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地球温暖化防止(CO2削減)に向けた技術
遮熱効果による「省エネルギー」と超耐候性による「ライフサイクルコスト削減」
大型船舶に遮熱塗装を施工・効果検証

2008年09月10日

当社技術部・技術研究所は、昨2007年から今年にかけて主要塗料メーカー10社の遮熱塗料の効果を比較検証しました。この検証で最も効果の高かった遮熱塗料を、グループ会社のエムオーエンジニアリング株式会社とともに、大型フェリーの甲板に試験施工し、船室内部の温度上昇抑制並びに冷房機運転電力削減の効果を確認しました。
試験に使用した遮熱塗料は、太陽熱エネルギーの侵入を抑えるものです。室内の温度環境改善や空調効率の改善、CO2排出量の削減のみならず、塗料の超耐候性から長期にわたって遮熱効果を保ち、ライフサイクルコストの低減にも貢献します。陸上建造物、大型橋梁、工場、タンク・プラント、倉庫、車両、列車などでは、すでに利用されていますが、大型船舶に塗装したのは今回が初めてです。

遮熱塗料の特徴並びに効果

1)特徴
太陽光が塗装表面に当たり赤外線が塗膜に吸収されると、振動が発生し熱エネルギーに変わる。この熱エネルギーの進入を、高い日光反射率を持たせた特殊な顔料を使用することで、太陽光線(赤外線)を撥ね返す原理を利用したものが遮熱塗料の特徴。
2)省エネ効果
遮熱塗料は、屋根など直接太陽光が当たる部分に塗装することにより、熱エネルギーの侵入を抑えて建物内部の温度上昇を抑制し、空調機の消費電力の削減や、船内発電機で消費する燃料油の削減を可能にする。
3)超耐候性
今回、大型フェリーで効果検証に使用した遮熱塗料は、フッ素系塗料の超耐候性により、紫外線による劣化に対する塗膜の耐久性に優れている。一般塗料と比較して、塗替周期が15~20年と非常に長く、長期にわたって遮熱効果を保つことが可能で、保全コストの低減にも貢献する。

遮熱塗装検証の内容と効果

検証期間:
2008年6月~8月
実施船舶:
さんふらわあ ごーるど(11,178総トン)
株式会社ダイヤモンドフェリーが、神戸-大分間で運航
検証塗料:
ダイキン工業株式会社・化学事業部製品「ゼッフル遮熱塗料(白色)」
検証方法:
上記船舶甲板800m2(上等客室8室、および乗組員居住区及び船橋の上部)に遮熱塗料(白色)を塗装し、一般塗料を塗装した表面温度と比較した。居住区内温度上昇低減については、一般塗料塗装の姉妹船「さんふらわあ ぱーる」の居住区内温度と比較評価し、測定した数値を基に"遮熱塗料効果シミュレーション(ダイキン工業製・陸上建築物向け効果検証システム)"で評価した。
(添付資料1ご参照)
検証結果:
当研究所が最も効果が高いとして施工した遮熱塗料(白色)と一般塗料(緑色)の甲板塗装面温度の比較では、20℃以上の遮熱効果が確認された。また、"遮熱塗装効果シミュレーション"による外気温度ピーク時における室内温度低減は5.5℃の効果が確認できた。今回の施工で測定した遮熱・室内温度低減効果を基に算出した陸上空調設備における冷房用エネルギー削減量では、47.7%の冷房負荷軽減が確認され、居住区上の甲板800m2の塗装による年間のCO2排出削減量は、8.9トン/年(C重油換算で約2.2トン/年)となることが確認された。"遮熱塗装効果シミュレーション"は、陸上建築物用システムであり、熱吸収率や使用場所の違い(赤道下など気温の高い海域も航行し、空調機稼働率が高い)から、外航船舶における使用においてはシミュレーション結果以上の削減効果が、確実に期待できる。

今後の取り組み

今回の実船検証で、遮熱塗料による冷房機消費エネルギー削減が確認された。今後は、商船三井グループのフェリー・客船、自動車運搬船のカーデッキ温度低減、油送船などの積荷温度上昇抑制を目的とした施工を積極的に推進し、CO2排出量の削減、および超耐候性による塗装メンテナンスコスト削減を推進する。


遮熱・一般塗装甲板温度比較データ