MOL CREW

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母の夢が、
いつしか自分自身の夢に。
海と陸で活躍する航海士。

世界中で働くMOLの人たちを紹介する「MOL CREW」。
今回は、海上での経験を活かしながら
陸でも活躍する「二刀流」航海士のストーリーです。

Profile / プロフィール

Name / 名前

Ryan Gregana
ライアン グレガナ

Birthplace / 出身

Philippines
フィリピン

Affiliation / 所属

Maritime DX Co-Creation Unit
マリタイムDX共創ユニット

Profession / 職業

2nd Officer
二等航海士

ライアン・グレガナさんはフィリピン出身。
二等航海士としてのキャリアを経て、
東京のMOL本社での陸上勤務へ。
いまは航海士時代の経験を活かしながら、
デジタル化によって船員の負担を軽減したり
業務効率を改善するための仕事をしています。

母に勧められて、航海士への道へ。

船の仕事をめざしたきっかけを
教えてください。

母国であるフィリピンは海事の伝統が強く、世界有数の船員供給国として知られています。ただ私自身は、もともと海でのキャリアを追求するつもりはありませんでした。フィリピンの平均的な家庭で育った私には、大きな夢を抱く余裕がなかったからです。でも母は、そんな私にルセナ市の海事学校に通うことを提案してくれました。MOLがフィリピンで共同運営するこの学校と出会い、幸いにも奨学金に助けられながら勉強する機会を得ることができました。学校で学びながら、次第にこの職業への愛着が芽生えてきました。そして2008年にバルクキャリアの見習い航海士としてキャリアをスタートしたのです。いまでは海事業界の一員として、MOLの一員として働けることを誇りに思っています。母から託された夢は、いつしか私自身の夢になったのです。

刻々と変化する状況で、次の進路を判断する。

航海士の仕事はどんなものですか?

昨年まではPCC(自動車専用船)で働いていましたが、私の航海士としての経験の99%はPCCでのものです。二等航海士としての業務と、あとはメディカル担当として乗員の体調管理もしていました。航海士としてもっとも大切な仕事のひとつは、コースラインをひくこと。気候などの条件を見ながら航海計画を決めていきます。船に入ってくる様々な情報を解析して、次に進むべきコースを決める。基本的な航路というのはもちろん決まっているわけですが、刻々と変化する状況の中で船長と相談しながら柔軟に変更していきます。じゃあこう変えようかとか、こっちへ行こうとか判断をしていき、クルーに伝達するわけです。実際にコース変更する1時間前に判断するということもあります。天候など、危険なものがすぐそこに迫っていることもあるわけなので。冷静かつ迅速な対応が求められます。

陸から、船員の環境を改善していく。

いまの仕事と、あなたの強みについて
教えてください。

いまは陸上での勤務です。虎ノ門にあるMOLのデジタライゼーション部門で働いています。新しい技術を船上の業務に導入して、船員の労働負荷を軽減し、業務効率を向上させ、海上でのワークライフバランスを改善することをめざしています。海上生活の厳しさを私自身が経験してきているので、何を改善すべきかよくわかっていることが私の強みですね。二等航海士として紙の海図を扱っていたときの難しさをいまでも鮮明に覚えています。かつては航海計画の作成がとても大変でしたが、現在では電子海図への移行でかかる時間が大幅に減りました。いまは電子ログブックの導入によって報告データの転送を自動化するプロジェクトなどに携わっています。海でさまざまな状況に適応してきた経験を活かせる仕事ですね。自分の意見を反映することによって、船員の職場環境をよりよいものに変えていけることにやりがいを感じます。

船でともに暮らすと、ファミリーになる。

仕事仲間はあなたにとってどんな存在ですか?

海の上で何十日も一緒に暮らす仲間は、いわばファミリーです。ライバルではなく、互いに助け合う存在ですね。仕事以外の場面でも、私たちはいいチームワークを発揮します。長い航海のときは、天気がいい日にみんなでプールを設置して楽しむことがあります。フィリピン人はプールサイドでのバーベキューパーティーがとにかく大好きですからね。お祝いごとがあるときなどは、レチョン(LECHON)と呼ばれる豚の丸焼きをつくったりもします。準備は大変ですが、振る舞うとみんな笑顔になりますね。こうした息抜きは日々のストレスを解消するために必要なことなんです。

私をポジティブにしてくれる「第二の故郷」。

あなたにとって海とはどんな場所ですか?

海は、台風や嵐が来ると動けなくなりますし、次に何が起こるかわからない。航海中に危険を感じることもあります。自分が行った場所でもっとも困難な場所は南アメリカのマゼラン海峡ですね。最狭部は約2kmと狭いうえに予測不可能な風や海流がたびたび発生するため、航行の難所です。海はときに怖いこともありますが、それでも穏やかな日に朝日や夕焼けを見るのが好きですね。とても美しく、見ているとおおらかな気持ちになれるし、海は私をポジティブな気持ちにしてくれる場所。私の「第二の故郷」と言ってもいいと思います。

思い出の場所で初めて見た富士山。初めて見た雪。

休日はどんなふうに過ごしますか?

海上勤務の航海中は休みがほとんどありませんでしたが、陸上勤務のいまは毎週末のお休みを楽しむことができています。アプリを通じて在日フィリピン人同士で交流したりもします。趣味は登山ですね。日本で二番目に高い北岳にも登りましたし、最近は念願の富士山にも登ってきました。この上の写真は、金時山に登った時のものですが、私のお気に入りの景色です。この一枚には、大切な思い出がつまっています。日本で初めて登った山。初めて見た雪。そして、初めて富士山を見た場所なんです。

自ら変化していくことを楽しんでいけたら。

これからの夢と、
世界で働く仲間たちへのメッセージを。

いまのチームでは英語でコミュニケーションをとっていますが、来年からは日本語の授業をとろうかと思っていて、自分でも勉強を始めています。(日本語で)「みなさんこんにちは!ライアンです!」(笑)。あとは、いずれ海の仕事に戻ったときには船長をめざしたいですね。世界中のMOLの仲間にも、それぞれの大きな夢をめざしてほしいです。MOLはさまざまな経験ができるし、挑戦するためのチャンスがあるところ。新しい環境や技術などを受け入れ、それをみんなで共有しながら、一緒に変化を楽しんでいけたらいいなと思っています。