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前回の虎杖浜温泉 ホテルいずみさんで宿泊した翌日、最寄り駅の登別駅から特急「スーパー北斗」で森駅に移動した。

第3回 濁川温泉 新栄館(北海道・森町)1

登別駅前には登別温泉の名所、地獄谷の使者でもある鬼の巨大モニュメントが鎮座。

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登別駅からスーパー北斗で内浦湾に沿って走る。函館本線のハイライトのひとつでもあります。

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約1時間40分で森駅に到着。森駅のある茅部郡森町(もりまち)は南北海道の内浦湾と秀峰駒ケ岳の周囲に位置し、農業、漁業及び水産加工業が主な産業で、あの北海道を代表する駅弁「いかめし」はこの森町が発祥の地なのです。

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そんな森駅から北西約16km、狗神岳(いぬがみだけ)を源に内浦湾へと注ぐ濁川(にごりかわ)の上流にある濁川温泉が次の目的地であります。豊かな田園風景が広がる温泉地は太古の火山噴火により形成されたカルデラ盆地で、周辺どこを掘っても温泉が湧くと言われるほどの地熱資源の宝庫でもあります。

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開湯が江戸後期とされる濁川温泉は、水田風景の中に宿が2~300m間隔で点在する。その中のひとつ、明治36年開業の新栄館さんは農家を兼業する湯宿。正面の色あせた赤いトタン屋根が大正、昭和と増築を繰り返した本館。右の白塗りの建物が宿泊棟でもある新館。

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部屋に案内され、先ずはチンカチンカに冷えたルービーを注文。森駅前の柴田商店で購入した「いかめし」にかぶりつく。手のひらサイズの小さな箱に入ったかわいいイカちゃんたち。プックリと甘辛く炊いたスルメイカの中にモッチリお米がマリアージュ。無類のイカ好きは至福のひとときを過ごす。

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新栄館さんの浴場へは新館の宿泊棟から繋がった本館の廊下を進んだ先の浴舎にある。「ひなび」という出汁が染み出した本館の廊下、絵になります。
廊下の途中にかけられたレトロな温泉協会のプレート。期待できるやつですね。

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混浴の湯殿は3つのコンクリート造りの湯壺が2対1のフォーメーションで並ぶ。経年劣化による寂れが絶妙な空間にシビレます。近代感が皆無で昔ながらの湯治場風情が未だバリバリなんです。3つの湯壺にはうっすら黄褐色の湯が張り、湯壺の縁や床はキャメルカラーの析出物がフルコーティング、源泉成分の濃さが一目瞭然。黒いホースが入った手前の湯壺は湯口が2口もあるのでかなり熱く、奥の2つは適温とややぬるめといった感じ。滑らかな肌触りの湯は仄かにアスファルトのような油臭と軽い塩味を感じる。

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湯口は湯殿奥の壁穴から60℃ほどのアチチな源泉を引き、壁沿いにつくられた湯路を流れ各湯壺に注がれる。
湯面ではカルシウムなどの成分が早くも結晶化を始めている。

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そして各湯壺の湯尻から床に流れ出る湯は、長年の積み重ねによってできた湯路を通って湯口とは反対の壁穴へ排湯されるシンプルなギミックが施されている。まさに放流式の源泉かけ流しシステム。

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3つの湯尻からの湯が集合し、最後は壁穴へ排出。給・排水管だと管に析出物がこびりつき詰まりの原因になるのでこのシステムが最適だと思われる。
小人になってこの析出物の広大な大地をトレッキングができるのであれば、ここは世界遺産だろうなぁ・・・なんてメルヘンに浸る。

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夕食は新館の畳敷きの広間でいただきます。なんと用意されたお料理の中央には、この日4つ目のいかめしの姿が。宿泊したこの日は僕ひとり。とは言っても新栄館さんは一日2組ほどしか取らないそうです。

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広間でひとり舌鼓を打っていると、ご主人が缶ビール片手に登場。御年87歳、ネルのウエスタンシャツがカッチョイイ親爺さんです。一杯目のビールのあと、お酒を注文すると「うちの家宝です、どれでも好きなので飲んで下さい」と明治時代の九谷のお猪口と透かし絵の入ったお猪口を出してくれました。
底に芸者らしき透かし絵の入ったお猪口。明治時代にこんな技術があったとは驚きです。

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話が弾んでお互いほろ酔いになった頃、親爺さん特製のイカの塩辛と僕も大好きな行者にんにくの醤油漬けを出してくださいました。お酒が進む危険なやつです。宴では宿の湯守の話、近々行う田植えの話、野菜作りの話、さらにはニーチェやホーキングとぶっ飛んだ話まで親爺さんの博識ぶりにはビックリでした。ほかの湯宿では味わえないゴキゲンな宴となりました。

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少し飲み過ぎたグデグデの翌朝、外に出ると親爺さんは翌日の田植えに備えハウスの苗箱に水やりをしていました。田植えが終わるとハウスでトマトなどの野菜を栽培するそうです。

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宿の前にある水田は代掻きも終え明日の田植えの準備万端。

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チェックアウト後、近くのバス停まで車で送ってもらう際、親爺さんが濁川の源流、狗神岳が望めるポイントまで連れていってくれました。清濁併せ吞む人柄と、酒を飲むと時おり肩をすぼめて「にひひひっ」と笑うお茶目な親爺さん、ありがとうございました。いつまでもお達者で。道南には半農半湯宿の熱い湯が湧いています。

では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。

濁川温泉 新栄館

所在地
北海道茅部郡森町濁川49
アクセス
電車:JR苫小牧駅より特急北斗で約2時間10分のJR函館本線森駅から函館バス(1日2往復・さんふらわあ夕方便利用で苫小牧西港からバスで苫小牧駅に移動し上記乗り継ぎの場合、森駅17時55分発あり)で約20分中央濁川下車徒歩約10分 
車:苫小牧西港より約2時間50分
電話
01374-7-3007
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