もくじ

未来のキャプテンを目指して活躍する、女性三等航海士・渡辺真央さん。「とにかく海へ!」そんな思いを胸に目指した航海士。2019年9月に念願のデビューを果たしました。まさに今どきの若者といった印象の渡辺さんですが、海や船に懸ける思いは人一倍熱く、真摯に向き合う姿勢には頭が下がる思いです。そんな、若手のホープ、渡辺さんが日頃の業務や「さんふらわあ」のみどころを教えてくれました。

多忙ながらも充実した日々
三等航海士のお仕事とは?

昨年の春から夏にかけて、ジュニアサードオフィサー(次席三等航海士)として研修の日々を送っていたという渡辺さん。三等航海士として「さんふらわあ」に乗船して、わずか3ヵ月(取材時)ほどだといいます。

「現在はパーゼロ・ゼロヨン(20~0時/0~4時)が私の勤務時間になっています。三等航海士の仕事としては、航路を確認するために海図を準備したり、濃霧で目視できない状況のときにレーダーの前に張り付いて報告したり、とにかく多岐にわたります。どちらかというと事務的なお仕事の方が多いのですが、ときにはオレンジ色の作業着を着て甲板作業を手伝うこともあるんです」

広範囲にわたる業務の数々。
30分に一度は位置入れをするという海図の準備は、キャプテンが作業しやすいように気を配ります。
当直前に雲の動きや天気図をみて気象状況を確認します。

さらに航海士は、本船に乗船する大型トラックの揚げ積み作業にも従事します。

「車両甲板」と呼ばれる、船内の駐車場。
カーフェリーとしても活躍する「さんふらわあ」は、さまざまな荷物を運ぶ大型貨物トラックも輸送しています。

「自身が任されている業務以外のことは、先輩に指導を仰ぎながら実践で知識を蓄えていく感じです。船体に対する理解もまだまだ浅いので、プライベートの時間を使って学ぶこともあります。今は、船の入渠(にゅうきょ/船が定期検査のためにドックに入ること)に向けた事前準備のために、先輩航海士に同行して船体についてなど、いろいろと勉強しています」

多岐にわたる業務内容に加え、幅広い知識を求められる航海士。渡辺さんがこの仕事を選んだ理由はどんなものだったのでしょうか。

海の仕事を選んだ理由はただひとつ
とにかく「海のそばにいたい」から

「私は九州の離島出身で、実家はイカ釣り漁を生業にする漁師なんです。そうした環境もあって、小さい頃から海がそばにあることが当たり前で。友人たちも同様で、とにかく海に関わる仕事がしたい一心でした」

普通科高校を卒業後、水産大学へ進学し航海士を目指しました。男性中心のお仕事だと思われがちなこの仕事。彼女と同じく「海の女神」を目指す女性はどのぐらいいたのでしょうか?

「クラスメイトは全部で40名、その内の15名が女性でした。そこから7名が女性航海士としてデビューしているので、比較的、多い方だったかもしれませんね(笑)」

渡辺さんによると、貨物輸送を専門に扱う内航船では、多くの女性のキャプテンが活躍しているのだとか。彼女と同じ20代という若さで船長を務める方もいるといいます。

担当している業務以外でも、一度乗船すると長旅になるのがこの仕事。陸を離れて船上での仕事を主とする航海士、甲板員やアテンダントは、長期間船内に滞在します。基本的に外航船は約半年、内航船は3ヵ月乗船して1ヵ月休み、渡辺さんの場合は20日乗船して10日休みというサイクルで勤務しているそうです。船上での暮らしで不便に感じることはないのでしょうか?

船上は陸上と変わらない快適さ
“好き”に集中できる環境がある

「私が日常過ごしている居住区域では、施設もしっかりしているので不自由に感じることはありません。女性航海士専用のお風呂もあるんですよ。本船には女性のアテンダントさんも乗船していますし、皆、平等に接していただいていると感じています。むしろ、男性の方が気を遣ってくださっているかもしれません(笑)」

船上での暮らしを心の底から楽しんでいる様子の渡辺さん。慌ただしい日々でも業務に邁進できているのは、何物にも代えられない「美しい海の景色」があるからだといいます。

「ちょうど冬に入る前の10~11月頃、「さんふらわあ」に乗船して、はじめて北海道の海を見たときに海が少し荒れていて、『ああ、北の海って本当に、”津軽海峡・冬景色″みたいな景色なんだ!』って感動してしまって(笑)見慣れていた九州の海とは色がまったく違うので、違う表情に驚かされました。こうした情景を楽しめるのも醍醐味ですし、性格的にも建物の中でずっとパソコンと向き合っているより開放的な環境で働きたいと思っていたので自分には合っているなと思っています」

そんな渡辺さん。乗船時に欠かさずボディクリームやマスクを持参するのだそう。乾燥しがちな居住区域では、男女問わず必須アイテム。体調管理にも気を配り、日々の業務にあたっています。

「さんふらわあ」をもっと楽しむ!
女性目線で考える船旅の面白さ

幼い頃から海に魅了され続けている渡辺さん。とにかく海の景色は美しいという彼女に、「船旅の面白さ」とはどんなものか伺ってみました。

「やっぱり船だからこそ楽しめることを存分に味わうことではないでしょうか。お部屋で談笑したり、くつろいだりはもちろんですが、デッキに出て、その瞬間しか見ることのできない景色や時間を共有したり。お風呂やレストランなどの利用時間も限られますから少し大変かもしれませんが、一人でも、グループでも、それぞれの楽しみ方があると思います」

せっかく非日常の船旅を楽しむのなら、お部屋で過ごすだけではもったいないというもの。渡辺さんの「さんふらわあ」のおすすめスポットとは?

「朝と夜、時刻によって異なる景色を堪能しながら食事ができるレストランですね。クルーも皆、おすすめだと話しています。個人的に好きな景色を見られる時間帯は、ヨン・パチ(午前4~8時)の日の出の時間です!お客さまも甲板に出て眺める方が多くいらっしゃいますね」

目を輝かせ、嬉しそうに話す渡辺さん。言葉にならない海の奥深い魅力が、彼女の原動力となっているように感じます。

私らしく海を駆け抜けたい
いつかは「さんふらわあ」のキャプテンに!

お客さまには、とにかく時間を忘れ、その時々の海の情景を存分に楽しんで欲しいという彼女。「自分なりの船旅」を満喫してもらえるようにと心掛けています。そんな渡辺さんが描く、将来の夢とは?

「今は、三等航海士としての仕事を覚えて、前向きに取り組んでいきたいと思っています。役職が上がれば、自分で指示出しをしていかなければなりません。責任も重大です。それまでに、しっかりと知識や経験を蓄えていきたいです。目指すは、やっぱりキャプテンですね」

寝ても覚めても海、そして、海!大好きな海と過ごす渡辺さんの視線の先には、誰もが「さんふらわあ」の太陽のような明るい笑顔で、格別なフェリーの旅を楽しむ様子が見えているのかもしれせん。

「制服は、私の大切な一張羅なんです!」

ちょっぴりはにかみながら、でもどこか誇らしそうな表情の渡辺さん。「さんふらわあ」で皆さんを格別な船旅へと誘うべく、可愛らしく、そしてたくましい海の女神が皆さんをお待ちしています!

海への熱い想いを胸に仕事に励む航海士ですが、普段はどのように過ごしているのでしょうか?↓の動画では、業務前のプライベート(?)な一面を垣間見ることができます。

お客さまに癒しと感動のひと時を。
船員一同心を込めた船旅をご提供します。
首都圏~北海道航路「さんふらわあ」はこちら
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