もくじ
今や全国区となり大分グルメの定番となった「とり天」と「鶏のからあげ」。ふるさと納税の返礼品に選ばれるような、大分県民にとってのソウルフードである「とり天」と「鶏のからあげ」は、九州以外の地域でも、チェーン店などで気軽に食べられるようになりました。
しかし、やっぱり地元のグルメは地元で食べるのが一番!その地域で人気のお店や「元祖」のお店、こだわりの店主や名物おじさんが居るお店など、大分県の別府市、大分市、宇佐市、中津市から厳選したお店を紹介します。
※最新の営業状況については、各店舗・施設ホームページ等にてご確認ください。
関西と九州をむすぶ「さんふらわあ」。船内2泊、現地0泊という往復の「弾丸フェリー®」プランが人気だそう。
夕方すぎに乗船して、翌朝早く目的地に到着。そして帰りはその日の夕方過ぎ。つまり、ほぼ1日を観光に充てることができるというわけ。
では、その1日を何につかう?
九州といえば、実はどうしてもやってみたいことがありました。それは、大分でとり天とからあげを食べ尽くすこと!これ、よっぽど時間に余裕がないとできません。
そこに「船に乗って何か記事を書かないか?」というお誘い。もちろん、断る理由はありません。
というわけで、大阪発・別府行きのフェリー「さんふらわあ あいぼり」に乗り込み、夢の「とり天&からあげ」食いだおれ弾丸ツアーに挑んできました!
ラウンド1 別府とり天VS大分とり天
大阪南港の出発は夜の7時05分(金・土は夜7時55分)。別府港への到着は翌朝6時55分でした(金・土は朝7時45分着)。
レンタカー店のオープンが8時からなので、まずはロビーで1時間ほど休憩。ロビーにはさんふらわあの歴史を紹介する展示スペースがあり、飽きずに過ごせました。
さて、レンタカーをピックアップすると、まず向かったのは近くの温泉。別府市内には安い値段で入れる共同浴場がたくさんあり、その多くが早朝からやっているのです。
とり天の店は昼からの営業。午前中は別府の温泉巡りにあてようというわけです。何軒か巡ったなかで最も印象的だったのは「竹瓦温泉」。
唐破風作りのレトロな玄関がなんとも風情で、名物の砂風呂も体験。船旅の疲れが一気に吹き飛びました。
* * *
さて、温泉で胃袋を目覚めさせた後は、いよいよ「とり天&からあげ」食いだおれ弾丸ツアーのスタートです。
と、その前に、なぜ大分では「とり天」と「からあげ」が名物なのでしょうか?
まずは「とり天」。
これは大分の郷土料理です。鶏のもも肉や胸肉、ささみなどを、醤油やおろしニンニクで下味をつけ、小麦粉を卵や水で溶いた天ぷらの衣をまとわせ、揚げるというもの。その名の通り、「とりの天ぷら」ですね。
このとり天が食べられる店は、大分県内に無数にあるのですが、元祖は別府市と大分市にそれぞれあります。
別府市は「東洋軒」という中華レストラン。
創業者が中華料理を和風にアレンジして“とり天”を生み出したのだそうです。
大分市は「キッチン丸山」。
こちらは洋食のお店です。お互いに車なら30分の距離。
今回の最初のミッション、それは別府のとり天と大分のとり天を食べ比べること!(大分のからあげの歴史については後ほど!)
まず向かったのは東洋軒──と思いきや、いきなりの予定変更(汗)。というのも、午前中に訪れた共同浴場のオバチャンに、
「とり天ならこの近所にうまい店がある」
と言われたから。こういう現地の人の“口コミ”には、大いに乗ったほうがトク!(東洋軒は人気店で行列もザラだというし……)。
というわけで、改めまして、とり天別府代表の店は──
「トンカツの店 にしもと」!
“なんだトンカツ屋か”と思うなかれ。こちら、とり天も名物なのであります。創業は1976年。実は、東洋軒も現在の場所に移る前は、この裏手に店を構えていたのだとか。ということは、ある意味別府とり天の発祥の地?(ちょっと強引か……)
カウンターだけの、5人座れば満席の小さな店ですが、創業以来30年以上通い続ける常連さんもいるとか。
さっそく、「とり天定食」(550円!安い!)を頼みました。
とり天は、注文を受けてから衣をつけ、目の前のフライヤーでじっくりと揚げてくれます。パチパチという油のはねる音が食欲をそそります。
そして、出てきたとり天の衣は真っ白! そりゃそうです。天ぷらなんですから。
でも、とり肉 → 揚げる → からあげ → 茶色のイメージが強いため、一瞬戸惑ってしまいました。しかし、一口食べてみると、衣はサクサク、中はジューシー!
使っているのはあっさりとしたムネ肉。さっぱりのポン酢につければ、いくらでも食べられそうです。
ちなみにこちらのお店では、ご飯のお米と味噌汁の味噌にもこだわっており、それがうまいのなんの!もう、箸が止まりません。気づけば山盛りのとり天をペロリと平らげていました。
ごちそうさま!
トンカツの店 にしもと
- 住所
- 大分県別府市楠町6-3
- アクセス
- 別府国際観光港から車で約8分、大分港から車で約15分
- 電話番号
- 0977-25-3759
- 営業時間
- 11:30〜15:00、16:30〜18:00(食材が無くなり次第終了)
- 定休日
- 日・月
<編集部コメント>
トンカツの店でありながら、とり天も人気の「にしもと」。まるで時間が止まっているかのような、郷愁のあるお店です。
とり天の元祖といわれる東洋軒には、全国から多くの観光客やとり天ファンが集まり、お昼時は行列必至。「さんふらわあ」が発着する別府国際観光港からは車で約3分と近いので、乗船前に訪問して店内で食べるか、テイクアウトして船内で食べるか、混み具合など状況を見て判断すると良いでしょう。
お次は、隣の大分市へ。
「キッチン丸山」は、閑静な住宅街の中にありました。
平日なのに駐車場はけっこう車で埋まっていました。さすが“大分とり天”発祥の店です。
店内は広々として明るく、テーブル席もあります。カウンターに座り、「とり天セット」(680円※。こちらも安い!)を注文。厨房を伺いながら、揚がるのを待ちます。
しばらくして出てきたのは──ムムッ、天ぷらというより、“からあげ”?
いや、どう見てもからあげでしょう。
ママさんいわく、「うちは洋食ですからね。もともと“骨なしからあげ”として考案したのを、“とり天”と名づけたんですよ」
なるほど、やはり正体は“からあげ”でありました。
しかし、普通のからあげがモモ肉を使っているのに対し、こちらはムネ肉。さっぱりとしたポン酢で食べるのも別府と同じです。
衣の感じは少し違いますが、どちらも“ご飯”に合う!やはりペロリと平らげてしまいました。
キッチン丸山
- 住所
- 大分県大分市顕徳町1-6-15
- アクセス
- 別府国際観光港から車で約25分、大分港から車で約10分
- 電話番号
- 097-537-5538
- 営業時間
- 11:00〜14:30
- 定休日
- 日・祝日
<編集部コメント>
キッチン丸山は、ランチ営業だけなので訪問のタイミングにご注意を。テイクアウトにも対応しているので、車の中や天気や気候が良ければ屋外で食べるのもいいですね。
※金額は取材時のもの。現在の金額は異なります。
ラウンド2 宇佐からあげVS中津からあげ
後半戦は、東九州自動道を一路大分県北部の“中津”方面へ。
中津市と宇佐市が、それぞれ「からあげ」の街として有名です。
ちなみに宇佐市が〈からあげ専門店の発祥の地〉、中津市が〈からあげの聖地〉といわれています。
まず向かったのは宇佐市。
こちらにあった「からあげ庄助」という店が、地元の中華料理店からからあげの作り方を教わり、専門店として開業したのが“宇佐からあげ”の始まりだそう。しかし、残念ながら10年ほど前に閉店してしまいました。
今回はその味を継ぐ店を訪問。それが「元祖からあげ専門店 しょうすけ」です。
<編集部コメント>
「元祖からあげ専門店 しょうすけ」は閉店しました。記事内容は取材時のものです。
こちらのご主人は、かつて「からあげ庄助」で働いており、1971年に暖簾分けされたそうです。
醤油には漬けこまず、塩とタレとニンニクだけで下味をつけるやり方は、元祖の「からあげ庄助」ゆずりだとか。飲食スペースはなく、テイクアウト専門というのが、別府や大分のとり天とは違います。店先にはガラスのショーケースもあったりして、なんとなく「精肉店」のようなイメージ。
メニューは「骨なし」(100g 200円)、「骨付き」(同150円)、「手羽元」(同150円)、「手羽先」(同150円)、「砂ずり」(同150円)、「骨付もも1本」(550円前後)、「骨付羽1本」(700円前後)。
骨なしと砂ずりを100gずつオーダーしました。注文を受けると、ご主人はおもむろに肉を切り、衣をつけていきます。
そして、年季の入ったフライヤーにとり肉を投入!
肉を入れた瞬間、“ジャーッ!”という音が。この音を聞いて、食欲に火がつきました。
待つこと5分。ついに、宇佐からあげの完成!
紙袋に入れられたアツアツのからあげを、軒先でガブリ!
アツッ、アツッ、フハ、フハ──。
む、ニンニクの風味がすごい!
塩味もガツンと来る!
まさにパンチのきいた大人の味。もともとは肉体労働者向けの料理だそうで、汗水たらして働いた後には、これくらいの味がちょうどよかったのでしょう。
ああ、これはビールだ!ビールは……もちろん売ってないし、車だし!ああ〜。
<編集部コメント>
宇佐からあげの元祖として長年営業されてきた「元祖からあげ専門店 しょうすけ」ですが、惜しまれつつ閉業されました。メディアに取り上げられ、多くのファンに愛された味が食べられなくなってしまったのは残念です。
「からあげ庄助」がからあげの作り方を教わった中華料理店「来々軒」は健在で、店内で食べられるほか、からあげのテイクアウト専門の「天下とり」が併設されています。そのほかにも、「からあげ太閤」など全国的にも有名な宇佐からあげの店舗もあります。
ちなみに、2014年に公開された、元モーニング娘。のリーダー・高橋愛が初主演した映画「カラアゲ☆USA」(監督:瀬木直貴)は、宇佐市が舞台のカラアゲムービーです。
宇佐市で産声を上げたからあげは、やがて隣の中津市へ伝播していきます。シルクロードならぬ“からあげロード”。その道程をなぞるように、車を中津市へ走らせました。
到着したのは「総本家もり山 三光本店」。開業は1970年。中津市で初めてのからあげ専門店と言われています。
現在は県外にも店舗を多数展開。からあげ好きなら誰もが知る有名からあげ専門店チェーン。その発祥の店はどれほど立派なのか?
アレ、なんか地味。
入り口のドアもサッシだし。まるで建築現場のプレハブの事務所(失礼)。
ま、とりあえず入ってみましょう。ドアを開けるとすぐにテーブルと椅子が置かれたスペース。レジの置かれたカウンター越しに厨房があります。
メニューは「骨なし」(100g 240円)、「骨付き」(同210円)、「砂ズリ」(同210円)、「手羽先」(同220円)、「骨付きもも」(同220円)※
骨なしと砂ズリを100gずつ頼みました。こちらでも注文を受けてから、とり肉に衣をまとわせ始めます。
そして油でジャーッ!
この音を聞いた途端、もたれかけていた胃袋がキュッと動きました。からあげの“ジャーッ”、恐るべし。
さて、揚げたてを店内のテーブルでいただくことに。揚げ色は「しょうすけ」より薄めですね。
アフッ、フハッ、口の中に熱汁が迸ります。
うーん、うまい!
どちらかというと、子供からお年寄りまで楽しめるのはこちら。でも、個人的には甲乙つけがたし。ビールが飲みたくなるのも一緒!ああ、ああ〜!
総本家もり山 三光本店
- 住所
- 大分県中津市三光原口653
- アクセス
- 別府国際観光港から車で約50分、大分港から車で約1時間
- 電話番号
- 0979-43-2056
- 営業時間
- 9:30~19:00
- 定休日
- 年中無休
<編集部コメント>
「総本家もり山 三光本店」の店舗は、2019年に外観・内装ともリニューアルしており、掲載している取材時(2018年)よりもキレイになっています。もも肉やむね肉だけでなく、骨付き/骨なし、手羽先や砂肝(砂ズリ)など鶏肉の部位まで選べるのは魅力です。お弁当も販売しており、大人気のため売り切れることもしばしば。おいしさのポイントは、にんにくがしっかり効いた秘伝のタレ。にんにくの香りが食欲をそそり、空腹時にはたまりません!
※金額は取材時のもの。現在の金額は異なります。
4軒回って、時間は夕方4時。フェリーの時間にも十分間に合います。食べきれなかったからあげを持ち帰り、船内でビールなんてのもいいですよね!
今回大分名物の「とり天」と「からあげ」の名店を4軒巡りましたが、どの店も味や雰囲気が全然違って、これは食べ比べてみないとわからないことでした。
そして、“揚げたて”は、現地でないと絶対に食べられません。
高級グルメではありませんが、フェリーに乗ってまでわざわざ足を運ぶ価値……大アリです!
<編集部コメント>
大分県には、ご紹介した店舗以外にも、全国的に有名な人気店や地元の人しか知らないような名店がたくさんあります。普通のレストランや居酒屋などのメニューにも、とり天やからあげが入っていますので、食べ比べてみましょう。とり天もからあげも、それぞれのお店こだわりの自家製レシピでつくられているので、店舗によって味付けが違います。また、使用する鶏肉も大別すると、もも肉派とむね肉派に分かれます。
揚げたてがおいしいのはもちろん、冷めてもおいしく食べられるのが大分のとり天とからあげ。ぜひ現地で人気のとり天・からあげをご賞味あれ!
九州は、鶏肉を使った郷土料理や名物が多く、大分県のお隣・宮崎県のチキン南蛮や地鶏の炭火焼、福岡県の水炊き、かしわ飯などが有名。熊本県の天草大王、鹿児島県の薩摩地鶏、宮崎県のみやざき地頭鶏など、各地の地鶏もよく知られています。
関西エリアから「さんふらわあ」に乗って、九州名物の鶏肉料理を食べつくす旅行プランを立ててみてはいかがでしょうか。
いからし ひろき/ライター
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