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2つの巨大なディーゼルエンジンと電気モーターの動力で航行する「さんふらわあ きりしま」。乗船客が船内で快適に過ごせるのは、機関部の船員が点検や整備を徹底して行っているからにほかなりません。 今回は、「さんふらわあ きりしま」の機関長・山田さんに、日々の業務や船旅の楽しみ方などを伺いました。普段見られない、エンジンのレアな写真もご覧ください。

新技術満載のハイブリッド・エンジン。仕組みを理解し、安全を守る

「ほかのみんなは、船が好きとか、海へのあこがれとか、理由があって船の仕事に就いたんだと思うけど、私は特に船への思い入れもなく、たまたま船の学校に入ったから…」と、照れた表情で語ってくださった山田機関長。しかし、話を伺っていくうちに、船に対する情熱やお客さまに対する想いがひしひしと伝わってきました。

通常、乗船する機関部員の定員は6名。限られた人数で、13,659トン、全長192メートルにもおよぶ大きさの船のエンジンや発電機、電気系統などの点検・整備が行われており、山田さんには機関部の長として、部員の管理・監督や適切な判断・指示が求められます。
「2018年に就航したこの船の機関は、主機関であるディーゼルエンジンと電気モーターのハイブリッド。新しい技術がたくさん取り入れられていますし、今までになかった船です。以前は、船の動力といえばディーゼルエンジンだけだったので、その仕組みさえ覚えていれば何とかなったんですが、今ではそうはいかない。常に勉強しなくてはいけないので、大変ですわ(笑)」
エンジンの取扱説明書は、両手を広げたくらいの分量になるそう。必要な項目を探し出すだけでもひと苦労ですね。

大きなトラブルを起こさないため、日常の検査・予防を徹底

山田機関長は「さんふらわあ きりしま」の前には、神戸~大分間を航行する「さんふらわあ ごーるど」の機関長を務めていたそうです。
「船によってエンジンの特徴というか“くせ”があります。それを理解するには時間がかかるものです。就航から3年くらいでようやくエンジンが落ち着いてくるような感覚ですね。それまでは、思いもよらないような小さな変化が起こることも。その小さな変化を見過ごしてしまうと大きなトラブルにつながることもありますから、常に注意を払って、異変がないか、調子が悪くなっていないかなどを、毎日細かく確認・判断をしています」

多数の計器が並ぶ機関室。ブリッジ(操舵室)と連携しながら、エンジンの出力調整も行います。

主機関(メインエンジン)は一等機関士の担当。二等機関士は発電機、三等機関士は電気や空調を主に担当しています。各機関士は、それぞれの持ち場を見廻り、温度の変化や音の違いなどに気を配り、異常が発生していないかをチェックしているとのこと。私たちが安心して船旅を楽しめるのは、機関部の皆さんが日々の業務に真摯に向き合っているからなのです。

「さんふらわあ さつま/きりしま」に搭載されているV型12気筒ディーゼルエンジン。
このエンジン1基だけで、およそ8,830kwの出力、馬力(ps)に換算すると約12,000ps(大型トラック約30台分に相当)のパワーを発揮。そのハイパワーなエンジンが2基並んでいます。

取材に伺った日は、月に一度実施されるメインエンジンの内部点検のタイミングでした。巨大なV型12気筒ディーゼルエンジンの気筒内を、潤滑油の汚れや内部に破損などがないかの点検や清掃が行われていました。
「運航中はエンジンが稼働していますから、出港前と入港後にメンテナンスを行います。入港後、次の出港時間までに安全な運航ができるように点検・整備を完了させなければいけないので、港に到着しても船の外に出ることはあまりないんですよ」
エンジンが動いていると、とてつもなく大きなエンジン音がするそう。そのため、運航中にエンジンルームに入る際は、耳栓が必須とのこと。

適切かつこまめなコミュニケーションで、お客さまの“快適さ”を保つ

大きな音の中で作業するため、機関士同士のコミュニケーションがしっかりとれていなければならないと、山田機関長はおっしゃいます。
「まあ、みんな地声が大きくなっちゃうんですけどね(笑)。もし、航行中に何かトラブルが起こってしまうと、お客さまに迷惑をかけることに発展するかもしれません。そうならないよう、小さな問題のうちに解決するには、機関士同士がしっかり情報を共有し合って、状況を的確に把握し、最善の方法で解決しなければならない。だからこそ、コミュニケーションが重要なんです」
「運航中に一番起きてほしくないことは“ブラックアウト”。停電です。海の上で電気が点かない真っ暗な状態になってしまうと、お客さまは不安になります。電気系統のトラブルは特に禁物なので、些細なことにも神経を使いますね」

船内で使用する電気は、4台の発電機でつくられます。

船の中では、陸上と同じように電源が使えます。快適な温度・湿度も保たれていて、とても快適です。見えないところで、山田機関長をはじめ機関部の皆さんが、船内の快適さを守ってくれているんですね。

何もしない、日常から解放された船旅を、安心して満喫してほしい

山田機関長が考える“船旅のおもしろさ・楽しさ”とは何でしょうか?

「飛行機や新幹線などとは違った、ゆったりとした時間の使い方、のんびりした移動と宿泊ができるということじゃないでしょうか。船上から大海原や星空を見れば開放感に包まれます。いつもと違った“非日常”を味わいながら、大浴場で疲れを癒したり、お酒を飲んでくつろいだり、何も考えず、何もしないという、贅沢なひとときをお楽しみいただきたいですね。安心して、快適な船旅にお出かけください」

大半の時間をエンジンルームで過ごすという山田機関長。用があって客室階に行ったときにも、空調は快適か、電球が切れたりしていないかなど、細かなところが気になってしまうとのこと。常に“お客さまファースト”を意識されていることが、インタビュー中に伝わってきました。

大きなトラブルに発展しないよう、小さな問題を解決する。異変や故障がなくても、定期的に点検や部品交換を行って、トラブルを未然に防止する。何かが起きてから整備するのではなく、何もなくても徹底した整備が行われていることで、私たちは「さんふらわあ」での快適な船旅が楽しめるのです。フェリーの整備には、とても高い安全への意識が求められ、それを実践されていることがよくわかるお話でした。

普段入ることのできない機関室の内部や、そこでの仕事は下の動画から見ることができます。快適で安全な船旅を陰で支えてくれる機関長たちの姿を知れば、船旅がさらに楽しくなること必至。ぜひご覧ください!

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