2010年01月04日
社長 芦田 昭充
「
MOLグループの皆さん、新年明けましておめでとうございます。
冬が去り春が来ることを「
この言葉は私が折に触れて述べてきました「Good SurferからGood Swimmerに」というフレーズにも通ずるものがあります。一昨年のリーマンショック以前は、好市況の波にうまく乗って大きな利益をあげましたが、危機に際しては、自分の力で不況という荒波をかき分けて泳ぎ、進んでいかなければなりません。この一年間、当社の中でも特に若手の社員が厳しい環境の中で率先して自ら鍛錬し、自力で泳ぐ筋力をしっかり身につけてきたな、と頼もしく感じております。
「経営の舵が効く巡航速度を目指す」
2009年(暦年)の業績を振り返ってみますと、1月から3月までの2008年度の第4四半期における連結経常損益148億円の赤字を大底に、2009年度の第2四半期からは黒字に転じております。目下の通期業績見通しは100億円の黒字でありますが、当社の本来の姿から見れば、極めて不十分なレベルといわざるを得ません。
業績を船のスピードにたとえれば、2007年度の3,022億円は30ノットの超高速船、2008年度の2,045億円は20ノットとコンテナ船のスピードといえます。ところが、100億円の利益となると1ノット、時速1.8kmとなり、人の歩く速度よりも遅く、操船しようにもタグボートの支援が必要な状態です。世界経済の先行きは回復傾向にあるとはいうものの、依然として時化がひどくなる可能性もあり、経営の舵を利かせて荒海を乗り切る必要があります。当社を安全に運航する為には何とか10ノット、つまり連結経常利益1,000億円のレベルまで早く戻していきたいと考えております。
昨年一年間でそのための様々な手だては皆さんと共に打ってきたと考えております。リーマンショック後、新造船を中心に140隻の運航隻数が増える予定に対して、スクラップや傭船の返船といった、いわゆる
※逆櫓:源平合戦で源義経が屋島に攻め寄ろうとしたときに、梶原景時は船の舳先にも櫓をつけて船が前進も後退も自在にできるようにすることを義経に進言した。
「コンテナ船事業は雷鳥のごとく」
高い山々に生息する雷鳥は、冬は飛ぶことはせず雪洞を掘って閉じこもり、羽毛に空気をためて体温を逃さないようにして、体力を温存しながら春に備えるそうです。
景気後退の直撃を受けて大きな赤字を計上しているコンテナ船事業は、スクラップ、返船、係船、減速航行などで輸送能力を減らし、全世界で荷動きの減少に合わせて営業組織を縮小するなど広範な対策を通じて、約460億円のコスト削減を進めております。これは需要に合わせて供給を絞り、雷鳥のように雪洞に入って体力を温存しながら、環境の好転を自ら牽き寄せようとするものです。
今後コンテナ船事業の赤字を大幅に縮小させるものの、残念ながら向こう3~4年間は厳しい状況が続くと思います。その間は2009年度のような大きな損失は出さず、たとえわずかでも利益を確保できるようにしたいと思います。
昨年末に定航部の管理職全員に私から直接メッセージを送りましたが、大変前向きかつ決意にあふれた反応が多数返ってきており、必ず目下の困難は克服できるとの確信を持ちました。
「世界経済と共に発展する」
われわれ海運業は国境のないグローバルなマーケットが活動の場です。これはある意味で大変幸福なことといえます。日本経済はデフレ傾向の下で停滞しており、少子高齢化を考慮すれば、これからも大きな伸びを期待する事は難しい状況です。かたや世界経済は、米国、欧州などが回復軌道に乗る一方で、中国、インド、ブラジルなど高水準の成長を続ける新興国の比重がますます大きくなり、それに伴って海上荷動きもさらに拡大していくことが期待されます。
MOLはこの世界経済の成長を自らの事業機会に生かして、確実に発展していきます。コンテナ船の余剰船腹、温暖化ガスの削減など、今後業界として克服していかねばならない問題は多岐にわたりますが、海運は本質的に成長産業であります。
環境問題への取り組みの一つの回答として、当社は環境負荷を軽減する次世代船シリーズの開発を進めています。既にCO2の排出を50%削減する「ISHIN-I(自動車船)」、「ISHIN-II(フェリー)」の構想を発表していますが、これはいわゆる近未来船ではなく、確立された既存技術の活用で今日ほぼ実現可能なもので、現実を踏まえたエコシップ として提案するものです。成長分野での新たな可能性への挑戦が、当社をして発展せしめる原動力であることを確信しております。
「安全運航でも世界一を目指す」
2006年に連続して発生した事故を真摯に受け止め、私から全社員に安全第一という基本に戻ろうと呼びかけて様々な対策を講じて以来、重大海難事故は発生しておりません。無事故は貨物を安全に輸送するという海運経営の基礎であり、安全運航を全うしようとする関係者の皆さんの不断の努力に大いに感謝しております。
安全運航でも世界一の評価を得て初めて当社が真に世界をリードする海運企業にふさわしいといえます。絶対に事故を起こさないという目標を常に全員が肝に銘じて、各自の任務を果たしてもらいたいと考えます。
「
昨年は、関西汽船(株)の完全子会社化を行うなどフェリー事業を再構築し、フェリーを取り巻く厳しい環境に立ち向かう体制が整いました。
客船事業ではこの春から、改装された「にっぽん丸」が新たな航海を始めます。また、日産専用船(株)も昨年当社の子会社となり、MOLグループの新たな一員として、当社グループの自動車船事業を力強く支えてくれます。このようにグループとしても様々な事業分野でさらなる飛躍へ挑戦する体制が整いつつあります。
当社の本社は虎ノ門にありますが、今年は寅年です。2010年はまさにわれわれの年と言えます。虎がほえながら不況の荒波をかき分けて勇猛果敢に進んでいくという意味を込めて、私の勝手な造語ですが「虎躍破浪」の年としたいと思います。
今年は4月から次期中期経営計画をスタートする年でもあります。今まさに、グループ全員が参加して、計画を策定している最中と思いますが、ここに申し上げたような思いを込めて、MOLグループの進むべき針路を定めたいと思います。
最後に、MOLグループ全運航船の安全と、全世界の当社グループの皆さんとご家族のご健康とご多幸を祈念し、新年の挨拶といたします。