モーリシャスで制作された一冊の絵本について

昨年11月、モーリシャスのWAKASHIO油濁事故の影響を受けた海岸前に住んでいる方が「WAKASHIO~OIL SPILL IN PARADISE~(訳:わかしお~楽園の油濁~)」という絵本を制作されました。現地ではホテルや学校などに展示・陳列されており、売上の一部は現地NGO経由、事故の影響を受けた人々の支援に当てられます。
この絵本は英語とフランス語の2か国語で書かれており、分かりやすい文章と絵で、住民の方の気持ちや問いかけが直に伝わってきます。また事故の経緯や現地住民への影響が時系列に説明されています。

絵本の表紙(左)と裏表紙(右)

当社は、この絵本を通して現地における一つの事故の受け止め方を知ることができること、そしてこのような事故を二度と起こさせないとの意識の共有のために100冊を購入し、当社グループ内各社に配布・展示を行っています。
以下では絵本の作者であるスニヴァ・ボニュ氏にインタビューを行い、絵本を制作するに至った経緯や事故とその後の影響を見て感じた思いなどを語ってもらいました。


-  私は誰?(自己紹介)
絵本の著者、スニヴァ・ボニュ氏

私はスニヴァです。ノルウェー出身で、モーリシャスに9年近く住んでいます。

私はモーリシャス人と結婚し、2人の男の子がいます。
私たち家族はWAKASHIOが座礁した隣の村、ポワント・デスニーに住んでいます。
普段、ビーチとラグーンを我が家の裏庭として利用していますが、事故以来毎日WAKASHIOを見てきました。

事故の夜、友人からサンゴ礁にボートがあると聞き、夫はボートで、何が起こっているのかを近くまで見に行きました。
彼はボランティアで、油流出の初日からブーム(*)の設置を手伝っていました。 彼の仕事と海での長い日々を通して、私は絵本を書くのに必要な情報はほとんど手に入れました。

(*) 流出油が広がることを防止するための防除資材。別名オイルフェンス。

-  そして、これはあなたの最初の本ですか?
はい、私にとってこの絵本はまったく新しい方向性になります。
-  なぜ、このストーリーを紙に書き、若い世代を対象とすることが重要だったのでしょうか?
座礁に続くさまざまな出来事を時系列で追っていくことが良い考えだと思いました。
子供はたくさんの疑問を持っていると思うので、何が起こったのか、なぜそうなったのかを説明できるといいなと思いますし、イラスト付きの本が最適な方法だと思います。
-  座礁した船を知った時、あなたはそれについてどう感じましたか?
衝撃的でとても悲しかったです。
まず、この巨大な船が、美しくて健康なサンゴ礁を押しつぶしていることを知りました。
さらに、この船が4,000トンの燃料油を積んでいたことを知ったときは、流出が地域に与える影響が非常に心配になりました。
日が経っても、私が見たところでは、船からの油の除去作業はあまり行われていませんでした。
流出するのではないかと心配していましたが、実際に流出すると悪夢が現実になったような気がしました。
-  この本の内容についてもっと教えてください。
先に述べたように、この絵本はWAKASHIOが座礁した後の出来事を、事実に基づいて年表にしたものです。
各ページには、文章の隣にその内容に関連したイラストが描かれています。
このイラストは、私の友人でもある地元のアーティスト、ヴァレンタイン・モントッキオ氏による水彩画です。
文章は英語とフランス語両方で載せてあります。
-  本を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

ポワント・ディズニーに住んでいる私たちは、WAKASHIO油濁事故の真っ只中にいました。
私たちは、この辺りに住む誰もがそうであるように、直接事故の影響を受けているので、救出作業の成り行きを終始見守ってきました。

WAKASHIOに多くの注目が集まり、残骸が残った後に起こった一連の不幸な出来事。
これらすべてをまとめた本があれば、きっとみんなが欲しがるだろうなと思いました。
300メートル級の船がサンゴ礁に衝突し、油の流出が始まるなんて、そうそうあることではありません。

-  この本に込められたメッセージは何ですか?
この本で伝えたいメッセージは、油流出事故直後にモーリシャスの人々が見せた素晴らしい結束力です。
しかし同時に、政府関係者からの説明がほとんどない中で、出来事を追っていたときの無力感や苛立ちも感じています。
モーリシャスの人々はこの大惨事に深く心を動かされ、何がどのように起こったのかを忘れるつもりはありません。
この本を通して、読者の皆さんが出来事の全体像をより理解してくださることを願っています。
-  支援に乗り出したモーリシャス人の印象は?
みんなが一丸となって助けてくれたことに驚きました。
必要とあらば、躊躇なく油の中に飛び込んでいくし、みんながうまく連携して物事を進めていきました。
-  今後、二度とこのような災害が起こさないためには、何をすべきだとお考えですか?
まず第一に、あの船は絶対に座礁すべきではありませんでした。
レーダーに映るはずだからです。
ですから、私たちに迫る脅威を認識し、それを防ぐために行動できる、より優れた資格や訓練を受けた沿岸警備隊を持つことが優先されるべきだと思います。
-  ばら積み船の傭船社である商船三井について、どのようにお知りになりましたか?
正直なところ、私は商船三井のような海運会社についてはあまり詳しくありません。WAKASHIOが座礁するまでは、まったく知らなかったのです。山下悟郎さんとの出会いは、ポワン・ジェロムのコミュニティ・マーケットでした。
そこで自分の本を売っていましたところ、山下さんが声をかけてくれて、自己紹介と会社「MOL (商船三井)」を紹介してくれました。

事故は、モーリシャスの美しい自然環境と人々の暮らしに重大な影響をもたらしました。
当社は、グループ従業員全体で認識を共有し、今後もグループ一丸となってモーリシャスの人々に寄り添い、中長期的な自然環境回復及び社会貢献活動に邁進します。

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