もくじ
たくさんのお客さまの笑顔を乗せて大海原を走る「さんふらわあ」。船旅を楽しむお客さまの胃袋を満たすべく、船内レストランで創意工夫を凝らしたお料理を提供している司厨部。同部を統括するのは、着任して2年という女性司厨長・谷口里桂さんです。業務はレストランだけに留まらず、船内の見回りから人導橋の設置、お客さまのサポートまで多岐にわたります。一人で何役もこなす多忙なお仕事を笑顔で乗り切る秘訣とは?軽やかな笑顔が魅力の谷口司厨長にお話を伺いました。
決め手はトラックドライバーのひと言
「私、客船フェリーで働きます!」
「『女の子は一人一部屋だし、冷蔵庫もテレビもついてくるんだぞ!』なんて話を、毎日聞いていたら『そっか、船の仕事はそんなにいいのか!』と思うようになりますよね(笑)」
満面の笑みで話す谷口さん。船でのお仕事をはじめられたきっかけは、なんと長距離トラックのドライバーさんからの推薦だったといいます。
「高校生のときに体調を崩し、長期間入院をすることになったんです。ちょうど就職活動を控えていた頃でした。少しずつ回復して元気になってきたので、身体を動かしがてら病院内にある談話室へ行くようになったんです。そのときに出会った長距離トラックのドライバーさんが、とにかく『船はいいぞ!船はいいぞ!』と力説するんです。それが船の仕事に興味を持つきっかけでした」
偶然にも谷口さんのご両親が船に関するお仕事をされていたこともあり、さっそく相談をすることに。家族の後押しもあり、やがて「さんふらわあ」に乗船することになります。以来、「さんふらわあ」とともに多くのお客さまをサポートしてきました。
アテンダントクルーから司厨長へ
気になる日々のお仕事とは?
「まさか自分が司厨長になるなんて夢にも思っていませんでした」という谷口司厨長。レストラン(調理を含む)を統括する責任者として普段はどんなお仕事をされているのでしょうか。
「お客さまへお食事を提供することはもちろん、メニューの設定や報告なども含め、レストランに関することすべての統括が主な業務です。食事の時間が限られていることもあって、混雑時は通路に長蛇の列ができるほど。少しでも早くご提供できるように、そればかり考えていますね。特に修学旅行生が乗船するときはもう大騒ぎで(笑)。貸し切りとはいえ400名近く乗船されるので、添乗員さんや先生方、さらに生徒さんにも「食器はここに集めてね!」といった声掛けをしながら、全員が時間内でお食事ができるように何回転もさせていきます。乗り切る秘訣は、やっぱりコミュニケーション。ギャレイ(キッチン)は調理長を含めて4名、フロアは3名という人数で対応するためには必要不可欠ですね」
朝食はバイキング形式で、和食も洋食も楽しめるというスタイル。夕食は北海道や茨城県などの特産を使用したセットメニューで、1番人気は和食膳なのだとか。注目は「本日の調理長のおすすめ」メニューで、苫小牧・大洗の各港やその近郊で親しまれている郷土料理などを提供しています。もちろん、ランチタイムに提供されている『さんふらわあキーマカレー』も人気の一品。楽しみに乗船される方もいるのだそうです。こうしたメニューは、月に一度、各船の調理長が集まって決めています。限られた食材で、どれだけお客さまの心と胃袋を満たすことができるか。美味しい料理の陰には、やはり熱い想いがありました。
※コロナウイルス感染拡大防止の為、現在朝食はセットメニューで提供しています。(2020年5月現在)
「おすすめメニュー」などが書かれたレストラン前のメニュー(写真左)。小さなマカロンは船内の限られた食材を使って作った調理長ご自慢のスイーツです(写真右)。
普段は穏やかな海も、ときには機嫌を損ね、揺れが激しくなることもあるそうです。万が一、荒天準備の指示が出た際には、椅子の座面裏に取り付けられた金具と床を繋ぎ、さらに食器類などもすべておろし、大きな揺れなどに備えるのだとか。いつでも快適に食事ができるように配慮がされています。これも大切なお仕事の一つです。
「司厨長としての仕事は、早朝6:00の巡検からはじまります。船内の廊下を歩きながら、客室、お風呂、トイレといった順に忘れ物はないか、不備はないかを警備員さんと見て回ります。巡検を終えるころにはレストランで朝食の準備が始まっているので合流し、終われば昼食の準備にかかります。その間にもお客さまからの質問やご要望を伺ったり、色々な部署や担当への指示出しをしたり。実は、お客さまが乗下船されるときの人導橋の操作も司厨長の仕事なんですよ(笑)。最後は夕食。その日によって異なりますが、片づけを終える21:30ごろが一日の業務終了時刻です」
すべての業務を終えたあとは、船内で一番居心地がよいという自室でゆっくり過ごされているのだとか。翌朝の巡検のことを考慮して早めに就寝するように心掛けてはいるものの、ときにはネットショッピングを楽しんだり、少し長めのお風呂でリラックスしたり、心身ともに疲れを癒す時間も大切にされています。
「いつもの場所」で楽しむ絶景
谷口司厨長おすすめの特等席
とにかく多忙を極める谷口さん。判断力が求められる現場では、常に緊張と責任が伴います。そんな日々の中でちょっぴり心が和む、お気に入りの場所をこっそり教えていただきました。
「お客さまに楽しんでいただける場所としてもおすすめしたいのは、案内所前のスペース(プロムナード)ですね。窓も大きくて外の景色がとてもよく見えるんです。ひょっとすると大浴場よりもいい眺めかもしれません(笑)。大洗と苫小牧を結ぶ航路で金華山の前を通過する際は、陸地に近く、とても見ごたえのあるよい景色が楽しめるんです。レストランの入り口あたりからの眺めもとてもよいので、アテンドをしながら「ああ、いいなぁ!」とつい見入ってしまうほど。私だけの特等席かもしれませんね」
さらに、ほっと一息、気軽に気持ちのリセットができる大切な場所があるという司厨長。それは、なんと女子トイレ!パウダールームも広くて清潔、新造船になったこともあって、とても爽やかな雰囲気なのだとか。女性のお客さまはもちろん、小さなお子さまにも安心して使っていただける空間になっています。
実はとっても肌触りがいいんです!
司厨長も愛用する逸品とは?
大洗や苫小牧を夕方に出航する「さんふらわあ ふらの」、そして「さんふらわあ さっぽろ」では、ちょっとした日用品や雑誌類はもちろん、茨城県や北海道の名産品をはじめ、船内でしか購入することができないオリジナルのお土産が数多く揃っているショップがあります。お客さまと接する機会の多い谷口さん一押しのアイテムはどんなものなのでしょうか。
「レストランでも提供している『さんふらわあキーマカレー』のレトルトパックはもちろんですが、よく目にするのは小さな『さんふらわあ』が球体の中に納まっているストラップですね。サイズも可愛らしいし、リーズナブルでお土産にもいいのではないでしょうか。私個人のおすすめは『さんふらわあ』が描かれた靴下!女性用と男性用で少し色が違っているんです。履き心地もいいし、とっても重宝しています。オリジナルパーカーは肌触りも着心地も納得の一着です。お値段もやはりお手頃なので、ぜひチェックしていただきたいですね」
パーカーや靴下の他に、Tシャツやハーフパンツといった衣類も販売されています。食べ物やメモ帳などといったアイテムをお土産にと考えがちですが、「さんふらわあ」に乗船しているからこそ知っている実用性と女性ならではの目線によって選ばれたオリジナルグッズは購入の価値あり!「さんふらわあ」ならではの逸品です。
船旅を愛するすべてのお客さまのために
「さんふらわあ」と笑顔で航海を続けます
「なんでこんなにも長い間『さんふらわあ』に乗り続けているんだろうって思うこともあるんです。それでもやっぱり離れられないのは、お客さまに『ありがとう!』という言葉を掛けていただけるからかもしれませんね。何度も乗船してくださるお客さまからのお声掛けは本当に嬉しくて、自然と笑顔になっています」
「あまり難しく考えないようにしているんですよ」と照れくさそうに微笑む谷口司厨長ですが、その心はお客さまへの細やかな心遣いと優しさで溢れています。自身も「さんふらわあ」を愛し、楽しみながらお仕事に取り組んでいる姿が多くのお客さまやスタッフの信頼を得ているのかもしれません。すべては「お客さまの笑顔」のために。全力で心を配るスペシャリストたちにとって「ありがとう!」という言葉は大きな原動力となり、「さんふらわあ」クルーの支えとなっています。
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