すれ違うさんふらわあ

もくじ

船の「なぜ?」「なに?」「どうして?」にお答えするシリーズの第5弾。今回も船・フェリーに対するギモンに船の専門家がお答えします。

Q1. 「さんふらわあ」って何でできているの?あんなに大きいのに沈まないのはなぜ?

A. 「さんふらわあ」の主な材料は「鉄」です。大きくて重たい船は「浮力」で水に浮いています。

「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」は、全長199.7m、重量は13,816トンもあり、船体の材料には鉄が使われています。
重たい鉄でできた船が沈まず、水に浮くことができる理由は、海水から大きな浮力を受けるためです。船の一部は海中に入って海水を押しのけ、押しのけた海水の重さと同じ重量の物体を上に押し上げる力「浮力」が発生します。

船の内部は鉄のかたまりではなく、たくさんの空間があります。
船の内部は鉄のかたまりではなく、たくさんの空間があります。

お風呂やプールに入った時、水中の体が軽く感じたことがありませんか?水中に入っている体が押しのけた水の重さと同じだけの上向きの力(浮く力)が働きます。
船の大きさが大きくなればなるほど、それだけ浮力も大きくなります。船の重量(重力)と押しのけた水の重さ(浮力)が釣り合うことで、船は浮かぶことができるのです。

大きい船にはその重量と同じ大きな浮力が発生するので水に浮くのです。

Q2. トラックや自動車、人や貨物がたくさん乗ったら、重くなって沈まないの?バランスが取れなくならないの?

A. 積載できる重量は決まっていて、バランスよく浮くように船の中に海水を出し入れして調整しています。

「さんふらわあ」に限らず人や貨物を運ぶ船には、積載できる重量が決まっています。「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」の場合、最大載貨重量は6,964トンです。具体的には、乗船客は590名が乗船でき、車両は大型トラック154台、乗用車146台を積載できます。
車や貨物が乗れば、当然「さんふらわあ」全体の重量が重くなりますが、船底部分の空間はいくつにも小分けされ、海水を取り入れて船の重量やバランスを調整する「バラスト水」を入れる空間もあります。
船には、安定して安全に航行するための喫水位置(船体が水に浮かんだ時の水面の位置=船体が水面下に沈む深さ)が決まっています。「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」では、人や貨物を満載したときの喫水は6.85mとなっており、積載量が少ない場合はバラスト水を注水するなどして喫水を調整します。「さんふらわあ」の場合、太陽マーク下の赤く塗られた部分の一番上が喫水線です。
こちらの記事で喫水表示の決まりを紹介しています。

Q3. 定期的なドックでの検査ってどんなことをしているの?

A. 安全で燃費効率のいい航行ができるよう、摩耗した部品の交換や見えない部分の検査、再塗装などを行います。

「ドック(dock)」とは、船を造ったり、全体的な検査を行ったり、修理などを行うための施設のこと。大人が健康診断で「人間ドックに入る」と言っているのを聞いたことがありませんか?健康に異常がないか体のすみずみまで調べる施設を「人間ドック」と言いますが、これは船を検査するドックから来ています。
「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」は、毎年1回2週間程度の期間、船をドックへ入れて上架(船体を水から上げること)し、船体の検査や修理を行います。
日々の点検・検査では見つけられないような隠れた問題を発見するために、超音波や磁気探傷検査なども実施されます。部品の摩耗や劣化などは計測を行い、次のドック入りまでに限界値を迎えるものは先手を打って交換します。
また、赤く塗られた船底部分は、塗料が剥げたり、海藻やフジツボ、貝類などが付着したり、汚れたりしています。船底をきれいに洗浄してペンキの塗り直しも行います。
ドックでの作業は以下の記事でも紹介しています。
・さんふらわあの定期検査編 その1
・さんふらわあの定期検査編 その2
・さんふらわあの定期検査編 その3
・さんふらわあの定期検査編 その4

Q4. ドックで船体塗り直しに使われるペンキの量ってどのくらい?

A. 参考の値ですが、塗料20kg入りの缶×600缶くらい、約12トンです。

船底の状態や塗る範囲次第ですが、1回のドック入渠(にゅうきょ)で20kg入りの塗料缶を600缶ほど使用します。塗料だけで約12トンにもなる量です。

下塗り塗料や塗料の薄め液なども含めた全体量の合計です。
下塗り塗料や塗料の薄め液なども含めた全体量の合計です。

船体は鉄でできているため、そのままではすぐにさびてしまいます。「さんふらわあ」の船底塗装の場合、鉄の船体に下塗り用のさび止め塗料(ピンク色)を2度塗りして、上塗り用の船底防汚塗料(赤色)を1度塗っています。

鉄の船体に重ね塗りをしています。
鉄の船体に重ね塗りをしています。

船底専用塗料は、表面が滑らかで、水の抵抗を受けにくく、海藻や貝類、フジツボなどの付着も抑える特徴を持っています。また、航行中にどうしても塗装がはがれてしまうことがあるので、はがれても水質に影響のない環境に配慮した成分が用いられています。
ドックに入ると、高圧洗浄で船底に付着した汚れを取り除きます。下塗りの塗装まではげて鉄が出てしまっている部分はサンダー(研磨機)で削ります。そして、下塗り2回、上塗りをして仕上げます。
なお、汚れが付いたり塗装がはがれたりした船底では、水の抵抗が大きくなり速度が落ちるため、燃費効率が悪くなります。環境のためにも、定期的にドックに入り、船底をきれいに塗りなおすことが必要なのです。
ちなみに「さんふらわあ」船体横の太陽マークは、職人さんがスプレーや手塗りで描いています。

Q5. 古くなったフェリーってどうなるの?

A. かつての「さんふらわあ」が、海外で再利用されているケースがあります。

例えば、1998年に造られ、2005年~2017年まで就航していた「さんふらわあ さっぽろ(2代目)」は、2021年現在、韓国の木浦(モッポ)港~済州(チェジュ)港間を結ぶフェリー「クイーンメリー」号として現役で活躍しています。

さんふらわあ さっぽろ(2代目)
2017年まで大洗~苫小牧間を結んでいた「さんふらわあ さっぽろ(2代目)」。現在は韓国で利用されています。

「さんふらわあ」の場合、新造から20年ほど運航した後、アジア諸国やギリシャなどの海外で第二の人生(船生?)を送ることが少なくありません。
以下の記事でも、「さんふらわあ」と名付けられ日本で活躍したフェリーたちが海外へ渡った例をご紹介しています。
・Vol.4 「さんふらわあ」北へ!#2
・Vol.13 虹からひまわりへ#4 海外へ雄飛した白い船たち

船・フェリーにまつわるさまざまな疑問がは解消されましたか?
実際に「さんふらわあ」に乗船するとわかることもたくさんあります。皆さまのご乗船をお待ちしています!!

船の疑問・不思議に
「さんふらわあ」がお答えします!
首都圏~北海道航路「さんふらわあ」はこちら
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