商船三井グループは、お客さまのサプライチェーンの一端を担う企業グループとしての社会的責任を「商船三井グループ調達基本方針」として明文化しています。持続可能な社会の実現への貢献を念頭に、取引先の皆さまのご理解、ご協力を得ながら、法令・社会規範の遵守、環境・資源の保全、人権の尊重と安全性追求に配慮した、公正で公平な調達活動を推進します。
なお、本方針は2012年に策定、2022年に改定を実施し、取締役会の承認を得ています。
商船三井グループでは、次の基本方針に則って商品・サービスの調達を行います。
上記方針を取引先の皆さまにもご理解、ご協力いただくよう信頼関係の構築に努め、共に持続可能な社会の実現に貢献することを目指します。
2012年3月制定
2022年3月改定
グローバルに事業を展開する当社グループがサプライチェーンの透明性・持続可能性をさらに高めるためには、取引先の皆さまのご協力が不可欠であると考えています。2021年度、取引先の皆さまにご理解・ご協力いただきたい事項をまとめたものとして「商船三井グループ 取引先調達ガイドライン」を策定しました。今後は重要なビジネスパートナーである取引先の皆さまに、本ガイドラインの趣旨をご理解いただけるよう普及・浸透活動に努めてまいります。
取引先の皆さまにおかれましては、本ガイドラインに定める事項を推進いただくとともに、皆さまの取引先への展開も含めた持続可能な調達活動の推進をお願い申し上げます。
なお、当社の取引慣行・商慣行によって、取引先の皆様の「当社グループ調達基本方針/取引先調達ガイドライン」遵守が妨げられないよう、親事業者・下請事業者間での発注方法や代金の支払い、代金の決定に関する取引・契約内容のモニタリングを継続的に行い、取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組みます。
当社グループ事業の中心である海運事業においては、船舶の調達から輸送、船舶の処分まで、様々な取引先の皆さまとバリューチェーンを構成しています。
商船三井グループでは、持続可能な事業活動を実現するために、バリューチェーン上の環境・人権・贈収賄を始めとした腐敗防止等のサステナビリティに関わるリスクの把握・低減に向け、バリューチェーンマネジメントを実施しています。
持続可能なバリューチェーンの構築に向けては、当社のバリューチェーンを構成する取引先の皆様のご理解・ご協力が必要不可欠であり、本取り組みを通じて取引先の皆様とさらにパートナーシップを強化したいと考えています。取引先の皆様と当社グループが互いにサステナビリティに関する取り組みを強化することで、バリューチェーン全体としての価値を向上させ、今後も社会から必要とされる存在であり続けられるよう努めていきます。
なお、本取り組みについては、経営会議の下部機構であるサステナビリティ委員会にて実施状況を確認し、取締役会が監督責任を負います。
「商船三井グループ取引先調達ガイドライン」を取引先の皆様に遵守いただくことを目指し、まずは取引先調達ガイドラインの周知を図るとともに、国・産業・商材リスク等を考慮し、環境・人権・贈収賄を始めとした腐敗防止等の項目で構成される書面調査や必要に応じて詳細なヒアリングや現地実査を行いながら、取引先の皆様の取り組み状況をモニタリングします。必要に応じ、調査結果の概要、全体的な傾向、他社優良事例、今後の取り組みの進め方などを参考情報としてご提供する他、重大な課題が確認された場合は、専門家やNGO等とも連携をしながら、取引先の皆様とともに今後の対策を考え、継続的な支援を続けます。
バリューチェーンマネジメントの基本プロセス
「商船三井グループ パートナーシップの取り組みについて」(2021年度制作)
当社では、取引先と密接に関わる当社従業員に対し、バリューチェーンマネジメントに関する説明会やワークショップを実施しております。本取り組みの意義や、外部ステークホルダーからの要請、当社グループ取引先調達ガイドラインなどの理解を深めることを目的にしています。
当社グループの事業活動において、船舶の調達は事業の根幹をなす非常に重要な部分です。
船舶の建造にあたっては、調達先である造船所に対して当社の安全・環境品質基準を定めた「MOL安全標準仕様」に則った仕様を取り入れることを依頼するだけでなく、造船所における環境対策・安全な労働環境等にも配慮を求めています。また、当社グループ会社より造船所に建造監督を派遣することで品質の向上に努めたり、共同で低環境負荷船の開発や導入に取り組むなど、ともに持続可能な社会の実現に向けて貢献しています。
当社グループは、事業を営む上で欠かせない船舶の一部を船主から傭船しています。自社が保有する船舶だけではなく、傭船に対しても「MOL安全標準仕様」を適用し(短期傭船を除く)、当社フリート全体の安全品質の確保に努めています。また、船主に対しては、訪船、船主訪問、定期的な連絡会を通じ、安全意識の共有、安全品質向上に向けた情報・意見交換を積極的に行っています。なお、2020年にモーリシャス沖で発生した、当社が傭船するばら積み貨物船「WAKASHIO」による座礁・油濁事故を受け、傭船であっても二度とこのような事故を起こさぬよう対策を講じる社会的責任があることを改めて認識し、船主と共に世界最高水準の安全品質実現に向けた取り組みを強化しています。
船舶を解撤したリサイクル鉄は様々な国や地域の鉄需要を支え、環境意識の高まり・環境への負荷低減対策としてもますます重要性を増しています。また、船舶からのリサイクル鉄はその材質からも重宝され、貴重な資源となっています。一方、解撤時の有害物質の管理・処理や環境への影響、労働者の安全衛生管理などの課題が国際的に認識されています。こうした状況を受け、2009年に国際海事機関(IMO)は、シップリサイクルに関する問題を解決し、“安全かつ環境上適正なシップリサイクル“を目指すための「シップリサイクル条約」を採択、本条約は2025年6月に発効となりました。当社は、本条約を遵守するだけでなく、シップリサイクルヤードとの協力のもと、継続的な現地調査・対話等を通じて、環境・人権・安全品質・贈収賄をはじめとする腐敗防止等に配慮し、リサイクルされる船舶の所有者・売主として、バリューチェーンでの責務を果たしていきます。
当社グループは、上記背景に沿った持続可能なシップリサイクルの推進に向け、当社グループ独自のシップリサイクルヤード選定基準である”Superior Shiprecycling Standards(以下、”SSS”)“を、2023年度に新たに策定しました。なお、本基準は定期的に見直しを実施しています。
審査の概要:
各シップリサイクルヤードの審査にあたっては、シップリサイクル条約に関する一般財団法人日本海事協会の認証状況をはじめ、規制・法令・国際条約の遵守状況、「商船三井グループ取引先調達ガイドライン」で規定する環境・人権・安全品質・贈収賄をはじめとした腐敗防止等の様々な項目を取り入れた多くの審査基準を設けています。これらの基準をもとに、書面調査および現地視察を通じたリスク評価(審査)の上、ヤード選定を行います。また選定の際には、先進的な環境への取り組みや地域社会への貢献活動等も考慮します。選定ヤードは、審査内容に準じて更に区分を行い、基準を満たす区分上位のヤードにおいては優先的に協業する仕組みを設けます。
審査・選定後の運用について:
選定ヤードに対しては、定期的な書面調査・現地視察などのモニタリングを通じ、選定後も審査基準に沿った運営が行われているかどうかを確認します。その際、基準を満たさないヤードは、選定ヤードから除外されます。また、選定外のヤードに対しても、審査内容のフィードバックを通じ、設備・運営向上を促すことで、ヤードの選定活動を継続的に行います。
船舶の解撤期間においては、当社もしくは第三者への委託による現地でのモニタリングを行い、実作業の状況を確認します。
ヤードの審査・選定に関する実績:
2022年度以降、SSS選定基準の根幹の一つである日本海事協会のシップリサイクル条約認証を得ているリサイクルヤードの調査を進めてきました。主要リサイクル地にあたるバングラデシュ・インド及びトルコの該当するリサイクルヤード(予備調査段階にて他必須基準に該当しない場合を除く)のすべての現地調査を実施しました。
労働環境・条件、環境保全、設備およびその維持・運営、規定整備・運営、人権等様々な観点から、高いレベルでリスク抑制に努めているリサイクルヤードを選定しています。
2025年3月、選定リサイクルヤードの更新を実施しました。一部のヤードにおいては前回選定後にSSS基準に準じない運営が判明したため継続選定を見送り、また新たに当該基準に該当したヤードは追加選定しました。
また、選定更新の調査を通じ、賃金規定・運用、従業員寮、不適当な運営・設備の不備が検出されたものについては、フィードバックを通じて改善を促しました。改善が確認できない場合は選定を見送り、その後の対話・追跡調査で進捗確認しながら選定更新に備え、リサイクルヤードとともに継続的なリスク低減を図っています。
調査・選定実績リサイクルヤード数
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |||
---|---|---|---|---|---|
調査 | 選定 | 調査 | 選定 | 調査* | 選定 |
37 | 13 | 60 | 20 | 44 | 16 |
* 定期調査・初期調査。同一ヤードへの複数調査を含めた調査数63。
ヤード従業との直接対話:
2024年度下期に、SSS選定ヤードの一部ヤード(インドおよびバングラデシュ)に対し、人権リスク調査を目的とした直接対話を実施しました。
本調査では、経営陣および従業員を対象に、ビジネスと人権分野の第三者専門家の協力を得ながら、透明性と客観性を確保しつつ、これまでの調査内容の再確認を行いました。
従業員との対話においては、従業員リストから当社が無作為に参加者を抽出し、職種・職位・上下関係を踏まえて7〜8のグループに分けた上で実施しました。対話は、安心して率直な意見を述べられるよう配慮し、また通訳を介して現地語(ヒンディー語およびベンガル語)で、隔離した場所にて実施しました。
調査では、労働時間、賃金、雇用形態、労働環境、健康・安全、差別・ハラスメント、結社の自由、救済措置など、労働者の権利に関わる重要な項目を重点的に確認しました。
ヒアリングの様子
年 | 本船名 | ヤード | Plot # | LDT | 建造年 | 集計範囲 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
SSS適用前 | 2019 | Green Garnet | NBM Iron and Steel Trading Pvt.Ltd | 61(24G) | 9,186 | 1996 | (株)商船三井 |
2019 | Rakiura Maru | Leela Green Ship Recycling Pvt.Ltd | 35 | 8,368 | 1996 | ||
2019 | Meridian | Triveni Ship Breakers LLP | 23 | 9,142 | 1996 | ||
2020 | Universal Green | Baijnath Melaram | 13 | 10,631 | 2002 | ||
2020 | Tachibana | Diamond Industries | 84 | 19,098 | 2000 | ||
2020 | Cougar Ace | Anupama Steel limited | 15 | 13,551 | 1993 | ||
2021 | Senshu Maru | Sachdeva Steel Products (SB) Ltd | 65(24L) | 29,819 | 1984 | ||
SSS適用後 | 2023 | Siam Ocean | PHP Ship Breaking and Recycling Industries Ltd | - | 7,996 | 1995 | |
2024 | SURYA AKI | PHP Ship Breaking and Recycling Industries Ltd | - | 8,168 | 1996 |
当社選定シップリサイクルヤードでの解撤作業