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国立鳥羽商船高等専門学校を卒業後、関西汽船、ダイヤモンドフェリー、ブルーハイウェイライン、そしてフェリーさんふらわあ(2023年10月より商船三井さんふらわあ)と、国内のカーフェリーに乗船し続けてきた髙梨船長。「船長になって6年目(取材時)の、まだ駆け出しです」と謙虚に話される表情からは、根っからの船好きであることが伝わってきます。「さんふらわあ」での船旅の魅力や、太平洋航路ならではのお話などを伺いました。

幼少期に見た『宇宙戦艦ヤマト』で、船の虜に

愛知県のご出身で、港の近くで育った髙梨船長。その環境よりも、船への興味を深くしたのは、テレビアニメの『宇宙戦艦ヤマト』だったそうです。
「保育園の頃に見たのが最初なのですが、それ以来、軍艦や客船、貨物船など船全般が大好きになりました。この船に乗っている若いサードオフィサー(三等航海士)の中には『宇宙戦艦ヤマト』を知らないという人も多くて、ぜひ見てほしいと思っているんですけどね…」
幼い頃に夢見た船の仕事に就き、実際に船長として活躍されているなんて、うらやましい!最初からカーフェリーのお仕事だったそうですね?
「学校を卒業して以来、ずっと一般のお客さまが乗船されるカーフェリーばかりなんです。若い頃に貨物船や外航船に乗ってみてもよかったなという思いもありますが、お客さまを身近に感じられるカーフェリー一筋でここまで来たことは、自分自身の大きな財産であり、誇りでもあります」

甲板員から長い下積みを経て船長へ。今も研鑽は続く

「仕事として初めて船に乗ったのは、学生時代にカーフェリーでアルバイトしたとき。それから就職した会社が、最初は甲板員からスタートする育成方針でしたので、次に甲板手、そして航海士と地道にステップを重ねました。そういう経緯があるので、船長になった今でも、航海を振り返って、次回はさらに低燃費となる航路を検討したり、揺れの少ない、人にも貨物にも優しい操船技術を習得する努力をしたりしますね」
操船していて難しいと感じるところ、気を使うところは、どんなシーンなのでしょう?
「海が荒れているときの航海はもちろんですが、日々の入出港にも気を使います。その時の風向、風速、本船に積載している貨物重量によって船体の沈み具合や姿勢も変わります。それらの変化は操船特性の変化に直結します。さらに、うねりがあれば船体の挙動が安定しません。特に入港操船では船を横移動させるスラスターという装置を操って着岸しますが、緊張感と集中力、それに今までの経験に基づく予測が全てといってもいいでしょう。着岸したらすぐに航跡データを見て、改善を加えるようにしています。予習と復習です」
乗客の皆さんが入港の様子をデッキから眺めていますが、船長のたゆまぬ努力があるからこそ、スムーズな着岸ができるんですね!
下の動画では、普段見ることのできない快適な船旅の舞台裏に密着しました。着岸作業で緊迫感の漂う操舵室内部。船長、操舵手(甲板手)、航海士の緊密な連携は必見です!

実は、上りと下りで航行ルートが違う!

大阪~志布志を結ぶ「さんふらわあ きりしま」は、太平洋上の航路を走るので、瀬戸内海を通る航路とは違った注意が必要と髙梨船長はおっしゃいます。
「太平洋上は、うねりや時化(しけ)など気象と海象による影響を受けやすいので、風やうねりの方向などをこまめに確認し、その変化を敏感に察知しなければなりません。特に不規則な波が起きている場合には、確率的に1,000回に1回は、予想値の波より2倍の大きさの波が来ることもあるので要注意です」

ブリッジから出て船長室にいるときでも、常に船の様子に目を光らせているといいます。
「船長室には、ブリッジと同じ計器があり、気象・海象状況から船のプロペラの回転数まで確認できるんです。安全運航のため、何かあればいつでもすぐにブリッジに戻れるように待機しています」

船長室にも計器がずらり。

さらに、海流も計算して航路をとるため、上りと下りでコース取りが異なるとのこと。
「黒潮の影響を受けるため、上り下りで航行時間に1時間の差が出ます。最短コースを取るのではなく、その日の潮の流れを読んで、潮目に乗る・外すといった航路を計画します。志布志から大阪に向かう上りは、黒潮の流れを捕まえれば、船の燃費削減にもつながりますし、逆に下りでは四国側に寄って黒潮の反流影響を外します。航海後、船長室で航跡図を確認すれば、どの辺りで何があったのかを判断でき、次の航海に活かせます」

下りは、四国に近いルートを通ることで潮目を外れ、遠回りながら減速を防いでいます。

満天の星空の下で、ロマンティックな船旅を

「さんふらわあ きりしま」の中で、髙梨船長がお客さまにおすすめしたい場所はどこでしょう?

「この船のデッキ両舷には、弧を描くように少し出っ張った部分があります。そこからは、私がいるブリッジの端が見えますし、着岸時の船の動きもよくわかります。航行中にそこから下を覗けば、船からそのまま海が見えます。夜、眼下には深い紺色の海面、見上げればきらめく星空…ロマンティックな気分になれますよ」
まさに銀河を渡る『宇宙戦艦ヤマト』の世界観ですね!

「飛行機や新幹線などの交通機関とは違って、移動中に座席に縛られることなく自由に動けるのがフェリーのメリットです。天候次第ですが、太平洋の夜空では信じられない満天の星が待っています。見える星の数がまるで違います。条件がよければ天の川が見える日もあります。単なる移動手段としてではなく、非日常の船旅を楽しんでいただきたいですね」

「何もない海の上で、無数に瞬く星たちを眺めれば、日頃悩んでいることが小さく思えてきますよ」と話す高梨船長の笑顔には、イスカンダルを目指して宇宙を航行するヤマトに憧れる少年の面影が残っているようでした。

乗船している多くのお客さまと船員の命を預かる船長。快適で安全な航海の全責任を負うその仕事に密着しました。束の間の休息シーンもお見逃しなく。

お客さまに癒しと感動のひと時を。
船員一同心を込めた船旅をご提供します。
関西~九州航路「さんふらわあ」はこちら
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