STORY 03

マングローブ再生・
保全プロジェクト

ブルーカーボンを
気候変動問題の
解決の一歩に

インドネシア南スマトラ州におけるマングローブの再生・保全を通じてCO2の吸収・固定を目指す「ブルーカーボン・プロジェクト」。
喫緊の環境課題である気候変動への対策として、GHGの排出削減に加えて、大気中のCO2を除去して固定するネガティブエミッションが不可欠。マングローブ林に代表されるブルーカーボン生態系を守り増やすことは、その具体策として注目されている

INTERVIEW

エネルギー営業戦略部
カーボン事業チーム

香田 和良 サブチームリーダー

CHAPTER 01
環境問題への取り組みが企業価値を上げる

マングローブ再生・保全プロジェクトとはなんでしょうか?

香田

インドネシア南スマトラ州におけるマングローブの再生・保全を通じてCO2の吸収・固定を目指す「ブルーカーボン・プロジェクト」です。2022年から参画を始めました。ブルーカーボンというのは、マングローブなどの海洋生態系によって隔離・貯留されるCO2由来の炭素のことです。 喫緊の環境課題である気候変動への対策として、GHGの排出削減に加えて、大気中のCO2を除去して固定するネガティブエミッションが不可欠とされています。マングローブ林に代表されるブルーカーボン生態系を守り増やすことは、その具体策として注目されているのです。 当プロジェクトでは、201 3年から同地でマングローブの保全活動を行なってきたYL Forest Co., Ltd(. 以下、YLF社)をパートナーとし、資金面での貢献や、現存するマングローブ林の保全、減少しているエリアへの新規の植林などを行なっていきます。30年間のプロジェクトを通じて、マングローブ林の保全活動により約500万トンのCO2排出抑制、9500haの新規植林により約600万トンのCO2の吸収・固定を目標にしています。

プロジェクトがスタートして約1年経ちますが、現在の状況は?

香田

現地訪問を重ね、試験植林も進めています。将来的にはプロジェクトサイトの一部でマングローブの植林と水産養殖を組み合わせた「シルボフィッシャリー」も導入する予定です。
これは造林(Silviculture)と水産業(Fishery)を組み合わせた造語なのですが、エサや薬品を使わず、マングローブ林からの養分を利用した自然共生型の水産業の仕組みで、現地の方たちの生計のサポートにもなります。

このプロジェクトはどのような将来像を描いて発案されたのですか? また、商船三井が手掛ける意義は何でしょうか?

香田

私が会社の制度を利用して大学院で学んでいた時、気候変動への危機意識を強く持つようになりました。GHG排出の大半が先進国・富裕層による排出であるのに対して、気候変動によるインパクトは発展途上国や貧困層、そして未来を生きる若年層ほど多く表れます。こうした不合理に対し、自分で何か行動を起こせないかと思うようになりました。
そこで、会社が新規ビジネスを社員から募り、1年間専属で事業化の検討をさせてくれる制度を利用して、「ブルーカーボン・プロジェクト」を提案しました。輸送を通じてGHGを多く排出する企業として、環境課題の解決に注力していこうというタイミングだったこともあり、承認を受けることができました。

社会貢献の観点とは別に、企業としてどのようなメリットがある事業だと考えていますか?

香田

まず、当社が掲げている「2050年目標(2050年までにグループ全体でネットゼロ・エミッションを達成する)」のために不可欠となるネガティブエミッションを十分に創出すること自体に大きな意義があります。

加えて、1. 5度目標(パリ協定で掲げられた気温上昇を1. 5度以内に抑えるという目標)を達成するために世の中全体で排出できるCO2量であるカーボンバジェットには限りがあります。ですが、足元からネガティブエミッションを創出していくことで、このバジェットを使い切るまでの期間を延ばすことができます。

そして何よりも、気候変動問題解決のために決定的に重要な2020年代において、規制に先んじて気候変動の問題の解決に向けた具体的な行動をとることで、企業として、環境への取り組みに対する本気度を社会に示していくことができます。

さらに今後は、そうした企業が選ばれる社会になっていくと強く信じています。本プロジェクトを通じて、NOLの企業価値向上に大きく貢献できるのではないかと考えています。

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