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社外役員による対談(2012年)

榊原 定征
取締役
(東レ株式会社 代表取締役 会長)
伊丹 敬之
監査役
(東京理科大学イノベーション研究科教授同研究科長)
(肩書きは当時のもの)

― 社外役員に就任される前と後で、MOLのイメージは変わりましたか?

榊原:同じ三井グループの会社ということで、一定の予備知識もあって、想定外のサプライズはなかったですね。ただ、改めて認識したのは、経営陣が海上輸送の過去のトレンドや経験を活かして、情報分析をしっかりと行って、船隊整備や事業ポートフォリオの整備をしていることでした。

伊丹:私にはもっと素朴な使用前・使用後のような感触があります。私は1年前に監査役に就任しましたが、それまで海運業を本当に知りませんでした。実は、MOLが世界一の船隊を持っている会社だということも存じませんでした。
榊原さんの感想と同じように、投資意思決定について、リスク、バランス、いろいろなファクターを考慮するときの綿密さが想像以上で、驚かされました。また、この1年間でつくづく感じたことですが、海運業は中国バブルと世界的な投機的なマネーバブルという二重のバブルに見舞われた産業だったということです。2011年度はこの2つのバブルが破裂したようなことが多分あって大変だったのだろうと。3ヵ月に1回、大幅な下方修正を行いましたが、世界経済の構造的な歪みが、海運市況とMOLの業績にこれほどの影響を与えるのかと、大きな歴史のうねりを感じた1年でした。

榊原:繊維産業と海運業は、戦後60年余りの歴史の中で、まさに大きなうねりの影響を受けてきた産業だと思います。その中で繊維産業は、圧倒的な技術格差をつけ、生き抜くための体制を長年かけて築き上げてきました。MOLも同様に、投資に対する非常に慎重な姿勢や財務上のさまざまな戦略で、悪いときでも何とか利益を創出できるような形を築いてきたのではないでしょうか。長い年月をかけて景気変動に対する抵抗力をつけて、厳しい事業環境の影響を最小限に抑えられたのではないかなと私は思っています。

― MOLの社外役員として、どういったポイントを見ていらっしゃるのでしょうか?

榊原:社外取締役は初めてのことでしたので、どのような役割が私に期待されているのか、就任当初によく考えました。私への期待は、一般的な社外取締役としての視点と、企業経営者としての経験にあると思っています。 一般的な社外取締役としては、株主の利益を守るという立場で社外の視点から発言すること。例えば、経営上の意思決定が企業価値向上につながっているか。意思決定プロセスにおいて、社外役員に対して、事前に十分な経営情報が提供されているか。そして、意思決定が株主を代表とするステイクホルダーにきちんと開示されているか。これらがポイントであると考えています。
もう一つの期待は、海運業とは違う製造業の経営者という立場で意見を申し上げることだと考えています。海運業と繊維産業は共に、継続的な体質強化に加え、グローバルな経営戦略が求められると同時に、中長期的で大規模かつ戦略的な設備投資が求められています。しかしその共通する戦略を実施する「手法」は、異なると思うのです。「それは製造業ですとこうですよ」と製造業の視点で申し上げることによって、MOLの経営陣の方々が経営意思決定の質を高めることに貢献できると考えています。

伊丹:MOLの社外役員には金融関係や製造業と、異なる経験を持つ方が多くて、皆さん視点が違う。この違う視点があることがとてもいいことだと感じています。
監査役として意識していることは2つです。1つ目は、企業の経営計画をどう作るのか、ということも監査の対象であるという経営監査の視点。榊原さんも含めて、取締役の方々による経営プロセスが適切に行われているのかを中心的な視点とします、と就任時に宣言して今に至っています。 2つ目は、船隊ポートフォリオ全体としてのリスク把握です。部門ごとの数値を単純に合計するのではなく、常に経営陣は全体感を意識しなければなりません。ビルの上から見下せば、車や人の交通量の全体感がつかめますが、通りを走っている車や歩いている人にはよくわからないでしょう? それに近い感覚で発言することを大切にしています。

― MOLの取締役会に実際に参加されてみて、どんな感想をお持ちですか?

榊原:他社の取締役会と全く違うと思うのは、非常に議論が活発なことです。オープンかつ透明で、いろいろな情報が十分提供されており、監査役の方々も含めて一緒になって議論します。大学教授、弁護士、金融出身の方、各分野の高度な知識を背景とした意見が活発に出されます。取締役と監査役の区別がない位…

伊丹:私が発言し過ぎなんでしょうか?(笑)

榊原:いえ、いえ。もう一つ特筆すべきは、ネガティブ情報も全部出した上で時間をかけて議論をすること。これはすばらしいことだと思います。芦田会長が司会をされますが、結論を急ぐことなく社外役員の意見をできるだけ取り入れようという姿勢をしっかりと示していらっしゃる。伊丹先生を監査役に指名されたのも、その姿勢の表れだと思います。

伊丹:私はいろいろとストレートに、時には辛口なことを言うというのが多分定評の人間だと思いますが、そういう人間を監査役に招いたこと自体が、既にコーポレート・ガバナンスが上手く機能している証拠だと思います。ガバナンスの弱い会社ほどその状態を維持しようと懸命になります。牽制機能の宿命ですが、苦言を呈する監査役なんてそうそう招かれないものです。
社外の意見を積極的に取り入れて議論しますが、提出された議案から大きく離れた結論を導き出す事が常に良い結果に繋がるとは限りません。社内執行部が取締役会に提案なさる議案がその場で覆ってばかりでは、執行の現場も混乱してしまうでしょうから。むしろ、最大の効果は、取締役会での議論がその議案を提案した執行側の頭に残って、実行のプロセスや次の提案のときに、一種見えない影響力を及ぼしていること。そこだと思います。

― MOLには「戦略・VISION討議」があると伺いましたが?

榊原:取締役会で「戦略・VISION討議」が行われているのはMOLの取締役会のひとつの特徴だと思います。重要な中長期的なビジョンや戦略について、取締役と監査役が十分議論・討議しようというもので、私は非常にいいことだと思っています。
「戦略・VISION討議」では、議題に沿った詳細な資料を基に、十分時間をかけて説明されます。その説明に対して、社外役員がそれぞれの専門知識を発揮して意見を申し上げることで、「業界の常識=社会の非常識」とならないような牽制機能が働きます。

伊丹:何か決める訳ではなく拘束力も発生しないのに、長い時間を掛けて取締役会で議論する企業は、私は余り聞いたことはないですね。でも、これは実際にあったことですが、我々社外役員の意見を受けて、事務局側で追加資料を作成したところ、執行サイドの役員の方々にとっても新たな視点が開け、議論が一層深まりました。こうした積み重ねがMOLの経営計画の基礎的部分に反映されていくのだと思います。
この「戦略・VISION討議」のあとに、執行役員も参加する昼食会が開かれますが、ここでさらに自由な雰囲気の中で意見交換できることはとてもいいことだと思います。

― これからMOLにはどのようなチャンスとリスクがあると思いますか?また何を期待されますか?

榊原:世界経済を見ますと、これからも引き続きアジアが世界経済の成長を背負っていくと考えられます。日本の海運業は、そのアジアに拠点を置いた海運業ですから、アジアの成長を取り込める極めて有利な立場にあり、これは大きなチャンスです。
リスクについては、中国がチャンスであると同時に脅威となります。中国の海運業が急速に力をつけてきて、競合するような状況になったとき、どのような競争力を確保できるかということが大事なポイントです。安全運航とか信頼性は、確かに非常に大きな競争力です。ただ、それだけではなく、何かプラスでいくつかの競争力の源泉があるとMOLはもっと強くなると考えています。
繊維産業も中国と苛烈な競争をしていますが、製造業においては世界の中でナンバーワンにならないと正当な利益も得られません。2番目くらいまでは利益がでるかも知れませんが、3番4番となると厳しいです。ですからとにかくコンペティティブ・エッジを常に磨き続けることが必要です。東レの場合は他社に対して圧倒的な技術格差を付けるということであり、そのための研究開発を絶やすことはできません。
MOLにあっても中長期的に競争力を強化するための研究機能を作って、燃費の良い運航方法や運航システム、絶対に負けないサービスなど、絶対にMOLでないとできないコンペティティブ・エッジを磨くことが課題であると思います。

伊丹:榊原さんのおっしゃるとおりアジアに位置していること、そして現在世界一の船隊を持っていることはチャンスですね。海上貨物は岸辺からしか出ませんが、その点、日本や日本近海、アジアには岸が沢山ありますから(笑)。また、確かに中国の海運業は脅威ですが、人件費の点でMOLは外国人船員の比率が高く、直面している労働市場が日本市場に限定されずグローバルであることはポジティブです。グローバルな状況変化に応じて人件費の構造を組み換え可能という点で十分なポテンシャルがあり、魅力の大きい産業と私の目には見えています。
MOLに一番大切なことは、競争上の優位をどこに作るかです。会社全体の基幹になるような何かが必要です。就任後1年で考えたのは、会社全体の運航管理や船隊ポートフォリオマネジメントに科学的手法を導入することです。海運は時にリスクを取る部分も当然必要な産業ですが、勝率を高めるために、いうなれば、「サイエンティフィック・リスクテイカー」になるわけです。
例えば市況の動きを、全社を挙げて真剣に科学的に分析して、法則を見つけ出すのです。荷物がいろいろあるので、これまで経験や勘の領域とされているものですが、この法則化によって、より精度の高い投資判断が可能となるはずです。MOLにとっての研究開発とは、こうした海運業の法則化ではないでしょうか。これはリーディング・カンパニーにしかなし得ないことであり、成功すれば他を圧倒する競争力になるでしょう。

榊原:しかし、最後の最後、コンピューターでは決められない局面もあるでしょう。その時は、経営者がきちんと判断する。最後に決めるのは経営者です。

― MOLの投資家への向き合い方について、どのようにお感じになりますか?

榊原:MOLは、非常に投資家を強く意識しながら経営をしておられると感じます。このアニュアル・レポートでも、経営陣がいろいろな形で登場し、経営戦略や事業戦略を投資家の方に語りかけるように情報発信していて、経営者の顔が見えるように努力して編集しておられる。これは非常に大事です。投資家の方は、やはり経営者の顔や声を非常に気にしておられますからね。それからもう1つ、MOLが株主の方々の信頼を勝ち取っている非常に重要な要素は、重大な海難事故などのネガティブな情報についても、いろいろな形で詳細に開示しているということです。私はこの文化はMOLの貴重な資産だと思いますし、これからもぜひこの姿勢を貫いて一層強化してほしいと思います。

伊丹:しっかりと向き合おうとしているという印象は、取締役会に出ているだけでも感じます。逃げよう、隠そうといったようなことはありません。

― 最後に、MOLの経営陣に対して何かございますか?

伊丹:いろいろな意味でこの1年が大切な年になると感じています。厳しい状況下ですが、正直に正道を歩む経営を行っていけば、事業環境が回復したときに確かな上昇軌道を描いていくと思っています

榊原:経営陣を始めとして、MOLの皆さんはきわめて誠実です。これは本当に貴重な企業文化であると同時に、会社の財産でありセールスポイントだと思います。信頼感を勝ち取る1つのDNAだとも思いますので、ぜひ失わないでほしい。この誠実さを持って、「GEAR UP!MOL」で掲げたテーマにきちんと取り組んでいけば厳しい環境を突破できると思いますので、勇気と自信を持って逆境を乗り切ってほしいと改めて期待しています。

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