AIドリブン変革

基本方針

これまで推進してきた「業務プロセス標準化」および「データ利活用」を深化させるとともに、AIを活用したスピーディーで確度の高い経営・事業判断への転換、業務・人財活用の再設計など、AIドリブンであらゆる業務領域での変革を目指しています。

この方針のもと、経営管理の高度化、全社統合データ基盤の構築、業務プロセスの最適化、最適運航支援の強化など、AI・データ活用を軸とした取り組みを推進しています。


全社統合データ基盤の構築

データに基づく意思決定や高度な分析を実現するためには、社内に分散するデータを統合し、誰もが共通のデータを活用できる基盤を整備することが重要です。当社では、DX推進の中核となる基盤として、全社統合データ基盤「MOL PEARL(PEARL)」を構築しています。

PEARLは、MOLグループ内のデータを統合・可視化し、業務効率化と意思決定の高度化を支えるデータ基盤です。会計、営業、運航、環境・安全、マーケットなど、社内外の多様なデータを集約し、データ活用の基盤としてDXを支えています。

従来、データは個別システムごとに管理されており、定義やコード体系の違いなどから、部門や用途をまたいだ分析には多くの調整や手作業が必要でした。

PEARLでは、データの収集から加工・結合までのデータマネジメントを基盤側で担い、名寄せやマスタ統合を含むデータの整理・ルール化を行うことで、誰もが同じ意味で利用できる共通データを整備しています。これにより、実務における再利用性とデータの信頼性を高めています。

現在PEARLは、経営管理や事業分析、環境・GHG排出量削減対応、各種業務の可視化などにおいて活用されており、取り扱うデータ領域や対象も段階的に拡張されています。

将来的には、PEARLのデータをAIに学習させ、自然言語による問いかけだけで必要な情報の探索や示唆の提示が行える環境の実現を目指しています。人とAIが協働してデータを分析することで、新たなビジネス機会や改善余地の発見につなげ、さらなる価値創造を目指しています。


統合データ基盤(MOL PEARL)

統合データ基盤における進化の取り組みを継続し、扱うデータとデータ活用機能の拡張を実施しています。

成長しつづけるMOL PEARL(データと機能の拡張)

経営・事業の変化に対して、扱うデータとデータ利活用に向けた機能の拡張を継続中

全社統合データ基盤「PEARL(MOL PEARL)」

MOLグループに分散するデータを統合・標準化し、業務効率化と意思決定の高度化を支えるDXの中核基盤

  • データの調達・加工・結合・名寄せを基盤側で実施
  • 部門やシステムに依存しない「共通データ」を提供分析
  • 可視化を誰もが迅速に実行可能
データ分析基盤"MOL PEARL"イメージ図

将来のAI活用イメージ

  • 標準化されたPEARLデータをAIが学習
  • 自然言語での問いかけによる情報探索・示唆提示
  • 人とAIの対話を通じた新たな気づき・価値創出

業務プロセスの最適化

AIやデジタル技術を業務に活用していくためには、その基盤となる業務プロセスを明確に定義し、データが自然に蓄積される仕組みを整えることが不可欠です。「AI-ready」な業務基盤の構築を目指して、当社では、BPM(Business Process Management)を共通メソドロジーとして、Sales & Operations領域およびFinancial & Accounting領域を中心に、業務プロセスの可視化・標準化・継続的改善に取り組んでいます。自律的なAIエージェントが高速に業務を遂行するハイパーオートメーションの時代において、BPMは業務の範囲とルールを定め、オペレーションを支える設計図としての役割を果たします。

その実践として、チャータリング業務および運航業務における業務の流れや判断ポイントをBPMツールで可視化し、SOPs(Standard Operating Procedures)として整理・デジタル化しました。これにより、プロセス詳細の可視化にとどまらず、業務上のボトルネックを特定・解消するための仕組みを構築しています。これらの取り組みは、デジタル技術とビジネスアナリシス手法を組み合わせた先進的なプロセス改革事例として評価され、一般社団法人IIBA日本支部が主催する「ビジネスアナリシス賞2025」において奨励賞を受賞しました。

また、国際的なビジネスアナリシスの考え方を取り入れ、プロセス設計とデジタル活用を一体で推進しています。国内外のIT部門や海外拠点、RPA・AI関連チームと連携しながら、プロセス設計から自動化・高度化、モニタリングまでの一貫した支援体制を構築しています。

これらの取組により、業務の属人性低減や判断プロセスの明確化が進み、改善や自動化の対象を迅速に特定できる共通基盤をグローバルに展開しています。定型業務の削減にとどまらず、安全性や品質の向上、判断業務へのリソース集中を可能にし、将来的なAI活用や高度な分析につながる持続的な業務変革と競争力向上を目指しています。


MOL BPM方法論の概要


経営管理の高度化

急速に変化する経営環境の中で、当社では「BLUE ACTION 2035」の実行に向け、より迅速で的確な経営判断が求められています。こうした課題に対応するため、経営管理の高度化を目的とした「Project VOYAGER」を推進しています。

本プロジェクトでは、経営層が必要とする情報を分かりやすく、タイムリーに把握できる「経営ダッシュボード」の開発に取り組んでいます。これまで、経営判断に必要なデータは社内のさまざまな場所に分散しており、全体像を把握するまでに時間を要するという課題がありました。そのため、各事業部門の協力のもと、事業別の損益や資産状況、キャッシュの動きを一つの画面で確認できる仕組みを構築しました。さらに、各事業の投資計画と将来の資産見通しをあわせて可視化することで、当社グループ全体の財務状況を多角的に捉えることが可能になっています。また、AIを活用して課題整理や要件定義、関連ドキュメント作成を効率化することで、開発プロセス全体のリードタイムを短縮し、より付加価値の高い分析・意思決定支援機能の実装に注力できる体制を構築しています。

これにより、短期的な利益だけでなく、バランスシートやキャッシュフローを重視した持続的な事業経営を目指しています。2025年10月からはシミュレーション機能も追加し、「BLUE ACTION 2035」の進捗確認や戦略検討、個別の投資判断における議論に活用しています。

Project VOYAGERは、経営の「見える化」を通じて、当社の意思決定の質とスピードを高め、将来に向けた成長を支える基盤となる取り組みです。


最適運航支援の強化

船舶の運航においては、安全性を確保しながら燃費効率を高めることが重要です。そのためには、気海象や船舶性能などの情報をもとに、最適な航路や運航条件を判断できる仕組みの整備が不可欠です。

当社は、燃費効率改善によるGHG削減を目指し、米国Sofar Ocean社(ソファー オーシャン)が提供する最適運航支援ツール「Wayfinder(ウェイファインダー)」を当社グループ運航船に導入しています。Wayfinderは、船舶の燃費性能や航行制限海域などの条件に加え、海洋観測データに基づく気海象予測を組み合わせ、AI/データモデルで分析することで、安全性と効率性を両立した最適な航路やエンジン回転数を算出し、各船および陸上の運航担当者に提供します。

このシステムでは、Sofar Ocean社の海洋観測ブイ「Spotter Buoy(スポッター ブイ)」などから収集される観測データを活用しています。波、風、海面水温、気圧などの海洋・気象データをリアルタイムで取得し、衛星データやその他の気象情報と組み合わせることで、従来の衛星データのみを用いた手法と比較して、波高を含む気海象予測の精度を最大50%向上させています*。

* 気象予報の国際組織「欧州中期予報センター」との短期的な波予測比較結果に基づく。

船舶の燃費や航行効率は波の影響を大きく受けるため、波高を含む気海象を高精度に予測できる同社の予測技術は、効率運航の実現において有効な手段となることが期待されています。
当社グループ運航船40隻によるトライアルでは、1航海平均約6%の燃料消費およびGHG排出削減効果を確認しました。トライアル参加船長の80%以上から利便性や気海象予測の精度について高い評価を受けたことを踏まえて本格導入を進めています。2025年12月時点で約330隻が本システムを活用しています。