当社は、これまで低軌道衛星導入による海上通信環境の劇的な改善など、海上のDXに向けたIT基盤強化を推進してきました。IT基盤強化を継続するとともに、AIやデータ活用により海上業務のIT化を加速させ、5つの領域の実現を行うことで、「海上DXによる競争力強化」を目指します。
この方針のもと、船舶運航データの活用、船上業務のデジタル化、船上IT基盤の整備など、海上DXの実現に向けたさまざまな取り組みを進めています。以下では、その主な取り組みを紹介します。
海運業界では、安全な輸送と環境負荷低減の両立がこれまで以上に求められています。当社はこの課題に対応するため、船舶から得られる膨大な運航データを活用するため、船上データ分析統合基盤FOCUS(Fleet Optimal Control Unified System)プロジェクトに取り組んでいます。FOCUSは、実海域を航行する船舶のデータを一元的に可視化・分析し、安全性の向上と効率運航を目指す仕組みです。
FOCUS | サービス | 商船三井(MOL) Solutions
FOCUSは、航海計器・本船機関などから得られる高頻度のセンサーデータや運航レポートを収集し、クラウド上で統合管理しています。当社が長年にわたり培ってきた運航ノウハウを本船の就航解析技術に組み込み、推進性能の把握や燃料消費の分析、機器状態のモニタリングなどを可能にしています。また、本船や船舶管理会社、関係各社など船陸間で同じデータを共有することで、現場と陸上が一体となった運航支援を実現しています。
FOCUSの活用により、船舶の状態変化を早期に把握でき、安全・効率運航の強化につながっています。さらに、船舶性能データに基づいた、最適出力での航海や最適なタイミングでの船体クリーニングによる燃費効率の改善を通じて、CO2排出量削減など環境負荷低減にも貢献しています。データに基づく運航改善を継続的に行うことで、当社はより安全で持続可能な海上輸送の実現を目指しています。
当社は、常に高い安全水準を維持するために船員の業務負荷軽減を重要な経営課題と位置付けています。その中核施策の一つとして取り組んでいるのが、船上業務デジタル化プロジェクト(Routine Task Digitalization:RTD)です。RTDは、船上で日常的に発生する定型業務、特に、陸上向け報告業務を対象に、重複入力や手作業を削減し、効率化を図ることで安全運航に注力できる船内環境を整えることを目的としています。
RTDでは、これまで複数のシステムに分散して入力されていた各種の航海日誌などの報告業務を見直し、共通入力基盤として新たな船上入力システムを構築しています。オンライン・オフライン双方に対応した設計とし、通信環境が限定される船上でも安定した運用を可能にしています。また、既存のレポーティングシステムと連携することで、同一内容の二重入力を回避し、データの整合性向上を図っています。これらの取り組みは、船上IT Grand Designの一環として、関係部門や外部パートナーと連携しながら段階的に進めています。
RTDにより、船員の定型作業にかかる負担軽減が期待され、ヒューマンエラーの抑制や報告品質の向上につながっています。加えて、正確で一貫性のある運航データが陸上に共有されることで、安全管理や運航改善の高度化を支えています。当社はRTDを通じて、船員の働きやすさと安全性を高め、安全で信頼され続ける海上輸送の実現を目指しています。


当社は、船舶の安全運航と業務効率化を支える基盤として、船上ITインフラ、船舶サイバーセキュリティ・船陸間通信の強化に取り組んでいます。船上で活用されるデジタルツールが多様化する中、通信環境やITインフラのばらつき、サイバーリスクへの対応が課題となっていました。これらを解決するため、将来のデジタル化やAI活用も見据えた船上IT基盤の整備と標準化を進めています。
本取り組みでは、新造船を中心に船上ITインフラの標準仕様を策定し、船内ネットワーク、船上サーバー・各種デバイス、衛星通信設備などを体系的に整備しています。設計段階から標準化を行うことで、可用性や拡張性を高め、船種や船舶管理会社を越えた共通運用を可能にしています。
また、船陸間通信については、従来の衛星通信に加え、低軌道衛星通信の導入を進め、通信速度向上や通信遅延の改善を図っています。これにより、船陸間のデータ共有や陸上からの遠隔支援がより円滑になります。
あわせて、船上IT環境におけるサイバーセキュリティ対策を強化し、船内ネットワーク分離や監視体制の整備を通じて、安心してデジタル技術を活用できる環境づくりを進めています。
船上ITインフラ・船陸間通信環境の整備により、船上業務のデジタル化や遠隔支援が進み、安全運航の高度化が期待されています。また、安定した通信環境は船員の業務効率向上や働きやすさの改善にもつながります。セキュリティ対策とあわせて基盤を強化することで、当社は将来にわたって持続可能で信頼性の高い海上輸送を支える土台を構築しています。