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穏やかな笑みを浮かべて出迎えてくださったのは、「さんふらわあ ふらの」の機関部全体を指揮する、機関長の橋浦寿幸さん。幼心に誓った夢を叶えて、大型フェリーに乗り、かれこれ36年という大ベテランです。どんなときもお客さまが安心して船旅を楽しめるように安全運航を心掛けているという橋浦さん。「さんふらわあ」の魅力やおすすめのスポット、そしてこだわりなど、フェリーを愛してやまない機関長の日常に迫ります。

自慢はやはりエンジンシステム!
船の魅力を存分に体感してほしい

「私はエンジニアですからね。『さんふらわあ』でどこがおすすめかと聞かれたら、やっぱり最先端の技術を導入したエンジンルームになりますね」

長崎県出身の橋浦さん。幼い頃、家の近くにあったという造船所で大型船の進水式が行われているのを何度も見てきたといいます。その堂々たる姿を見るうち、気が付けば「自分も乗ってみたいなあ」と思うようになっていました。やがて、その想いは現実に。船に興味を抱いた少年時代を経て、21歳の時に大型フェリーに乗船します。以来、海の男として、また船を守るエンジニアとして、この道一筋で突き進んできました。機関長になられて約10年という橋浦さん。「さんふらわあ」のどんなところに魅力を感じているのでしょうか?

「さんふらわあ ふらの」の機関室にて。機関長の橋浦寿幸さん。

「本船はハイブリッドCRP船といって、主機関およびモーター(軸発兼推進用電動機)による操縦システムで運航しています。日本にはまだ数えるほどしかない、画期的なエンジンシステムです。姉妹船である『さんふらわあ さっぽろ』が同型で、関西~九州の航路を走る『さんふらわあ さつま・きりしま』もまた同じタイプの船となっています。入出港の離岸・接岸時はモーターだけで操船していますが、基本的に 船は最初から最後まで主機関によって動くもの。そんな感覚で過ごしてきたので、ハイブリッド船になったときは少し戸惑いましたね」

「さんふらわあ ふらの」の心臓部、エンジンルームにて。どのようにして本船が運航されているのかを熱く語る橋浦機関長。丁寧で分かりやすい説明はさすがとしかいいようがありません!

とはいえ、今ではそのエンジンシステムが何よりも自慢であり、立ち入り禁止区域ではあるものの、そこが「さんふらわあ」一番のおすすめ!だと満面の笑みで語ります。

「触った感触でどんな問題が起きているのかが分かることもあるんです。汚れようが何だろうが、いつも素手で直接、確認をします」

「この30年で船の機関は嬉しくなるほど進化したんです。自ら船を修理できなくなったのは少し寂しくもありますが、とてもコンパクトになったし、何よりも便利になりました。燃料などに関する機械的な部分は、いまだに手作業で対応していますが、その他は概ね手を掛けることがなくなりましたね」

信頼関係は海よりも深く?!
大型フェリーには欠かせない絆

一人では迷子になってしまいそうなほど巨大なエンジンルーム。「さんふらわあ ふらの」は、現在8名の機関士によって管理されています。まさに、少数精鋭。限られた時間内で的確な作業が求められる機関士にとって、重要なのはやはりチームワークではないでしょうか。これだけの大型フェリーをわずかな人数で稼働させるために、橋浦機関長はどのような秘策で皆の舵を取っているのでしょうか。

通常は6~7人が乗船、2人体制で航海当直業務を行っているのだそうです。

「通常は業務の始動前にミーティングをするんですが、本船ではアフターミーティングにしているんです。成功したこと、失敗したことを皆で共有して、次に活かすようにしています。二人一組でボルト1つを取り付けるとして、それを締めるのも、また緩めるのも、どちらの方向にどちらが回すのかといったことを理解していなければケガや事故に繋がってしまう。どんな時も息を合わせて作業をする必要があるんです。始終エンジン音が響いているエンジンルームでは、懐中電灯をチカチカさせたり、軽いジェスチャーでコミュニケーションを取ったりしていますが、不思議なもので自然と相手が何を言っているかが聞こえるようになるんですよ」

機関士の作業を見守りながら、的確な指示を出していく機関長。緊張感のある現場でありながらも、どの機関士さんも表情がとても穏やかなのが印象的でした。

それぞれが次は何をするかを理解して行動しているため、ちょっとした合図で相手の意図を汲み取ることができるのだといいます。絶大な信頼関係があるからこそ成せる技だといっても過言ではありません。ブリッジで指揮をとる船長を補佐し、同時に「さんふらわあ」の心臓部を守ることで、多くのお客さまへ安全な船旅を提供するという、計り知れない緊張感とともに過ごす日々。絶えずにこやかにお話しをしてくださる橋浦機関長ですが、「さんふらわあ」内で心身ともにリラックスできる時間はあるのでしょうか?

「当たり前のことですが、ヘルメットはもちろん、安全保護具は絶対に身に着けています。あとは、懐中電灯。突然のブラックアウトなど、いつでも焦らず対応できるように備えています」

大海原から昇る朝日は格別!
船上で過ごす機関長の“とっておき”

「早朝6時ぐらいですかね。起床して(船内の)自室のカーテンを開けたときに見える朝日が格別なんですよ。純粋に『ああ、綺麗だなあ』と。一番、気持ちのいい瞬間です。ブリッジはもちろん、その他にも絶景を堪能できるスポットはたくさんあるのですが、どこも立ち入り禁止区域で(笑)。お客さまにおすすめするならば、右舷や左舷によっても異なりますが、7階展望デッキが朝日や日没の美しい景色を楽しめるんじゃないかと思います。大海原、太平洋を存分に満喫して、船旅の醍醐味を体感していただきたいですね」。

「普段は客室へ行くことは滅多にありませんからね。お客さまはどんな気持ちで船からの景色を楽しんでいるんだろうって、ときどき不思議に思うことがあるんですよ」

さらに、橋浦機関長が「さんふらわあ」で注目してほしいと話すのが、意外にもペットと一緒に乗船できることなのだそう。これも、「さんふらわあ」ならではの魅力だといいます。

「最近ではペットも家族の一員として大切にされている方も多いですからね。一緒に乗船されている様子を見ると、本当に可愛くてしかたないんだなという気持ちが伝わってきます。こうしたサービスは珍しいと思うので、ペットと一緒に旅へ出掛けるならば、ぜひ「さんふらわあ」を利用していただきたいと思います」。

緊張感のある現場だからこそリフレッシュ
心も身体も日々、万全を目指す

ほっとするのも束の間。取材中も確認の電話が幾度も入りました。ブリッジとの連携は必須。一瞬、緊張感のある表情を浮かべるも「いつものことなんですよ」とすぐに頬を緩める橋浦さん。

海のエンジニアとして、首都圏~北海道航路を悠々と進む「さんふらわあ」を支え続ける橋浦機関長。穏やかな海も、機嫌を損ねた海も、あるがまま受け入れて、向き合うことにしているといいます。その姿は、まさに「さんふらわあ」の守護神といっても過言ではありません。そんな守護神はどのような休日を過ごされているのでしょうか?

「ちょっとした音を聞いただけで船がどんな状態か分かってしまうので休暇の時は何も考えないでおくんです」

「大洗や苫小牧に到着して、ひと通り業務が済んだら、ちょっと下船をして近隣をウォーキングすることにしているんです。ずっと船の上では、運動不足になってしまいますからね。特に目的地は決めず、時間内に船へと戻ってこられる範囲でとにかく歩いています。だから、観光スポットにはあまり詳しくなくて(笑)。強いていうならば、大洗は人気アニメの『ガールズ&パンツァー』発祥地といったところでしょうか。ガルパンのキャラクターでラッピングされた大洗鹿島線(水戸と鹿島を結ぶ鉄道路線)に乗り遅れられない!なんていうお客さまもいて、幅広い年齢層の方が話題にされるのでよほど有名なんだなあと思ったくらいですよ。(笑)」

大洗港フェリーターミナルはもちろん、水戸駅から大洗港へと向かうバス(茨城交通)の車体にもガルパン!ファンは必見です。

休暇中は、努めて船のことは考えないようにしているという機関長。自宅で過ごしているときは、家族のために、ちょっとした大工仕事や水漏れ修理までこなし、リフレッシュされているそうです。オンとオフを意識的に切り替えることで、大海原での日々にも真摯に向き合うことができているのかもしれません。

愛する「さんふらわあ」といつまでも
好きだからこそ突き進む、それが橋浦流

橋浦機関長のおすすめである「さんふらわあ ふらの」の機関室にて。

豪快でまっすぐな志を持った橋浦機関長は、今日も快適な船旅を提供すべく邁進しています。「さんふらわあ」が日々、安全運航を続けている裏側には、こうした熱い想いを持った人々の支えがありました。普段は立ち入り禁止区域であるエンジンルームを案内しながら、まるで少年のように目を輝かせて話します。

「自分が決めた道とはいえ、根っから好きなんでしょうね」

そう嬉しそうに語る、「さんふらわあ」の守護神。すべては、その一言に込められています。いつもまでもワクワクとした気持ちで船と向き合う、好きだからこそできる細かな配慮によって安全運航が実現しています。

今回インタビューした橋浦機関長をはじめ、「さんふらわあ」各船には安全な航行を守る機関長がいます。そんな彼らの仕事ぶりや個性的な人柄を知ったら、「さんふらわあ」での船旅がさらに楽しくなること請け合いです!機関長たちの様子は↓の動画からご覧ください。

お客さまに癒しと感動のひと時を。
船員一同心を込めた船旅をご提供します。
首都圏~北海道航路「さんふらわあ」はこちら
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