エネルギー輸送(LNG船)
天然ガス(Natural Gas)を液化(Liquefy)したLNG(液化天然ガス=Liquefied Natural Gas)を運ぶタンカーがLNG船です。超低温輸送のための特殊な材質のタンク、荷役における事故を防ぐ緊急遮断装置、気化したガスを燃料として使用するタービンエンジンなど、LNG船には多様な技術が駆使されています。

クリーンエネルギーを輸送するLNG船

 天然ガスの輸送は、パイプラインによる陸上輸送から始まりましたが、海外への大量輸送を実現したのがLNG船です。気体のまま運ぶには膨大な容積が必要な天然ガスですが、マイナス161.5度で液化することで容積が約600分の1になり、効率的な輸送が可能になりました。1984年に就航した商船三井初のLNG船「泉州丸」は貨物タンクの容量が125,562m3でしたが、現在では15-17万m3クラスが主流となっています。
 メタンを主成分とする天然ガスは、燃焼時の二酸化炭素(CO2)と窒素酸化物(NOx)の排出量が少なく、硫黄酸化物(SOx)の排出はまったくありません。さらに天然ガスをLNGにする際に、硫化水素や二酸化炭素、水分などを除去できるので、さらにクリーンなエネルギーになります。また、空気より軽いため、万が一漏れても低いところにたまることがなく、自然発火温度も比較的高いので、クリーンであると同時に安全性も高く評価されています。
 LNG船の荷役は、陸上側の設備にパイプを繋いて行います。積み地には、天然ガスを液化するLNG液化基地、揚げ地には、LNGを天然ガスに戻すLNG受入基地があります。

構造・特徴
 LNGは沸点がマイナス161.5度と非常に低いため、貨物タンクには、ニッケル鋼、ステンレス鋼、アルミ合金など超低温に耐えられる材質を採用し、外側は厚い断熱材で包まれています。貨物タンクは、さながら魔法瓶のようですが、外気温度の影響を受けて貨物の一部は、輸送中に自然に気化します。タンク内で気化したガスは、船の推進エネルギーとして利用します。また、荷役中のLNGの流れを止める緊急遮断装置など、万が一に備えた高度な技術も行きわたっています。



 エタンは天然ガス中でメタンの次に多く含まれる成分です。体積当たりの発熱量はメタンの約1.75倍で常温・大気圧下では気体、マイナス90度で液化します。主に重要な基礎化学品であるエチレンの精製原料として利用されています。
 21世紀に入り米国でシェールガスの採掘が盛んになると、その副産物であるエタンの輸出が増加し、エタン輸送船は活躍の場を広げてきました。これまで、エタン輸送船の貨物倉容量は20,000~30,000m3クラスの中型船が主流でしたが、2016年、世界初87,000m3クラスの大型エタン輸送船(VLEC:Very Large Ethane Carrier)が誕生しました。。

構造・特徴 
 エタンは、LNGと同様に液化して輸送します。ただし、メタンを輸送するLNG船とは異なり、2016年まで国際海事機関の規則で気化したガスを船の推進エネルギーとして利用できなかったため、エタン輸送船では気化していくエタンを再液化する装置を備えていることが一般的です。
 タンクの様式は、中型船では加圧式が一般的ですが、商船三井が運航する大型船ではメンブレン方式を採用しています。


魔法瓶のようなLNG船、3つのタンク方式

 超低温のLNGを貯蔵するタンクが最大の特徴のLNG船、タンクの種類はおおよそ3つで、モス方式、メンブレン方式、自立角型タンク式(SPB方式)があります。

モス方式(独立球形タンク方式)
 船体から独立した球形タンクで、個々のタンクが自分自身の構造によって内圧を支えています。他の方式に比べてLNGの蒸発ガスが少なく、 溶接箇所が少ないことから品質管理が容易などの長所があります。また、2014年に球形のタンクを連続カバーで覆う「連続タンクカバー型(通称:さやえんどう型)」も登場しました。



メンブレン方式
 タンクの内部を薄くてしわがあるステンレス鋼「メンブレン」で覆うことで、低温を保ちガスの膨張を吸収する方式です。船倉のスペース効率が高く、甲板上の突起部を最小に抑えられるので、船前方の視界が良いのが特長です。エタン輸送船もこの方式です。



自立角型タンク式(SPB 方式)
 SPB( Self-supporting Prismatic shape IMO type B )と呼ばれる、独立した方形タンクによる様式です。タンクには、アルミ合金あるいはステンレス鋼を使用し、外面には防熱を施しています。球形タンクに比べて船体の形状に収まりやすく甲板上に突き出た構造体がないため、甲板を広く利用できるという優位性があります。


砕氷LNG船 〈ロシア・ヤマルLNGプロジェクト〉

 ロシアのヤマル半島には、ロシアで最大量の天然ガスが埋蔵されています。しかし、ロシア語で「地の果て」という意味を持つヤマルは、モスクワから約2500キロ離れた北極圏の孤立地域であるうえ、一年の大半は氷に覆われ気温は氷点下40度にまで低下します。このヤマル半島からのLNGの大量輸送を実現したのが砕氷LNG船です。
 2018年、商船三井が運航する世界初の砕氷LNG船が竣工しました。船首は水面下の氷を割りやすい特殊な形状「アイス・バウ」とし、甲板上の機器には着氷凍結防止策を施すなど、最大2.1mの厚い氷海を航行可能な仕様で、通年にわたって世界各地へLNGを輸送します。夏季には北極海航路を経由して東アジア向けに運航し、冬季はヨーロッパ経由でLNGを供給します。


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