もくじ
鹿児島県のグルメといえば、かごしま黒豚、きびなご、さつま揚げ、かき氷の白熊(しろくま)が有名。ですが、それらは鹿児島以外でも食べられます。せっかく鹿児島県に行くのなら、現地でしか食べられないもの、地元の人が食べているものを食べたいと思いませんか?
そこで今回、フェリーの到着地・志布志から無料のライナーバスに乗り、終着地の鹿児島中央駅からほど近い「天文館」という鹿児島一の繁華街で、アポなしグルメ取材を敢行!その様子をまとめました!果たしてどんな穴場グルメが見つかるでしょうか!?
※最新の営業状況については、各店舗・施設ホームページ等にてご確認ください。
天文館グルメ探訪。路地裏の老舗割烹で鹿児島家庭料理を味わう
前日の夕方に大阪を出港した「さんふらわあ さつま」が、鹿児島の志布志港に到着したのは翌午前9時前。船客なら無料で乗れるライナーバスの出発は午前9時30分で、終点のJR鹿児島中央駅に着いたのは、12時少し前でした。
まずは駅前の黒豚とんかつ店「とんかつ川久」で腹ごしらえ(いきなり表通りの定番グルメ、ベタですみません)。
<編集部コメント>
こちらは鹿児島市に本店を持つ老舗の精肉店が営むお店。
いただいてみると、肉質が良くとてもやわらかく、さすが精肉店のとんかつです。ほのかに甘い肉と、オリジナルのタレの相性も抜群!
「とんかつ川久」は人気店ですが、予約なしでも利用可能。鹿児島中央駅前のエリアでアクセス良好の立地なので、ぜひ足を運んでみてください。確実に食べたい方は、電話で予約しましょう。
平日ランチの時間帯だけ食べられる、限定50食の「川久ランチ」はコスパ抜群でおすすめ。お手頃な金額で精肉店のとんかつ定食を味わえる機会はなかなかないので、ぜひ。テイクアウト限定のかつ丼などもあるので、「食事にはまだ早いなぁ…」という方にもピッタリ。
調べてみると、オンラインショップで焼肉やしゃぶしゃぶ用のお肉を買うことができるらしいので、自宅にお取り寄せして家族と味わうのもいいですね。
とんかつ川久
- 電話
- 099-255-5414
- 住所
- 鹿児島県鹿児島市中央町21-13
- 営業時間
- 11:30〜14:30、17:00〜21:30(21:00L.O.)
- 休み
- 火曜
- 料金
- 上黒豚ロースカツ250g 2500円(写真のもの)、上黒豚ヒレカツ200g 2700円、上ロースカツ250g 1600円ほか
その後、軽く駅前を散策し、ホテルに早めのチェックイン。少し仮眠し、近くの銭湯(鹿児島の銭湯はほとんど源泉かけ流しの温泉!)に入ってサッパリした後、午後5時過ぎ、「天文館」エリアへ繰り出しました。
天文館へは、鹿児島中央駅から「鹿児島市電」に乗り、「天文館通」停車場で降りるのが便利です。降りると道を挟んで左右に大きなアーケード街があり、いかにも活気があります。
<編集部コメント>
天文館といえば、鹿児島の観光スポットの1つ。世界自然遺産の屋久島や、沖縄との間に位置する奄美大島と一緒に取り上げられるくらい人気です。ドライブ観光コースに入れて、レンタカーで天文館エリアに行く旅行者もいます。市電の天文館通駅が近くアクセス良好なのも大きな理由でしょう。
アーケード街が気になりますが、今回は地元の人が足を運ぶ穴場グルメを探すのがミッション。アーケード街を離れ、路地へと足を踏み入れました。
さすが鹿児島一の繁華街。立ち飲み店から高級焼肉、しゃぶしゃぶ、スナック、バーまであらゆる業種の店が街のあちこちにひしめきあっています。全国の繁華街を歩いて来ましたが、店の数、種類の豊富さ、活気、どれも一、二を争います。
まだ時間が早いので、ナイトスポットはほとんど閉まっていますが、夜がふけると、ネオンも相当眩しくなるはず……。
さて、ネオンが灯る前に、一軒目を見つけたいところ。路地のさらに奥へと足を進めます。するとそこで見つけたのが、こんな看板。
「魚処たぬき」
鹿児島といえばかごしま黒豚、薩摩地鶏など肉類ですが、海に面していますので、魚もきっと美味しいはず。小体ながら落ち着いた店構えは、料理の質の良さを期待させます。よし、ここにしよう!
<編集部コメント>
鹿児島県はカンパチの生産量も日本一。肉も魚もおいしいのが鹿児島なのです。
ガラリと引き戸を開けて中に入ると、そこはカウンターとテーブルが数席の割烹料理屋さんでした。
店主の嘉手納隆慶さんは、今の店の近くで大きな料理店を40年以上前から経営。“自分のペースでやりたい”と2011年にその店をたたみ、店名はそのまま、今の路地裏に店を構えたといいます。
“魚処”とあるだけに、当然こだわるのは魚。
「鮮度が良ければいいってもんじゃありません。それぞれ食べごろというのがあります。釣れたてより、少し寝かせたほうが美味しい魚も。それを見極めるのが料理人の腕」
その本領は「刺身盛り」で早くも発揮。本マグロ以外、すべて近海ものだそうです。アラ、アオリイカ、イワシは、ほどよく熟成され、旨みが乗っています。特にイワシは、今まで食べたことが無いほど濃厚な味わい。聞けば冷蔵庫で2日も寝かせて熟成させいたのだとか。イワシの刺し身といえば新鮮なまま活造りにするのが当たり前だと思っていたので、目からウロコです。
お酒は鹿児島の芋焼酎を2種類ブレンドし、予め半々の水と混ぜて寝かせておいた、いわゆる「前割り」をぬる燗でいただきました。そのまろやかな味わいといったら、う~ん、甘露!
「お次は焼き物でも試してみますか?」
ちなみにこちらのお店、料理のメニューはありません。どんなものがあるか、どんなものが食べたいか、ご主人と相談しながら決めることになります。
しばらくして出て来たのは、「サワラの味噌焼き」。味噌は西京味噌ではなく、鹿児島の米味噌を使っているそう。ふっくらとした身に箸を入れると、プツッと音を立て、身からたっぷりの脂がほとばしりました。ちょうどお腹の部分。一口食べると、ホクホク、そしてジューシー。白身の淡白さと脂と味噌の甘みが絶妙にマッチします。これは美味しい!ますます前割り焼酎が進みます。
その後は、タケノコや根菜、切り干し大根を煮た「ニガダケのうま煮」や、醤油と塩で味付けを分けた「アオヤギとアゲマキガイ焼き」と続き、そろそろお腹もくちて来たころ、ご主人が「最後にスニでも食べてみますか?」と言いました。
スニとは“酢煮”のことで、鹿児島に古くからある家庭料理。保存のため塩漬けにしたイワシやサバなどを酢で洗って食べたのが始まりだそう。やがて酢で新鮮な魚を酢で煮て食べるようになりましたが、今は作る家も減った、幻の鹿児島家庭料理。そう聞いて食べないわけにはいきません。
「お願いします」
しばらくして出てきたのがこちら。
イワシ、豆腐、たっぷりの青ネギ、そして澄んだスープ。一口すすると、さっぱりとして、だけど深い旨みが口中に広がります。うまい! 思わず感嘆の声が出ました。酢で煮ているので生臭さが一切ありません。
「家庭では野菜をどっさり入れても美味しい。夏バテにもいいですよね」
このさっぱり感、飲んだ後にも最高でしょう。
いやいや、いきなり良い店を見つけてしまいました。
<編集部コメント>
レストランで食べる料理とはまた異なる美味しさの鹿児島家庭料理。大変おすすめなので、天文館まで行く機会があればぜひ、寄ってみてください。
魚処たぬき
- 住所
- 鹿児島県鹿児島市山之口町9-47
- 電話
- 099-224-5666
- 営業時間
- 17:00〜22:30
- 休み
- 日曜
- 料金
- 料理についてはお問い合わせください。日本酒600円、焼酎1合500円、特製ブレンドお湯割り3合800円。予算目安7,000円
鹿児島おでんの人気店でついに角煮と対面!
引き戸をガラリと開けて中に入ると、L字型のカウンターに、テーブル席が4つほどのお店「分家 無邪気」。“ザ板前”という感じの白衣の男性2人がカウンター内から「いらっしゃーい!」と、威勢のいい声で迎えてくれました。
こちらで出しているのは、鹿児島名物の「味噌おでん」。1品100円からで、玉子、コンニャク、豆腐、はんぺんなどおなじみのタネのほか、豚骨、黒豚ロースなどがあるのがいかにも鹿児島らしいですね。そろそろコッテリ豚肉が食べたかったので、玉子、豚骨、牛舌、ミンチボールを頼みました。
ちなみに豚骨(とんこつ)とは、豚の骨付きあばら肉をやわらかく煮たもの。薩摩武士が戦場や狩場で作り始めたといわれ、車座になる鍋を囲んで食べたのだそうです。
そして、出てきたおでんを見てびっくり! 黒い! 真っ黒と言っても過言ではありません。どれだけしょっぱいんだろうと、恐る恐る口に運んでみると……あれ、それほどでもありません。色は継ぎ足し継ぎ足しで煮詰まったものなのでしょう。とんこつダシに黒砂糖と白味噌を合わせた甘めの味付けが、鹿児島の芋焼酎とマッチします。ああ、やっぱりこういうのもいいなぁ。
分家 無邪気
- 住所
- 鹿児島県鹿児島市東千石町11-4
- 電話
- 099-222-4976
- 営業時間
- 17:00〜23:30(23:00 L.O.)
- 休み
- 第2・第4月曜
- 料金
- 味噌おでん盛り合わせ1人前600円〜、おでん単品100円〜、焼き物盛り合わせ600円〜、刺し身盛り合わせ1500円、生ビール500円
鹿児島グルメのシメは天文館一の鹿児島ラーメン!
これだけ食べたのに、やっぱり締めにラーメンが食べたくなるのは日本人の性(さが)なのでしょうか。
立ち寄ったお店の常連さんに聞いた「のり一」へ向かいました。
<編集部コメント>
編集部で調べたところ、ラーメンがおいしいと口コミの評判が良いお店でした。期待がふくらみます。
時間はすでに深夜11時近く。こんな時間なのに(こんな時間だから?)店内はお客さんで一杯です。
まずは食券を購入。「ラーメン」は中と大の2種類で、中は500円、大は550円です。どちらも値段的に大差ないので“大”がお得だと思いましたが、自主規制(最近メタボ著しい)で“中”にしました。でも、ついでに「焼酎」(150円)を頼んでしまうところが飲んべえなんだなあ……でも150円ですよ、150円!
カウンターに通され、食券を渡すと、すぐ出てきたのがお茶とたくあんとコップとちろりに入った焼酎。たくあんは焼酎のつまみでしょうか。渋い、渋すぎる!
焼酎をストレートでちびちびやっていると、おまちかねのラーメンがやってきました。
予想外に澄んだスープ。そしてもやしたっぷりのヘルシーな見た目。チャーシューも豚骨風の茶色ではなく、白磁のような美しい色です。
揚げネギの香りが漂うスープを一口すすってみると、鶏ガラベースのさっぱりした味で、これがさっき食べた味噌おでんと同じ鹿児島の料理か?と思うほど。博多のコッテリとしたとんこつラーメンとも違います。
実はこちらのお店、戦後すぐ台湾人にレシピを学び、昭和49年に開業。だから台湾風のあっさりとした味わいなのです。麺はまっすぐで喉越しがよく、するすると胃袋に落ちていきます。
まさに飲んだ後のシメにピッタリ!
のり一
- 住所
- 鹿児島県鹿児島市山之口町9-3
- 電話
- 099-222-4497
- 営業時間
- 11:30~14:00 、20:00〜翌3:00(金土は〜翌4:00)
- 休み
- 日曜
- 料金
- ラーメン(中)500円、(大)550円、ゆで玉子50円、おにぎり50円、ごはん100円、ビール500円、焼酎150円
一晩で、魚からおでん、豚骨、ラーメンまで、鹿児島のご当地グルメを満喫しました。有名な郷土料理とは違った鹿児島の味。皆さんも「さんふらわあ」で志布志に行ったら、ぜひ鹿児島市内の天文館まで足を延ばしてみてください。
<編集部コメント>
かごしま黒豚、きびなご、さつま揚げ、白熊…挙げればキリがない鹿児島グルメ。屋久島や奄美大島のような観光スポットへ絶景を見に行ったり、アクティビティを体験したりするのも楽しいですが、ご当地グルメを味わうのも旅の醍醐味です。カレーやうなぎなんかもいいなぁ……と、目移りしながらもお店を選ぶのが楽しいですね。
天文館公式サイトのPRページにはイベント情報が掲載されているので、イベントを狙って行くのも面白いでしょう。
いからし ひろき/ライター
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