もくじ
北海道はニセコを筆頭にルスツ、トマムなど数多くのスノーリゾートが点在し、日本人のみならず最近では世界中のスキーヤーやスノーボーダーにとって憧れの地です。今回は長らくスノーボード業界に携わって来た小早川さんが、スキー・スノーボードの聖地・北海道をマイカーで巡る旅をご紹介します。少し長めのお休みと「さんふらわあ」があれば意外と北海道スノートリップは身近になるのです。
※最新の営業状況については、各店舗・施設HP等にてご確認ください。
29年目は北海道スノートリップ
初めてスノーボードを履いたのは、1991年1月。それから28年、スノーボードの魅力はいまだに自分を捉えて離さない。
子供が生まれるまではシーズンになると仕事とプライベートの両方で毎週のように雪山へ通っていた。裏磐梯の猫魔、新潟のかぐらや関温泉など、日本には素晴らしいゲレンデがたくさんあるが、やはり北海道のニセコは別格だ。1998年の元旦の朝一、深酒したローカルたちを尻目にノートラックのピークから滑り降りた1本は最高だった。
子供もようやく中学生になり、29年目の今シーズンは少し時間ができた。そんな折、スノーボード仲間の編集者から「フェリーに乗って久しぶりに北海道に行きましょう、そして滑りましょう」という連絡が入った。なんというグッドタイミング!
テーマは「スノートリップ」。かつてサーファー達が良い波を追い続けた映画「Endless Summer」のように、良い雪を求めて旧友との再会を果たす。それならニセコに行くしかない。
自分の車で移動すれば、天候や気象条件、積雪状況に合わせて一番良いロケーションでのスノーボードが可能になる。もちろん、コンディションに合わせたボードも好きなだけ持ち歩ける。
だけど東京から北海道まで、特に冬の時期、車での移動は時間的にも体力的にも非現実的だ。だからフェリーで大洗から苫小牧まで移動しようという提案は目から鱗だった。
その手があったか!
今回は仲間の待つ「ニセコ」が最初の目的地。そこからはコンディション次第で、日本最高のパウダースノーを誇る「大雪山系 旭岳」を目指すことにした。
写真左:(滑る係&書く係)小早川昌弘 57歳。パウダースノーの大好きなスノーボーダー。本職はヨットの先生だが好きな分野だけライターもこなす。通称「こばさん」
写真右:(写真係)馬弓良輔 52歳。スノーボードを仕事にしたくて仕方ない旅行&自動車系の編集者兼カメラマン。通称「まゆーん」
Day 1 大洗へ
さあ、いよいよ出発だ。愛車は4WDにスタッドレスタイヤ付き。もちろんワイパーも雪対応、万が一に備えてチェーンもトランクに常備している。
今回は極寒の北海道に対応するためにウィンドウォッシャー液を-20℃でも凍らないものに入れ替えて、エンジン冷却水(クーラント液)も念のためー30℃まで対応するものに交換。最後にスタッドレスタイヤの空気圧をチェックして、あとは好きなだけスノーボードと荷物を積み込もう。
夕陽の中、大洗港を目指して快適なドライブ。まゆーんとの北海道は、例の元旦のニセコ以来21年ぶり。まゆーんも自分と同じ年に子供が生まれて、ここ最近は近場ばかり滑っていたようだ。これから始まる船旅、そして北海道にワクワクして、会話も弾む。
フェリーターミナルに到着。これから乗り込む「さんふらわあ」をバックに客室に持ち込む荷物を用意。
車検証を持って窓口で手続き。同乗者は徒歩にて乗船。ドライバーは係員の指示に従って運転して船内の車両甲板へ。車を止めたら1泊分の荷物だけ持って客室へ向かう。身軽で楽チンだ。
往路の客室はちょっと贅沢なスーペリアオーシャンビューの洋室。窓から海が見えるツインベッドのお洒落な部屋。オヤジ2人にはもったいない?トイレ、シャワー付きで、アメニティーも充実。ゆっくり休んでこれからの旅にパワーを充電できる。
さっそく腹ごしらえ。メインの料理にお替り自由のパン、ごはん、みそ汁、サラダにソフトドリンクバーがセットになっていた。私はビーフシチューを、まゆーんはうな重を。ゆっくり食事を楽しんで、食後のコーヒーとデザートでお腹も気分も満足。時間を気にせずにゆっくりできるのが船旅のいいところ。
Day 2 苫小牧からニセコへ
この日の太平洋は穏やかだった。おかげでぐっすり眠ることができた。お昼過ぎに苫小牧港に到着。さすがに空気がピンと張りつめて、突き刺すような寒さ。平地には雪は無いものの、山並みの雪がこれからの旅を予感させる。
下船は同乗者も一緒に車で。いよいよ北海道に上陸、スノートリップの始まりだ。運転は安全第一、北海道のアイスバーンは本当に危険。高速道路も車間距離を十分にとって走ります。
支笏湖畔から国道453・276号を経由し約34km、国道276号線(尻別国道)沿いにある「きのこ王国 本店」。広い駐車場とトイレを完備したドライブイン&レストラン。昔から、いつもここで休憩。
内装はきれいになったが、雰囲気は昔のまま。タイムスリップした錯覚に陥ってしまった。以前は「ジャガバター」が定番メニューだったが、今回は「さんふらわあ」で朝食をたっぷりとったので軽めのメニューを。
地元の方の温かいもてなしの気持ちと同じように温かい「きのこ汁」。長距離ドライブの疲れを癒す一品。
きのこ王国 本店
- 所在地
- 北海道伊達市大滝区三階滝町637-1
- アクセス
- 苫小牧港より車で約1時間
- 電話
- 0142-68-6270
いよいよ今日の目的地、「ニセコ」が近づいてきた。やっぱり北海道の道は直線だ!!
ニセコが近づくにつれて、交通情報掲示板になんと英語の表記が。
ニセコ駅方面からニセコ「グラン ヒラフ」のナイターコースを正面に見ながら友人宅を探す。建物が増えて、雰囲気が変わった。道はかなりのアイスバーン。後続車のいないタイミングでブレーキテストをしながら、慎重に進む。
そして旧友、「順くん」の自宅に到着。10年ほど前に仲間と一緒に自分で建てたマイホーム。自分の田舎に帰って来た様で懐かしい。いよいよ再会の時。
真ん中が順くん。ニセコに移住して30年くらいかな? 20年前に知人の紹介で彼の経営していた「テディベア」というバックパッカーの宿で知り合った。その後、右の奥様「おっそ」と結婚。一番右は息子の「かなせくん(小6)」と今は札幌に住んでいる長女の「かやのちゃん」の2人のお子さんに恵まれ、現在の自宅を建設。雪国の大変さを色々と教えてもらった。一番左は、毎年正月に大阪から滑りにくる「にいちゃん」、順くんの兄貴です。
彼らの話に聞くニセコの変貌ぶりに驚かされる。外国資本の急激な流入によって、日本一の地価高騰を続ける土地に住み続けることの大変さ。バカンスシーズン以外の時期のニセコの現状。日本で一番のパウダースノーを誇ったかつての「ニセコ」と外国人だらけになってしまった今の「ニセコ」。様々な問題があることに聞き入ってしまった。
Day 3 ニセコヒラフ
さあ、いよいよ滑ろう!
まずは、やはりヒラフへ。全面ロードヒーティングされた「ヒラフ坂」。まるで海外のリゾートのようなお洒落な通りに大変身。昔並んでいた「お土産物屋」は何処へ?
「順くん」のガイドでヒラフの由緒あるリフト「センター4(フォー)」から山へ。左の紫のウェアが「順くん」。右のオレンジのウェアが私です。
フード付きの4人乗りリフトは暖かくて快適。リフトも新しくなって運搬能力がアップ。おかげでリフト待ちはずいぶん減ったそうだ。
スキー場でもパウダースノーを求めてコースわきや、林の中を見逃さない順くん。負けじと付いて行く。順くんのスタイルはスノーボードのレジェンド、クレイグ・ケリーのようだ。昔から変わらない。
今度はカメラを順くんにお願いして、私とまゆーん(グリーンのウェア)の2ショット。視界も良く快適な斜面をガイドしてくれてありがとう。
実は朝から39度の熱があった順くん。ゲレンデで一旦お別れ。ゆっくり体を休めて、しっかり治して。ここからはまゆーんと私の二人だけ。噂の大型リゾート施設(建設中)を見に「HANAZONO」へ。
ニセコの中でも一番東側に位置する「HANAZONO Resorts」。当時、比較的穴場だった花園第3クワッド、通称「ハナサン」には何回も乗ったものだ。一番下まで下りてみてビックリ。北側に大きなリゾートホテルが3棟も建設中。どうやら「ヒルトン」らしい。もともと、最初に外資系が進出したHANAZONO。5年前にはすでに、「花園」は「HANAZONO」になっていたがまさかここまで…
正月明けということもあるのだろう、レストハウスはほぼ100%海外からのスキーヤー、スノーボーダー。飛び交うのは英語、ドイツ語、フランス語、そして聞いたことのない言葉たち。ここはウィスラーか!
交通情報掲示板も英語になるわけだ。ちなみに東京の学生の間では「ニセコ留学」が密かなブームらしい。長期アルバイトとしてニセコで働いて、外国語を学ぶチャンスを作るらしい。時代は変わった。
HANAZONOの一番下からリフトを乗り継いで一番高いところまで、とりあえずは行ってみる。視界も雪もあまり期待はできそうにない。何よりもうすぐ日が暮れる。
フラットライト(視界が悪くて斜面の凹凸が分からなくなること)の中、暗くならないうちに山麓を目指してドロップイン。
無事に一日目の、滑走が終了した。この後のお楽しみは、そう、温泉。順くんのお勧め、ローカル色豊かな「倶知安温泉」へ。
観光客向けでないのか、質素なたたずまい。但し、お湯は最高!!硫黄臭くないのにお肌はツルツル、筋肉ゆるゆる、体ポカポカ。さすが地元住民のお勧め!
くっちゃん温泉 ホテルようてい
- 所在地
- 北海道虻田郡倶知安町字旭69番
- アクセス
- ニセコヒラフから車で約20分
- 電話
- 0136-22-1164
帰りに倶知安の「ワンタン屋」にてみんなで夕食。やっぱり地元の人はおいしいお店を知っていますね。
このワンタンが超絶品。3種類のワンタンのそれぞれに個性があっていくらでも食べられそう。
かなせくんはジャージャー麵がお気に入り。スキーもスノーボードもこなす地元っ子。ニセコ近くの小学校は倶知安町の分校。全校生徒は18人だそうだ。実際の生活人口の少なさにびっくり。
夜になって、もう一人旧友が訪ねて来てくれた。スノーボードクロスの創成期にプロとして活躍していた「由美ちゃん」。いったんニセコを離れたものの、今シーズンから戻ってきたらしい。夜遅くまで昔話に花が咲いた。
Day 4 ニセコモイワ
スノーボード2日目は順くんお勧めの「MOIWA」へ。7年前に順くんのガイドでいい思いをしたところだ。残念ながら順くんは熱が下がらず、今日はお休み。
写真のようにゲレンデはガラガラ。裏山の新雪はどうだろう?期待に胸をふくらませ、昔の記憶をたどる。
外国人の比率は高いものの、ヒートアップしているヒラフと比べると雰囲気はかなり穏やかだ。クワッドリフトを降りたところには、ルールを守ればコース外に出ていけるゲートが。ここには「ビーコン(雪崩で埋まった時に発見しやすくするための発信機)チェッカーが設置されている。スイッチオンを確認して、バックカントリーへの心構えを再度認識。
よさそうな斜面を探して林の中を慎重に移動する。どうやら先客がいたらしく、昨夜降った新雪も、かなりトラックだらけだ。
探して探してやっと見つけたきれいなバーン。思いっきり雪煙をあげて新雪の浮遊感を楽しむ。
まゆーん渾身の1枚。私もお気に入りの写真だ。林の中の開けた場所を繋いで滑っていく。脳みそが耳から出てしまうような快感に思わず声が出てしまう。
レストハウスに戻ったら、またまた懐かしい顔に。「GENTEM STICK」の玉井太朗氏とばったり!!初めてニセコに来た時から、いろいろとアドバイスをしてもらった仲。他にも何人か知った顔に出会った。地元のローカルもヒラフを逃れてここ「MOIWA」に来ているみたいだ。
窓には世界各国の言葉で寄せ書きが。インターナショナルな証。
朝から滑っている間に、車はご覧の通り。毎日何回もこの雪下ろしをしないとどこへも行けないのがここの現実。やっぱり雪国に住むって大変。
帰りに「GENTEM STICK」のショールームを覗いた。玉井氏は不在だったが、お洒落なカフェもあっていい雰囲気。
中にはスノーボードやサーフボードのコアなラインナップがずらりと並んで、マニアにはヨダレものだ。
GENTEMSTICKニセコショールーム
- 所在地
- 北海道北海道蒲山市倶知安町倶知安63-25
- アクセス
- ニセコヒラフからすぐ
- 営業時間
- 12:00〜19:00
- 電話
- 0136-22-5581
順くんのお宅へ戻り、天気予報を見ながら作戦会議。明日は冬型が緩むようだ。しかし明後日以降は少し荒れるかもしれない。ニセコは名残惜しいが今晩中に「旭岳」へ移動することにしよう。
「北海道スノートリップ」の後編では大雪山の旭岳をご紹介します。リゾート地・ニセコとはまったく異なる厳しい雪山です。
小早川 昌弘(コバヤカワ マサヒロ)
学生時代に始めたヨットで自然相手のスポーツに出会う。その後ウィンドサーフィンにはまりハワイマウイ島に通う。1990年3月に日本で初めてのスノーボードワールドカップの運営に携わることになり、スノーボードと出会う。夏はサーフィン(ロングボード)、冬はスノーボード(新雪を求めて)の2足のわらじ。2011年にはビルフィッシュ(クロカジキ)フィッシングにて日本記録の魚を釣り上げる。ライターとしては、スノーボードのイベント関係、スキー場紹介と雪山に特化している。現在57歳、中学1年生の娘はスキーヤーである。
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