世界のエネルギー源ともいえる原油や、
ガソリンなどの石油精製品、
あるいは化学品などの
液体貨物を輸送するのがタンカーです。
タンカーはもちろん
石油を輸送するための船ではありますが、
船の中は複数のタンクで構成されているため、
一時的な「洋上の石油貯蔵設備」として
利用されることもあります。
貨物の特性に合わせた
専門性の高い
オペレーション
タンカーといえば、石油を運ぶオイルタンカーがあります。中でも大型なのが、経済や暮らしをエネルギー面から支える原油を運ぶ原油タンカーです。また、生活に欠かせないガソリン、ナフサ(粗製ガソリン)、灯油、軽油などの石油製品(プロダクト)や、メタノール、ベンゼン・トルエン・アルコール類などの液体化学製品を運ぶのもタンカーの役割です。それぞれ、プロダクトタンカー、ケミカルタンカーと呼ばれます。
また、プロパンやブタンなどの石油ガスを液化した液化石油ガス(Liquified Petroleum Gas =LPG)を運ぶタンカーもあります。LPGタンカーの中にはLPGだけでなく、化学繊維や肥料の原料となるアンモニアを輸送できるタイプもあります。
-
VLCC
-
原油タンクとタンカー
原油と一言で言っても産油場所によって性状などが異なります。そのため、数種類の原油を積み分けられるように、通常は縦2-3つの区画に仕切られたタンク状の船倉(カーゴタンク)を持ち、さらにそれらは横方向に数区画に分割されています。揚げ荷役は、陸から離れた水深の深い場所に設けた基地(シーバース)から、船のパイプと基地のパイプを接続して行うのが一般的です。
-
原油タンカー
私たちの生活を支える石油製品、その原料となる原油は言うまでもなく重要なエネルギーです。原油輸送の効率化のため、タンカーは大型化し、1960年代に初めてVLCC(Very Large Crude oil Carrier)が誕生、その他にも世界の需要に合わせたサイズ別の種類があり、安定供給に貢献しています。
標準的な載貨重量トン | LOA | |
---|---|---|
VLOC(Very Large Ore Carrier) | 200,000〜320,000 | 約333〜339.50m |
スエズマックス タンカー |
140,000〜150,000 | 約274.30m |
アフラマックス タンカー |
80,000〜120,000 | 約245.50〜259.97m |
ケミカルタンカー
-
プロダクトタンカー(LRI型)
-
ケミカルタンカー
-
プロダクトタンカーとケミカルタンカーは、基本的な船体構造や荷役方法は原油タンカーと同じですが、多種類の貨物を積み合わせられるように、タンク数を多くしている船もあります。また、パイプラインやカーゴポンプもタンクごとに独立させ、個々の石油精製品や化学品が混ざらないように配慮しています。
貨物の特性から原油に比べてタンクやパイプが腐食しやすいので、タンクにステンレスなどの腐食に強い材料を用いたり、特殊な塗装をタンク内部やパイプに施したりなどの工夫がなされています。
標準的な 載貨重量トン |
LOA | |
---|---|---|
MR型(Medium Range) | 25,000〜60,000 | 約160〜183m |
LRⅠ型(Large Range 1) | 55,000〜80,000 | 約228m |
LRⅡ型(Large Range 2) | 80,000〜160,000 | 約245m |
-
LPGタンカー
LPGタンカー石油ガスの長距離輸送には、主に大型LPGタンカー(Very Large Gas Carrier=VLGC)が使われています。VLGCを含むLPGタンカーは、貨物を冷却して液化していますが、プロパンとブタンの沸点はそれぞれマイナス42℃・マイナス0.5℃ですので、貨物を積載するタンクには低温に耐えうる特殊な材質の鋼材が用いられています。また、貨物の温度を常に沸点以下にするための再液化装置という特別な設備も備えています。
そのほかにも、低温ではなく貨物を加圧して液化するLPGタンカーもありますが、主として内航船や小型船で採用されています。また、最近のVLGC新造船は、全てLPGを燃料として使用できる二元燃料エンジンを搭載しており、CO2やSOx、PMなどの削減を実現しています。
燃料とする主機関を搭載した
「メタノールタンカー」
アルコールの一種でホルマリンの原料やアルコールランプの燃料などとして使用されるメタノールを専門に輸送するケミカルタンカーが「メタノールタンカー」です。商船三井はメタノールと重油を燃料とするメタノール2元燃料船を2016年から保有しています。2023年時点では、世界で就航しているメタノール2元燃料船25隻のうち5隻を商船三井が運航しています。
メタノールは、舶用燃料として使用した場合、通常の重油を燃料とする機関と比べて二酸化炭素(CO2)排出量を最大15%削減、窒素酸化物(NOx)排出量を最大80%削減することができます。また、硫黄分を含まないことから、硫黄酸化物(SOx)や、粒子状物質(PM)の排出も大幅に削減することができます。また、非化石原料由来のメタノールを活用すれば、排出されるGHG排出量を更に削減することが可能です。
商船三井は2023年2月、バイオメタノール燃料を活用することで18日間の大西洋航海中のGHG排出総量を、燃料の製造から消費までのライフサイクルベースでネットゼロとすること※に世界で初めて成功しました。
※燃料の製造プロセスも考慮して、ライフサイクルベースで温室効果ガス(GHG)排出総量が実質的にゼロであることを指す。
船体にPOWERED BY METHANOLと表した、メタノールと重油の2元燃料に対応可能なメタノールタンカー