MOL CREW

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強固なチームワークで、
大型タンカーを動かす。

世界中で働くMOLの人たちを紹介する「MOL CREW」。
今回は、大型原油タンカーVLCCを操り、
安全な運航を守りつづける船長のストーリーです。

Profile / プロフィール

Name / 名前

Capt. Zeljko Vucetic
ゼリコ・ヴチェティッチ

Birthplace / 出身

Kotor, Montenegro
モンテネグロ・コトル

Affiliation / 所属

MOL Tankship Management Pte. Ltd.
Singapore
MOLタンクシップ・マネージメント/
シンガポール

Profession / 職業

Captain
船長

ゼリコ・ヴチェティッチさんは、
モンテネグロの港町コトルの出身。
1998年モンテネグロにMOLトレーニングセンターが
開設されたとき、最初の応募者として参加しました。
航海士を経て、いまでは大型原油タンカーVLCCの
船長として世界の海で活躍しています。

モンテネグロの港町から、世界の海へ。

船長になるまでのキャリアについて教えてください。

生まれ育ったコトルは、アドリア海に面した美しい港町です。工場で働く両親のもとで育ちましたが、周囲には船乗りの父親を持つ友人が多く、港にはいつも船が停泊していました。家のバルコニーからも海が見える環境の中で、航海士としての道を歩み出したのは自然な流れだったのかもしれません。1990年代のモンテネグロは内戦の影響で雇用が不安定でしたが、そんなときにMOLが船員のトレーニングセンターを開設し、現地採用を開始したのです。これはチャンスだと思い、私はMOLトレーニングセンターでの研修を経て船員としてのキャリアをスタートしました。そして世界中の海で経験を積みながら、「いつかは船長に」という夢を現実にしたのです。いまはVLCC(Very Large Crude Oil Carrier:20万トン以上)と呼ばれる超大型原油タンカーを指揮しています。

乗る船は変わっても、責任の大きさは変わらない。

大型原油タンカーの難しさはどこにありますか?

小型船に乗っていた航海士時代は、メキシコ湾や東南アジア、地中海、黒海など、世界中を回っていました。1週間ごとに荷積み・荷下ろしを繰り返す本当に忙しい毎日でしたね。でもその中で、判断力と対応力が鍛えられたと思います。いま乗っているのは、20万トン級の大型原油タンカーVLCCです。ペルシャ湾から日本までだと約20日、往復で約1か月半を要します。大きな船は何をするにも時間がかかるんです。止まるのも、曲がるのも、すべて計画的に行わなければなりません。小型船のようなスピード感はありませんが、その分、冷静さと先を読む力が求められます。もちろんどんなサイズの船でも、安全運航を守る姿勢は変わりません。さまざまな船に乗ってきた経験の積み重ねが、いまの自信につながっています。

逃げ場がない海上だからこそ、互いを思いやる。

仕事をするうえで大切にしていることは?

私たちの船では約20人のクルーが家族のように生活しています。これまでモンテネグロ、クロアチア、ルーマニア、ポーランド、イギリス、フィリピン、インドなど、いろんな国のクルーと働いてきました。文化や考え方が違う多様なメンバーをまとめるために必要なのは、お互いへの敬意と理解だと思います。海の上という閉ざされた環境だからこそ、オープンな対話が大切です。信頼し尊重しあう関係が、船の安全を守ることにつながるのです。また船長として、言葉よりも背中で伝えるように意識しています。私の信条は、「自分がやらないことは人に頼まない」ということ。リーダーが率先して行動で示すことが、クルーの士気を高めてチームをひとつにすると信じています。

進化する技術とともに、自らも進化し続ける。

仕事においてこれから挑戦したいことは?

MOLではCO2排出を抑えるために、重油だけでなくLNG燃料も使用できるDual Fuelエンジンの導入が進んでいます。私もその新型機関のトレーニングと試験を終え、次の航海に備えているところです。船は常に進化しています。大事なのは、それに合わせて自分も進化すること。通信技術の発達で、いまでは船も常時オンラインでつながっています。陸上から運航データを分析して安全性と効率を両立させることができる時代になってきました。でも、船上にいるからわかることもある。私はこれまで培ってきた経験を生かしながら、新しい技術を学び、次の世代の船員たちにも知識を伝えていきたいと思っています。

3か月の乗船期間を終えると、「家族モード」に。

休日はどんなふうに過ごしますか?

私の場合、3か月の乗船を終えると3か月の休暇に入ります。船を下りて、妻と3人の子どもが待っている家に帰るときが一番幸せですね。休みの間は完全に「家族モード」になります。家にいるときは、料理を担当することが多いです。得意料理はリゾットですかね。チキンでもシーフードでも、家にあるもので工夫して自分流に作りますよ。リゾットのいいところは、あるものを全部入れればそれで出来上がるということです(笑)。あとはバイクも趣味ですね。もともとは渋滞を避けるために乗り始めたのですが、海沿いの狭い街だから道も限られていて、2km進むのに1時間ぐらいかかることもあるんです。だから必要に迫られてのことだったのですが、いまでは休日に自然の中をツーリングしたりします。山間にあるサマーハウスで過ごす時間は、次の航海に向けて心をリセットするための大切なひとときです。

家族の支えも称えてくれたことに感激。

MOLグループの一員であることを実感する瞬間は。

長年のキャリアの中で特別な思い出となったのが、MOLのPresidential Awardをいただいたときのことです。受賞の知らせから東京での式典に参加するまでの時間は、人生の節目となる特別な時間でした。妻も一緒に招待してもらえたことが何よりうれしかったですね。やはり海での仕事は長期間にわたって家を空けなければならない特殊なもの。妻のサポートなくして成り立ちません。だからMOLが船員本人だけでなく、家族の支えも称えてくれたことにとても感激しました。本社を訪れ、世界中の仲間たちと交流した経験は自分にとって大きな刺激となり、次の挑戦への決意を新たにしました。MOLという会社はつねに未来に向かって進んでいると感じますし、その一員であることを私は誇りに思っています。
*MOL Presidential Award to the Officers and Engineers 2018

ひとりひとりの誇りが、海の安全と未来を支えていく。

これからの夢と、世界で働く仲間たちへのメッセージを。

MOLはグローバルな組織ですが、ひとりひとりが重要な役割を担っています。私は世界中の仲間と大きな海でつながっていると思っており、MOLというチームの力を信じています。成功の鍵は、オープンな対話、相互の信頼、そして協力だと思います。それぞれの船にはそれぞれの課題があるでしょうが、共通して大切なことは「お互いを思いやる心」ではないでしょうか。安全を守り合い、家族のもとに笑顔で帰る。それが私たちの仕事の原点であり、これからも次の時代につないでいきたいことです。MOLひとりひとりの誇りが、海の安全と未来を支えていくと私は信じています。