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液化CO2船および洋上浮体式設備の設計基本承認を船級協会から取得
~PETRONAS・SDARIとの共同開発~

2023年06月28日

株式会社商船三井(社長:橋本剛、本社:東京都港区、以下「当社」)は、マレーシア国営エネルギー事業会社Petroliam Nasional Berhad(本社:マレーシア、以下「PETRONAS」)、並びに中国の船舶設計機関Shanghai Merchant Ship Design & Research Institute(本社:中国、以下「SDARI」)と共同開発した液化CO2船(以下「LCO2船」)についてデット・ノルスケ・ベリタス(DNV、本部:オスロ)およびアメリカン・ビューロー・オブ・シッピング(ABS、本部:テキサス)の2船級から、また、同じくPETRONAS、SDARIと共同開発した洋上浮体式設備(Floating Storage and Offloading、以下「FSO」)についてABSから、設計基本承認(Approval in Principle、以下「AiP」)(註1)を取得しました。

授与式は、アジアにおけるネットゼロ実現を目指しエネルギー産業の持続可能な発展を推進する国際会議「エナジー・アジア(Energy Asia)(註2)」の会場となったマレーシアのクアラルンプール・コンベンションセンターにて、6月26日に行われました。

(授与式の様子)

当社は2022年2月PETRONASと覚書を締結し(註3)、アジア大洋州地域におけるCCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)バリューチェーン実現に向けた最適な液化CO2輸送に関する共同検討を行い、また、SDARIと協働し複数のLCO2船とLCO2 FSOのコンセプトデザインを完了させました。FSOとは、洋上で貨物の受入・払出を行う浮体設備で、LCO2 FSOはCCUSバリューチェーンにおいて効率的な手段の一つと考えられています。今回のコンセプトスタディ完了およびAiP取得により、輸送貨物量・距離、洋上の貯留地付近までの直接輸送等、将来の多様な輸送ニーズに柔軟に対応することが可能となります。

当社専務執行役員の塩津伸男は、「PETRONASとSDARIの協力のもと、バリエーション豊富なLCO2船、FSOのAiPを取得できたことを大変嬉しく思います。大型のLCO2船による輸送サービスの開発は、アジア太平洋地域におけるCCUSバリューチェーン実現に不可欠です。今回のAiP取得を通じて、液化CO2輸送事業への取組みを更に加速させ、社会のGHG排出削減に貢献していきます。」と述べました。
PETRONASの副社長兼上流部門CEO Adif Zulkifli氏は、「LCO2船による液化CO2輸送はCCSバリューチェーンにおいて重要な役割を果たします。PETRONASはマレーシアにおけるCCSハブ実現を目指しており、今回のAiP取得を弾みに、脱・低炭素事業の取組みを更に強化させます。」と述べました。
SDARIの副社長 Zhou Zhiyong氏は、「今回、PETRONASと商船三井による革新的なプロジェクトに参加できたことを大変光栄に思います。今回設計したコンセプトデザインを以て、CCS実現に向けた取組みが業界全体として加速することを期待します。」と述べました。

今回取得したAiPを通じてPETRONASとの更なる協業を図り、LCO2船やFSOを含む各種技術の開発に引き続き尽力すると共に、多様なCCUSバリューチェーンを構築し、カーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献していきます。

当社グループは、海運業を中心に様々な社会インフラ事業を展開し、環境保全を始めとした変化する社会のニーズに技術とサービスの進化で挑むことをグループビジョンとしています。本件はグループビジョンに加え、経営計画「BLUE ACTION 2035」で掲げる海洋事業、非海運事業の拡大、「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」での戦略の一つ「グループ総力を挙げた低・脱炭素事業拡大」にも合致する取り組みです。商船三井グループは、人・社会・地球のサステナブルな発展に貢献し、青い海から豊かな未来をひらきます。

今回AiPを取得したLCO2船及びFSO(以下4種について取得)

  船型 用途 AiP発行船級
(1) 87,000m3 LCO2 長距離輸送 DNV
(2) 14,000m3 LCO2 中距離輸送 DNV
(3) 87,000m3 DPS(註4)搭載LCO2 長距離輸送及び洋上での荷役 ABS
(4) 96,000m3 LCO2 FSO CO2の受入・払出を行う洋上浮体設備 ABS

LCO2船イメージ図
洋上での荷役イメージ図 図左: FSO(後ろは圧入設備)、図右:LCO2

(註1) 設計基本承認(Approval in Principle : AiP)とは、認証機関が基本設計を審査し、技術要件や安全性の基準を満足すると承認されたことを示すものです。

(註2) 詳細は以下ホームページをご参照ください。
Energy Asia | 26 - 28 June 2023 (officialenergyasia.com)

(註3) 詳細は2022年2月8日付以下プレスリリースをご参照ください。
PetronasとCCUS向け液化CO2海上輸送事業開発の協力に関する覚書を締結

(註4)DPS(Dynamic Positioning System:自動船位保持装置)とは、風潮流などの外力を自動で計算し、船舶を定点保持や予め設定したルート上を航行させることができ、海上の一点に留まり作業をする海底ケーブル敷設船、洋上風力発電関連特殊船、ならびに海底油田関連のオフショア船などに搭載されるものです。

【PETRONAS社概要】
法人名: Petroliam Nasional Berhad
設立:1974年
本社所在地:マレーシア・クアラルンプール
代表者:Tengku Muhammad Taufik
事業内容:マレーシア国営のエネルギー事業会社。マレーシアを中心に石油資源の保有・管理、石油精製・販売、ガス事業、LNG生産・販売を行う。

【SDARI社概要】
法人名:Shanghai Merchant Ship Design & Research Institute
設立:1964年
本社所在地:中国・上海
代表者:Lyu Zhiyong
事業内容:中国船舶工業集団(CSSC)グループに属する中国最大手の船舶設計会社。多種多様な船種や新技術の開発設計を含めた船舶設計を手掛ける。


商船三井グループが設定した5つのサステナビリティ課題
商船三井グループでは、事業を通じて優先的に取り組むべき社会課題として特定した「サステナビリティ課題」への対応を推進することで、持続可能な社会の実現に貢献します。本件は、5つのサステナビリティ課題の中でも特に「Safety & Value -安全輸送・社会インフラ事業を通じた付加価値の提供-」、「Environment -海洋・地球環境の保全-」、「Innovation -海の技術を進化させるイノベーション-」にあたる取り組みです。