もくじ
季節ごとに様々な姿を見せてくれる北海道の絶景。その美しさに魅入られて北海道に移り住んだのが鉄道写真家・丸山裕司さんです。今回は北海道がもっとも北海道らしさを見せつける厳しい冬、その大地と鉄道が織りなす写真たちをご覧いただきましょう。
しんしんと
北海道の雪は気温が低いのでさらさらと粉雪となる。
この日は風が無いので穏やかに、しんしんと時には強く降り続いていた。
滝川市は北海道のほぼ中央、空知地域に位置し、ひと冬で5m以上も降る豪雪地帯。
風もなく降る雪は美しいものの、降り積もれば除雪作業に追われるなど日常生活に大きな影響を与えるものでもある。
待つ
冬本番、年間累積降雪量が6m以上にもなる大都市札幌では、相当な雪が降る時がある。
この日は朝から雪が降り続け、既に10cm近くも新たに積もった。
そのような中でも、路面電車は走り、それを待つ人が居る。
ホワイトイルミネーションが灯る街
11月下旬から札幌の夜を彩る「さっぽろホワイトイルミネーション」。大通公園を中心に駅前通や南1条通で開催される、冬の一大イベントです。大通公園でのモニュメントやテレビ塔からの眺めが有名で、JR札幌駅から中島公園までの約2km続く駅前通も見事に彩られます。
その駅前通を走る市電は1973年に廃止されたので、1981年に始まったイルミネーションとのコラボを見られない時期が続いていました。しかし2015年のループ化開業により、美しい光の中を走る姿が復活しています。
この夜は雪が降り、イルミネーションだけでなく車のライトに照らされた雪もが輝いているようでした。気温が低く払えば落ちる粉雪が降る北海道では、雪が降っても傘を差す人は少なく、傘を差す人を見かけると、道外の方なのだなと思います。
雪晴れの樺戸連山
連日の雪で大地も山も真っ白に。列車の車輪が見えないほどに積もっています。
よく晴れたこの日は、遠くの山並みもすっきり見えていました。
こんな日の、たっぷりと降り注ぐ日差しを浴びると暖かく感じられ、「今日は暖かいね」なんて会話が交わされます。しかし気温は氷点下。それでも日々の寒さに慣れていると、やはり暖かいのです。
白煙引いて
キーンと氷点下20度を下回るほど厳しく冷えた朝。撮影地は内陸部の盆地にあるので、よく晴れた日の朝は放射冷却により非常に寒くなります。いわゆる「バナナで釘が打てる」寒さです。
吐く息が白くなるように、ディーゼルエンジンで動く特急列車は、この寒さで盛大な白煙を立ち昇らせながら加速していきます。その姿はまるで蒸気機関車が石炭を燃やした煙のように見えます。
十勝晴れ
冬型の気圧配置となると、日本海側は連日の雪となりなかなか青空が望めません。一方で太平洋側に位置する十勝地方は西側に続く日高山脈で雪雲が遮られ、雪が少なく晴天の日が続きます。これは「十勝晴れ」と呼ばれ、お酒の名前にもなっています。
訪れたこの日はまさに「十勝晴れ」。澄み切った青空が広がり、遠くの日勝峠などの日高山脈が望める中を、釧路行きの特急おおぞら号が車体を傾けながらカーブを駆けていきました。
大地の縞模様
春が近づく頃、大地に縞模様が描かれるようになります。その正体は田畑に撒かれる「融雪剤」。
少量のカーボンブラックを混合した黒色の粉状炭酸カルシウム(石灰)で、春の農作業に向けて雪解けを早く進めるために散布するのです。この時期になるとスノーモービルやトラクターが、もうもうと煙をあげるように田畑を走り回る姿を見ることができます。
縞模様の大地を見ると、もう春も間近。パッチワークの丘が広がる美瑛にも、あちこちで様々な縞模様が描かれています。
大地が芽吹き始める
半年近く続いた冬も春の雪解けで終わりを迎え、白い大地から黒い大地へと変わります。雪解け水で田畑はぬかるみ、小川の流れも戻ります。日差しだけでなく空気も暖かく感じられます。
そして、雪で踏みつぶされた枯れ草で覆われた大地には、ふきのとうを始めに再び緑が芽吹き始めます。草花で彩られる季節の始まりです。
長く厳しい北海道の冬。景色の全てが白い雪に覆われる、そんな季節だからこそ、人々を惹きつける北海道らしい絶景を見つけることができるかもしれません。
みなさんもぜひ「さんふらわあ」に乗って北海道にお越しください。
丸山裕司(まるやまゆうじ)/鉄道写真家
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