もくじ
お客さまだけでなく、貨物(乗用車や大型トレーラーといった車両やシャーシ(大型トレーラーのヘッドを切り離した荷台部分))も運んでいる「さんふらわあ」。例えば、「さんふらわあ さつま・きりしま」には、乗用車140台、大型トレーラー121台の貨物を積載することができます。 これらたくさんの貨物を、車両甲板の適切な場所に安全に誘導する重要な役割を担っている人たちがいます。今回は、さんふらわあターミナル(大阪)で車両誘導業務責任者を担う太平洋總業サービス株式会社の周藤さんにインタビューを行いました。
どの貨物をどこに積むのか、事前確認と現場での緊密な連絡で的確に
車両誘導に携わるのは、乗船受付業務を含めて陸側で6名、船側の車両甲板で6名の計12名とのこと。では、貨物は車両甲板のどこに積むか決まっているのでしょうか?
「大型トレーラーやシャーシについては、毎朝10時半頃にその日の夕方に何台積むか連絡が入ります。車両甲板のどの位置にどの貨物を積むかが描かれた“積み付けプラン”を基にミーティングを開いて、事前確認を行います。貨物数が多ければ配置人数を調整することもあります」
「トレーラーやシャーシは乗用車に比べて重量がありますから、船のバランスを取るためにも、指定された位置に積載する必要があります。また、冷蔵・冷凍を要す貨物は、温度管理ができるよう、電源の近くに積まなければなりません。船内の航海士とトランシーバーで連絡を取り合いながら、偏りのないように誘導しています」
大型トレーラーや災害対応の作業車を運転することも
港での車両誘導のほか、担当されているのはどのような業務なのでしょうか?
「乗用車で乗船される一般のお客さまの乗船券の読み取り、車両甲板での貨物の固定・解除作業です。そのほか、トレーラーヘッドを運転してシャーシを船内に載せることもあります。ですから、大型自動車免許や牽引免許を持っています」
荷役中の「さんふらわあ」を見ていると、車両甲板からトレーラーの頭の部分だけが出てくるのを見かけますが、あれは船内でシャーシを切り離していたんですね。
「フェリーには、無人車両も積載します。車だけを輸送したいというケースもあるんです。例えば、災害時に活躍する高所作業車やキャタピラ車などですね」
2020年夏に九州地区を大雨が襲い大きな被害をもたらしましたが、その際にもたくさんの無人車両が輸送され、現地で災害対応をしたそうです。
航海中に貨物が動かないよう、しっかりラッシング
「大型トレーラーやシャーシは、車輪に車止めをかませて、ラッシングベルトを使って固定します。出港までの時間は限られていますから、船の甲板員と協力しながらすばやくラッシングを行わなければなりません。もしも船の揺れで貨物が動いてしまったら大きな事故になりかねないので、慎重かつ確実に固定します。温度管理が必要な定温コンテナの場合は、すばやく船の電源との接続作業も行います」
もちろん、二輪のバイクや自転車も航行中に倒れたりしないように固定されます。また、入港時にはいち早く車両甲板に入り、ラッシングベルトを外す作業も行っているとのこと。安心して貨物を運んでもらえるのは、周藤さんたちのおかげだったんですね。
出港時は誘導灯を振って「行ってらっしゃい!」
「出港の際、私たちは安全運航と皆さんの船旅が楽しいものになることを祈って、手やライトを振ってお見送りしています」
手を振ってくださっている人たちがいるのに気付いてはいましたが、周藤さんたち車両誘導スタッフをはじめとする皆さんだったんですね!
「私たちの仕事は『安全第一』です。そのうえで、乗船される皆さまには、快適で楽しい船旅を満喫していただきたいと思っています。その思いを込めて、お見送りしているんです」
次回「さんふらわあ」に乗船したときには、ぜひ出港時に見送りしてくださっているスタッフの皆さんを見つけて、手を振り返してみてください。
年末年始も含め1年中休むことなく航行する「さんふらわあ」。「下船されるお客さまから、『いつもありがとう』『また乗るよ』と声をかけられると、やりがいやうれしさを感じます」と話される周藤さんの表情は、「車でも安心して乗船してください」と語りかけるような優しい笑顔でした。
この記事のキーワード