エネルギー輸送
 世界のエネルギー源ともいえる原油や、ガソリンなどの石油精製品、あるいは化学品などの液体貨物を輸送するのがタンカーです。
 また、近年環境にやさしいクリーンエネルギーとして需要が増加している天然ガスは、液化して魔法瓶のようなタンクを持つLNG船で輸送します。液体を入れるタンクを持つ船=タンカーには、運ぶ貨物の特性にあわせた種類とサイズがありますが、共通する特徴は船と陸側のパイプを結合しポンプによる荷役を行うことです。
LNGを輸送する魔法瓶のようなタンカー

 LNG(液化天然ガス=Liquefied Natural Gas)を運ぶタンカーがLNG船です。メタンが主成分のLNGは気体のまま運ぶには膨大な容積が必要ですが、液化することで容積が約600分の1になり、効率的な輸送が可能となります。

構造・特徴
 LNGは沸点がマイナス161.5度と非常に低いため、超低温に適したニッケル鋼、ステンレス鋼、アルミ合金など特殊な材質のタンクや、荷役時の事故を防ぐ緊急遮断装置など、高度な技術が要求される船です。ほぼ沸点に近い状態での輸送となるため、LNG船では輸送中に気化した天然ガスを燃料として使うことのできる蒸気タービンエンジンが多く採用されています。また、タンクの形状にはモス方式(=独立球形タンク方式)やメンブレン方式(=メンブレン(薄膜)と呼ばれる薄いステンレス鋼でタンクが構成される)などがあります。


洋上でエネルギー供給に活躍する船

LNG船やタンカーにプラント設備を搭載して、貨物の貯蔵や、原油・ガスの生産、LNGの再ガス化を行う洋上基地として活用される船もあります。代表的なものがFSRUとFPSOです。

  • FSRU(Floating Storage and Regasification Unit:浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)は、洋上の LNG受入れ基地としてLNG船からLNGを受け入れ、タンクに貯蔵する船です。需要に応じてLNG を再ガス化し、生産した高圧ガスを陸上パイプラインに送り込むことができます。
  • FPSO(Floating Production, Storage and Offloading system:浮体式海洋石油・ガス生産貯 蔵積出設備)は、船上のプラント設備を用いて、海底油田から汲み出された液体から原油とガスを 生産する船です。

貨物の特性にあわせたタンカー

原油や石油・化学製品などを輸送するタンカーには次の特徴があります。


 タンカーといえば、石油を運ぶ「油送船」がまずあげられます。なかでも、日本経済や暮らしをエネルギー面から支える原油を運ぶ「原油タンカー」は、効率的に大量輸送するため、VLCC(Very Large Crude oil Carrier)と呼ばれる20万重量トンから32万重量トン級の大型船が一般的に利用されています。

構造・特徴 
 何種類かの原油を積み分けられるように、通常は縦2-3つの区画に仕切られたタンク状の船倉(カーゴタンク)を持ち、さらにそれらは横方向に数区画に分割されています。
 揚げ荷役は、陸から離れた水深の深い場所に設けた基地(シーバース)から、船のパイプと基地のパイプを接続して行うのが一般的です。



 基本的な船体構造や荷役方法は原油タンカーと同じですが、多種類の貨物を積み合わせるように、タンク数を多くしている船もあります。それに応じてパイプラインやカーゴポンプもタンクごとに独立させ、個々の石油精製品が混ざらないように配慮されています。
 ガソリン、ナフサ(粗製ガソリン)、灯油、軽油などの石油製品(プロダクト)を運ぶのが「プロダクトタンカー」です。原油を精製する設備のない地域などへの輸送に活躍します。さまざまな地域へ必要とされる量を輸送するため、次の3段階のサイズに大別されます。近年需要が高まり大型化が進んでいます。

 プロダクトタンカー サイズ別呼称
  MR型 (ミディアム レンジ) :25,000〜 55,000重量トン
  LRⅠ型 (ラージ レンジ 1) :55,000〜 80,000重量トン
  LRⅡ型 (ラージ レンジ 2) :80,000〜 160,000重量トン

 ベンゼン・トルエン・アルコール類などの液体化学製品を主に運ぶ船が「ケミカルタンカー」です。
 プロダクトタンカーとケミカルタンカーは、貨物の特性から原油に比べてタンクやパイプを腐食しやすいので、タンクにステンレスなどの腐食に強い材料を用いたり、特殊な塗装をタンク内部やパイプに施したりなど工夫されています。



 プロパンやブタンなどを液化した液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas =LPG)を運ぶタンカーです。LPGタンカーの中には繊維や肥料の原料となるアンモニアなどを液化した液化ケミカルガスも輸送できる多目的船もあります。
 液化プロパンと液化ブタンは、沸点がそれぞれマイナス42.2度・マイナス0.5度とLNGよりも高いため、船体構造や材料の条件はLNG船ほど厳しくはなく、小型の内航船も多数あります。加圧液化式・常圧で冷却して液化する冷却式・半冷加圧式がありますが、大型LPGタンカーは冷却式です。



ページの先頭へ