鳥類への影響調査

自然環境保護・回復プロジェクトとして、当社では山階鳥類研究所およびバードライフ・インターナショナル東京の協力を得て、鳥類への影響調査を行っています。以下では10月25日より現地へ渡航して調査活動を行って頂いているバードライフ・インターナショナル東京・上沖正欣特別研究員*より寄せて頂いたコラムを紹介します。当社は、モーリシャス本来の美しい自然や生態系を取り戻すために、環境回復支援への貢献を続けていきます。

【鳥類への影響調査】

バードライフ・インターナショナル東京
特別研究員 上沖正欣

モーリシャスで一番有名な鳥は「不思議の国アリス」や「ポケモン」に登場するドードーです。土産物店にはドードー柄のTシャツや置物がずらりと並んでいます。しかし、ドードーは入植者による乱獲や森林伐採などにより300年ほど前に絶滅してしまいました。

木彫りのドードー
島内全域に見られる広大なサトウキビ畑

現在もリゾート地開発、島の大部分を覆うサトウキビ畑、外来種の侵入によって本来の自然は失われたままとなっています。かつてモーリシャス全土を覆っていた森林は今や20%弱(天然林に至っては僅か約2%)しか残されていません(註1)。その僅かに残された森に、モモイロバト、モーリシャスチョウゲンボウ、モーリシャスベニノジコなどの希少な固有種が生息しており、National Parks and Conservation Service(註2)やThe Mauritian Wildlife Foundation(註3)による手厚い保全活動がおこなわれています。

モモイロバト
モーリシャスベニノジコ
油濁清掃が完了した地点で休息するチュウシャクシギ
座礁地点近くを飛ぶシラオネッタイチョウ

油濁発生当初はこれらの希少種や、沿岸部に生息する水鳥について、油が付着し飛べなくなったり、死んでしまったりするなどの直接的被害が懸念されました。実際に、油漂着直後の8月には、1羽の死んだササゴイが見つかっています。しかし幸いにも、希少種が生息する森林への油の流入はなく、沿岸部においても、地元の方々や清掃業者による迅速な油回収作業がおこなわれたため、その他の直接的被害を受けた鳥は、12月現在まで確認されていません。
一方で、間接的・中長期的な影響については未知数です。汚染地域だけでなく非汚染地域も含め、油濁の清掃・回収が完了した後も継続的なモニタリングをおこなっていく必要があります。絶滅したドードーはもう戻ってきませんが、モーリシャス本来の美しい自然や生態系を取り戻すためには、油の漂着した沿岸部だけでなく、内陸を含めた島全体の環境回復が不可欠であると感じています。

(註1) 参考資料:
* Norder et al. (2017) Assessing temporal couplings in social–ecological island systems: historical deforestation and soil loss on Mauritius (Indian Ocean). Ecology and Society22: 29.

(註2) National Parks and Conservation Service:国立公園の管理、希少種保全などをおこなう政府組織。

(註3) The Mauritian Wildlife Foundation:モーリシャスに生息する希少種保全に取り組むNGO

(*) バードライフ・インターナショナルは1922年に英国で発足した、世界で最も古い歴史を持つ国際環境NGOの一つで、自然資源の持続可能な使用に向けて協力しながら、鳥類とその生息地、世界の生物多様性の保全のため活動しています。(活動紹介動画はこちら

同団体日本法人の特別研究員である上沖正欣氏は、当社自然環境保護・回復プロジェクトの下で現地入りし、山階鳥類研究所の水田拓氏や地元団体と連携して鳥類への影響調査を行っています。(バードライフ・インターナショナル東京

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