MOL CREW

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船の安全を守る責任。
積荷を守る責任。

世界中で働くMOLの人たちを紹介する「MOL CREW」。
今回は船の安全と積荷を守るスペシャリスト、
女性一等航海士のストーリーです。

Profile / プロフィール

Name / 名前

Kiyomi Shikata
志方 清美

Birthplace / 出身

JAPAN
日本

Affiliation / 所属

Mitsui O.S.K Lines (at sea)
商船三井海上勤務

Profession / 職業

Chief Officer
一等航海士

志方清美さんは10年目の一等航海士。
7年に渡りさまざまな船で
航海士としての経験を積んだあと、
本社オフィスで船舶管理を担当。
そしてこれから3年ぶりの海上勤務に復帰します。

海好きから、海を職場に。

この仕事に進んだ理由はなんですか?

私はもともと3級海技士の資格をとれる学校を卒業して、その後MOLに入社しました。この仕事を志したのは、船が好きというよりは、どちらかというと海に対する興味からです。昔から海の生物や水族館が好きで、そこからはじまっているような気がします。また、母方の祖父母が佐渡島に住んでいたので、年に数回遊びにいくときフェリーに乗っていました。そのとき船で働いている人を見て、こういう仕事があるんだなと興味を持った記憶はあります。でも航海士となったいまでは、海は「職場」になりました。とても身近なもの。勤務中は360度囲まれていますから。いつも隣にあるものです。

一等航海士として、再び海へ。

航海士としての仕事はどんなものですか?

航海士といっても職位によって担当業務が変わります。3年前に一等航海士になったタイミングで、オフィス勤務の辞令が下り、そこからはMOL LNG輸送という会社で船舶管理を担当していました。いままさに海上復帰するところです。LNG船に乗る予定ですが、はじめは前任者から業務を引き継いでいきます。
3年前までは二等航海士だったので、そのときは航海長としてどこを走るか考え、コースラインを引いていました。船長の意向を受けて具体的なプランを作成することが二等航海士の仕事。また、「航海当直」と言われる船の運行、航海機器類の保守点検なども二等航海士の仕事になります。

船の安全を守るという責任。

一等航海士になるとどんなことが変わりますか?

たとえば航海当直の時間も職位によって異なります。乗員はずっと休まずに働き続けることはできないので、通常3チームのローテーション制で勤務します。午前と午後の12時間をそれぞれ3分割した4時間が担当の一区切り。4時間勤務、8時間休みの繰り返しで、1日8時間勤務となります。二等航海士の担当時間は「ゼロヨン」と言われており、深夜0時から早朝4時までと、昼の0時から夕方の4時まで。一等航海士になると「ヨンパー」という、早朝4時から朝8時までと、夕方4時から夜8時までになります。
なぜ一等航海士がこの時間を担当するかというと、いちばん危険な時間帯であるためです。日没と日出のときが一番見えづらくて事故が起きやすいと言われているんです。だから熟練の一等航海士が入直します。体力的には二等航海士の時間帯のほうがつらいかもしれないですが、リスクが高いのは深夜よりも朝や夕方の方です。これから一等航海士になるとそれだけ責任も大きくなるということです。
航海当直にしても、誰かが休んだら誰かが代わりに入らなければなりません。とはいっても、船全体を見る立場である、船長が交代要員になるわけにもいきません。したがって船の上で休日はほぼなく、航路にもよりますが、1ヶ月に1度~2度くらいという程度です。

荷物を無事に下ろすまでが、航海士の仕事。

どんなときに仕事のやりがいを感じますか?

やはり無事スケジュール通りに港に着いて、安全に荷物を揚げ終えた瞬間にやりがいを感じます。航行中の仕事も大切ですが、荷物の管理や、港でその荷物を揚げる「荷役」の作業も航海士の仕事なんです。どれひとつとして同じ航海はないので、いつも緊張感をもってやっています。荷物の量や、どこに積むかなど、毎回すべて変わってきます。もちろん過去のデータは全部あるので一通り目は通しますが、まったく同じ状況にはなりません。だからデータよりも、経験豊富な先輩の話を聞くことを大切にしています。チーフオフィサーや船長はたくさんの経験をしているので、判断が難しいときは必ずアドバイスをもらうようにしています。

荷物の積み下ろしは、船を守る仕事でもある。

荷役の仕事の難しさはどこにありますか?

船の積荷の内容によって仕事も変わってきます。私が主に乗っていたLNG船の場合は、どのぐらいのスピードでガスを荷揚げしていくかなど、受け入れる基地の担当者と綿密にやり取りしながら進めていきます。コンテナ船だと、港でステべドア(船舶荷役を請負う作業員)が入ってくるので、その作業が計画通りに進んでいるかチェックします。また、ばら積み船の場合、荷物をどこから積んでどこから下ろすか、すべて計算してプランを考えるのも航海士の仕事です。船のバランスを保ちながら、順番に荷物を下ろしていかなければなりません。その順番が正しくできていないと、船が折れてしまうのです。大袈裟ではなく、船体に亀裂が入ったりして損傷してしまいます。もちろん細心の注意を払っているので実際にそんなことが起きたりはしないですが。

タブレット、スピーカー、お守りは必携。

船に乗るときいつも持っていくものはありますか?

一回の航海が4~5ヶ月なので、荷物は結構多いです。いまちょうどパッキング中ですが、服は1週間分の着替えがあればそれで着回します。休憩中はよく動画を見るのでタブレットは絶対持っていきますし、音楽を聴くためのスピーカーも私にとっては必需品です。お守りも持っていきますよ。航海安全のお守りとか、あとは世界中いろんなところへ行くので方位除けのお守りとか。MOL本社の近くにある金刀比羅宮も海上守護の神様として有名ですよね。

チームの力で安全を守っていきたい。

これからの夢と、世界で働く仲間たちへのメッセージを。

航海士だけでなく、船で働くクルーは全員スペシャリスト。私からすれば仲間というより経験豊富な先輩ばかりなので学ぶ事がいっぱいあります。おじいちゃんになっても活躍されているクルーもいますし、私も健康であるうちはずっと海に関わっていたいです。目標は、やっぱり船長です。まず響きがかっこいいですよね(笑)。一緒に仕事をしてきた船長は、緊急時も冷静な船長や、すごく穏やかで船内の雰囲気をつくってくださる船長など、それぞれタイプは全然違いますが尊敬できる人たちです。私自身は本社オフィスで船舶管理を担当していたので、海と陸の両方で活躍できるような船長になりたいですね。これからもMOLというチームで一緒に力を合わせて、しっかり安全を守っていきたいです。