ウインドチャレンジャーは当社が開発した風力補助推進装置で、航行中は風の状態に合わせ全自動で制御が行え、出入港時などには自動で伸縮が可能な硬翼帆です。
造船所、大学等のパートナーとともに10 年以上に及ぶ研究を重ね、大型商船に搭載する機器としては、世界で初めて大規模に複合材(ガラス繊維強化樹脂)を採用することで、硬翼帆でありながら、大幅な軽量化を実現しました。
2022年10月に商用機第一号を搭載する「松風丸(しょうふうまる)」が竣工し、これまで順調に航海を重ね、燃料消費削減の高い効果を商用航海において証明しています。2024年7月には搭載船2隻目も就航しています。
ウインドチャレンジャー型帆は、後方からの風だけでなく、横方向や斜め前からの風でも推進力を生み出すことが可能で、10万トン級のバルクキャリアに帆1本を搭載した場合、帆を搭載しない同型船に比べ、平均5 ~8%のGHG排出量削減効果があることを確認しています。また、複数の帆を搭載することでさらにGHG削減効果を高めることも可能です。
複数本のウインドチャレンジャーを搭載するのに最適な船型の開発も進めており、環境負荷低減を目指して更なる改良と普及を図っています。
当社がミカドプロペラ(現ナカシマプロペラ)・西日本流体技研と三社共同で開発したPBCF(Propeller Boss Cap Fins)は、1987年の製品化以降、現在4,300隻以上の船舶に搭載され、世界中に認められた船舶の省エネ設備です。
PBCFの開発は、開発を始めた当初は、「ユーザーである船会社が主体となり、費用を負担してまで開発を進めるのは適当でない」という意見も社内にはありながら、開発を複数のステージに区切って、課題や成果を確認しながら段階的に進めることで、着実に開発を進め製品化にこぎつけた、当社の技術開発、技術革新の先駆けともいえるプロジェクトの一つです。
シンプルな構造でありながら、PBCFを付けることにより、同じ速力においては約5%の燃料削減効果を得られ、その他にも、プロペラトルクリッチの軽減、船尾振動、水中騒音の軽減、舵エロージョンの解消などの効果も望めます。
長年様々な船型と馬力の船での採用実績に加え、100隻を超える船での速力試験や就航データの解析を行い、その効果を実績によって裏付けてきました。
2017年には更に改良型の販売を開始し、既に900隻を超える受注実績があります。
当社の技術革新の精神と、当社が取り組む船舶のGHG排出削減の飽くなき挑戦の金字塔ともいえる開発プロジェクトです。
当社は、メトロウェザー株式会社(以下「メトロウェザー」)と共同で、メトロウェザーの長距離風況観測装置、ドップラー・ライダーを、当社のグループ会社である株式会社商船三井さんふらわあ保有のRORO船「むさし丸」に搭載し、実証実験を行っています。
このプロジェクトでは、メトロウェザーが開発したドップラー・ライダーに慣性航法装置を加え、船舶の移動や動揺による変位を補正しながら風況を計測する装置を開発して、船舶特有の環境下でも風況計測を可能にしました。
ドップラー・ライダーと慣性航法装置を融合させた「船上風況計測装置」は、正確な風況予測により船舶の安全運航の質を更に高める他、風力を船の推進力として活用する、当社の「ウインドチャレンジャープロジェクト」や「ウインドハンタープロジェクト」、また当社が進める風力エネルギー関連事業など、広い分野での活用が期待されています。
更に、当社は、当社グループ会社のコーポレートベンチャーキャピタル「株式会社MOL PLUS(読み:エムオーエル・プラス)」を通じてメトロウェザーに出資しており、多角的に技術革新を後押ししています。