのネタを選んで注文します。どのネタを選ぶか、どれだけ追加するかによって金額が変わります。この日、編集部スタッフのチョイスは、りゅうきゅう、地だこ、たいらぎ貝、まぐろ赤身、関あじ。「りゅうきゅう」は、さば、あじ、ぶりといった大分産の鮮魚を醤油などのタレに浸し漬けた郷土料理です。

「勝手丼」は、まずどんぶりのご飯の上に魚介ネタを乗せます。生卵にお店特製のタレを適量たらし、お好みでわさびも入れて、よく溶き合わせ、魚介ネタに回しかけたら完成。食べたい具材を集めたお好み海鮮丼なんて、鮮魚好きにはたまりません。
ちなみに特製のタレは、昆布出汁が利いた甘めの味付けなので、たっぷりかけてもしょっぱくなりすぎません。
 
大分“B級グルメ”グランプリ受賞の「はも南蛮」
お店の名物がもう一品、「はも南蛮」です。2015年の「おおいたB級グルメNo.1決定戦」で、臼杵みなと市場の「はも南蛮ナゲット」がグランプリを獲得しました。現在は、単品メニューの「はも南蛮」や定食になった「はも南蛮御膳」もあります。

単品メニューの「はも南蛮」。やわらかいはもの身とタレがベストマッチ。
単品メニューの「はも南蛮」。やわらかいはもの身とタレがベストマッチ。

はもの身は丁寧に包丁が入れられていて、ふわっふわのやわらか食感。炒めて甘さが増した玉ねぎを酸味が利いた南蛮ダレに漬け込んでいるので、しっかり味が付いていてそのままでも十分、タルタルソースを付ければおいしさがワンランクアップ。また、大分名産のカボスを搾れば、さわやかな柑橘系の酸味が加わり、はもの旨みをさらに引き出して極上の味わいに。グランプリを獲得したのもうなずけます。
はもを使ったメニューは他に、「はも天丼」「はもカツ丼」「はもカツ御膳」があります。また、大分名物の「とり天」や「鶏のから揚げ」も食べられるほか、大分県産の豊後牛が味わえるメニューなどもそろっています。
さらに、『臼杵みなと市場』にはカキ小屋が併設されていて、カキや車海老、ひおうぎ貝、伊勢海老などの海鮮焼きも味わえ、豊後水道の恵みに思う存分舌鼓を打てます。“市場”の店名のとおり、店内で鮮魚のほか、お土産として干物や乾物、大分の名産品やお菓子などを購入することもできます。旅の途中でぜひ立ち寄りたいグルメスポットです。

臼杵みなと市場

住所
大分県臼杵市大字臼杵72-9
アクセス
大分港から車で約45分(東九州自動車道経由)、別府国際観光港から車で約1時間(東九州自動車道経由)、JR臼杵駅から徒歩で約10分
問い合わせ電話番号
0972-83-5660
営業時間
食事 平日:10:30~15:00(14:45オーダーストップ)、
    土日祝:10:30~15:00(14:45オーダーストップ)、17:00~21:00(20:30オーダーストップ)
※営業時間変更の可能性あり。問い合わせてご確認ください。
お土産コーナー 10:30~21:00
定休日
なし
駐車場
あり(無料・他店舗と共通)

臼杵観光をするなら、車を利用するのが便利です。自宅からマイカーごと「さんふらわあ」に乗船すれば、大分に上陸してすぐにドライブ旅行を始められます。徒歩乗船で、大分港や別府国際観光港周辺でレンタカーを借りることもできます。車を利用しない場合も比較的スムーズ。JRやバス、タクシーなどで臼杵に移動しましょう。「さんふらわあ」が発着するフェリーターミナルに近いJR西大分駅、JR別府駅からJR臼杵駅までは、日豊本線で1時間程度です。

国宝の石仏群を拝観し、臼杵みなと市場で食事をしたあとは、歴史を感じる臼杵の町並みを散策してみましょう。

≫城下町・臼杵の町並みを散策する記事はこちら

訪れればきっと好きになる、
情緒あふれ歴史を感じさせる町、大分・臼杵。
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