もくじ
旅客のほかに、たくさんの車や貨物を運ぶフェリー「さんふらわあ」。大きな船体はどのようにして海の上を進んでいるのでしょう? 船に関する「なぜ?」「なに?」「どうなっているの?」といった疑問に、「さんふらわあ」が答えるシリーズ第4弾は、「さんふらわあ」を動かす機関についての質問にお答えします。
Q1. あんなに大きい「さんふらわあ」はどんな仕組みで動くの?どんなエンジン??
A. メインエンジンは全長約9mのディーゼルエンジン2基。電気モーターとのハイブリッド推進システムです。
全長199.7m、全幅27.2m、重量13,816トンもある「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」。当然大きなエンジンが必要となり、メインエンジンには巨大なV型14気筒のディーゼルエンジンを2基使用しています。2基合計で最大出力21,000kW、馬力(PS)に換算すると約28,552PS。ちょっと想像ができないくらいのパワーですね。
ちなみに、N700系新幹線(16両編成)の馬力はおよそ23,222PS(電動機定格出力:17,080kw)と言われています。
エンジンの仕組み自体は、自動車のディーゼルエンジンと基本的には同じ。細かく説明すると、シリンダー内に噴射された燃料が燃焼、爆発した力によりピストンを往復運動させ、それを回転運動に変換してシャフトの先に付いたプロペラを回しています。
また、「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」では、2つのメインエンジンそれぞれに加勢モーター(軸発電機兼推進用電動機)が付けられていて、ディーゼルエンジンと電動モーターによる駆動が可能なハイブリッド推進システムが採用されています。
加勢モーターについては、こちらの記事で詳しく図解しています。
Q2. どんなプロペラ(スクリュー)で「さんふらわあ」は進むの?
A. 環境にやさしい燃費効率に優れた、直径約5mの二重反転プロペラを採用しています。
メインエンジンは2基です。その先には翼の枚数が違う2つのプロペラを前後に取り付けてあります。片方のメインエンジンが外軸を用いて船首側のプロペラを、もう片方のメインエンジンが外側軸内部にある内軸を用いて船尾側のプロペラを回します。船首側のプロペラと船尾側のプロペラを逆方向に回転させることで、水流によるムダを低減し、より高い推進力を発生させる仕組みです。少ない燃料で効率的に推進力を得られ、環境にも配慮しています。
「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」のプロペラは直径約5mで、船首側が5翼、船尾側が4翼です。
「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」の大きさを考えると、直径わずか5mほどのプロペラ2枚で動いているなんて、信じられませんね。なお、プロペラの大きさは「Vol.6 さんふらわあの定期検査編 その1」の記事のイラストでイメージできます。
Q3. 着岸する時、船が横に動いていました。「さんふらわあ」って横にも進むの?
A. 船体を横移動させる「サイドスラスター」という装置が設けられています。
通常は海面下にある「サイドスラスター」。船体にトンネルのように横に貫通する穴が開いていて、その中にモーターで駆動する直径約2mの可変ピッチプロペラ(プロペラの羽部分の角度を自由に変えられる機能を持っているプロペラ)が付いています。
船首側を「バウスラスター」、船尾側を「スタンスラスター」と言い、「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」にはそれぞれ2つずつ合計4つあります。離着岸時にスラスターのプロペラを回転させて船体を横方向に動かします。
サイドスラスターは、ほとんどのフェリーについていますが、船によって数が違います。深夜便の「さんふらわあ しれとこ/だいせつ」は、バウスラスターは2つですが、スタンスラスターは1つです。
ちなみに、大型タンカーのように寄港する機会が少ない船にはサイドスラスターが付いておらず、船体を横移動させる際にはタグボートを使用するケースもあります。「さんふらわあ」でも、風が強くてサイドスラスターによる船の横移動が難しい場合には、タグボートに離着岸を助けてもらうこともあります。
バウスラスターは「Vol.7 さんふらわあの定期検査編 その2」の記事のイラストでイメージできます。
Q4. 「さんふらわあ」が進む速さってどのくらい?
A. 航海速力は24ノット、1時間に約44.4Km進みます。
船の速度は「ノット(knot)」という単位で示されます。1ノットは時速にすると1.852Km。この数値は「1海里(かいり)」の長さに相当します。
海里は、地球の緯度から算出された海面上の長さや航海距離などを表す長さの単位です。
大洗港から苫小牧西港の海上距離は約754Km(407海里)ですから、24ノットで進む「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」では17時間ほどかかる計算になります。実際には海流の影響などもあり、大洗港から苫小牧西港へは17時間45分、苫小牧西港から大洗港へは19時間15分となっています。
下の動画では、普段入れないエンジンルームの内部を分かりやすく紹介しています。どんな装置があるのか、どんな人が働いているのか、ぜひチェックしてください。
今回は船を動かす機関について紹介しました。どうやって「さんふらわあ」が海の上を走っているのか、わかっていただけたと思いますが、もうひとつ、「さんふらわあ」を動かしている重要な要素があります。それは、「安全で快適な船旅を楽しんでいただきたい!」という、「さんふらわあ」に関わるスタッフたちの情熱です!
それでは、また次回をお楽しみに!
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